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ハーピーの巣

 ハーピーの巣は岩山の裂け目の中に隠れるように存在していた。屋根代わりなのか動物の皮が岩と岩の間に張り巡らされている。巣の中はハーピーたちが飛べるほどの広さはなく、出入りするハーピーは巣の前で着地した後、歩いて中へと入っていた。


「巣の中ならハーピーに逃げられることもない……好都合だな」


 岩の陰から巣の様子を伺っているイルアーナがつぶやいた。


「だ、だめですよ、イルアーナさん」


「わかっている、まずは話し合いであろう?」


 慌てるアデルにイルアーナが言った。


「そうです。僕が行きますから、イルアーナさんはここから援護してください」


 アデルの目は熱意であふれていた。


「任せたぞ」


 イルアーナはアデルを信頼に満ちた目で送り出した。アデルはへっぴり腰で静かにハーピーの巣の前まで歩いていく。


 ハーピーの巣は獣っぽい匂いがするのかと思いきや、花の香りが漂っていた。ハーピーは岩陰などでくつろいでいるようで、入り口からはその姿は見えない。


「こ、こんにちわー!」


 アデルはハーピーの巣に向かって声を張り上げた。途端に巣の中が騒がしくなり、ハーピーたちが岩陰から飛び出る。中には足で粗雑な槍を握っている者もいる。皆が鋭い視線でアデルを睨んでいた。


(こ、これは……)


 アデルはその光景に目を奪われる。ハーピーたちは翼や肌の色、髪型などは様々、巨乳の子ばかりかと思いきや微乳タイプまで取り揃えられている。飛行の負担になるためかポッチャリタイプはいなかったが、当たりのギャルゲー並みに目移りしてしまうような光景だった。


(これはもうハーピー族じゃない、ハッピー族だ!)


 アデルはしょうもないことを思った。彼の「おとロマランキング」の三位に入る光景だった。ちなみに「おとロマランキング」とは「男の浪漫溢れる場所ランキング(浜田太郎調べ)」の略であり、一位が「女湯」、二位が「女子更衣室」、そして見事三位にランクインしたのが「ハーピーの巣」であった。惜しくも四位に落ちてしまったのは「友達のお姉ちゃんの部屋」である。


「何者!?」


「誰よ!?」


「きゃーっ、変態!」


 ハーピーたちから様々な警戒の声が上がる。巣の奥の方には何事かと顔を出した人間の男たちの姿も見えた。


(確かに3人、人間の男性がいる……)


 男たちは不安げな様子でこちらを伺っている。


「何事だ!」


「あら、あなたは……!?」


 奥から二匹のハーピーが出てきてアデルに話しかけて来た。さきほどのお姉さま系と清楚系のハーピーだった。


名前:カラ

所属:イホーク族

指揮 55

武力 70

智謀 59

内政 33

魔力 38


名前:シャスティア

所属:イホーク族

指揮 73

武力 61

智謀 76

内政 59

魔力 54


 カラがお姉さま系、シャスティアが清楚系のハーピーの名前だった。


「見逃してやったのについてくるなんて……バカなのかい?」


 カラが呆れた表情でアデルを見つめる。


「ちょ、ちょっと皆さんにお話がありまして……」


 アデルはドギマギしながら言う。


「あら、お話をしに来てくださったんですか? 嬉しいです」


 シャスティアは微笑みながら言った。


「では奥で交尾でもしながらゆっくり話しましょう」


 シャスティアはアデルに近づくと翼でアデルを包み込む。香水でも付けているのか、花のような良い匂いがした。さらに柔らかな羽毛に包まれた翼と押し付けられた二つのプニプニ。潤んだ瞳と艶やかな唇がアデルの目の前に迫る。


「は、はい、ぜひ……」


 一瞬で体中の血が沸騰したかのような熱さを感じながら、アデルは促されるがままにハーピーの巣の奥へ足を進めそうになる。


「待て!」


 イルアーナはアデルのタダならぬ様子に岩陰から飛び出し駆け寄る。


「女の方もいたのかい!」


 カラが身構え、シャスティアもアデルと距離を取り身構える。骨抜きになっていたアデルは腰からその場に崩れ落ちた。その後ろにはほかのハーピーたちも唸り声をあげながら並んでいた。


「貴様、アデルに何をした!」


 イルアーナがシャスティアに叫んだ。


「何もしていませんわ。もちろん、あなたの邪魔が入らなければこのあと色んなことをするつもりでしたけど」


 シャスティアは穏やかにほほ笑む。イルアーナにとっては不気味な笑みだったが、男にとってはどこか色気を感じさせる笑みだった。


「あぁ……」


 アデルは苦し気に吐息を漏らす。顔は真っ赤に上気しており、尋常でない量の汗が噴き出していた。


「アデル、大丈夫か!? 毒か? 呪いか?」


 イルアーナはアデルの顔を覗き込み、何が起きたのか理解しようとする。


「確かに坊やには毒だったかもしれないね」


 カラは不敵な笑みを浮かべた。


「す、すいません、イルアーナさん……ちょっと急所にダメージを……」


 アデルはなんとか立ち上がるが、前屈みになったままだ。


「いつの間にそんなところに攻撃を……戦えるか?」


 アデルの脇でイルアーナが身構える。


「ま、待ってください! まだ話し合いができていません!」


「そんな立ち上がれないほどの攻撃を受けて、まだ話し合うつもりなのか?」


「いや、これは攻撃と言うかなんと言うか……」


 戦いを始めようとするイルアーナをアデルは止める。


「なんなんだいアンタら?」


 カラが呆れ顔で言った。


「僕たちはズール……この近くの人間の村の依頼で来たんです。あなた方が人間を連れ去ってしまうので、退治をするようにと」


「それでアタイたちを殺しに?」


「ええ。ですがそれは最後の手段です。その前にどうにか話し合いで解決できないかと……」


「ふん、やれるもんならやってみな」


 カラはあまりアデルの言葉に耳を貸すつもりはないようだ。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >(これはもうハーピー族じゃない、ハッピー族だ!) wwwwww 誰がうまいこと言えと言った
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