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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第五章 建国の章

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村長会議(オリム城)

 アデルの建国宣言終了後、住民には建国記念として税金が下がることが伝えられ、また各所でワインが無料で振舞われることが伝えられた。無料ワインは「タダで呑める酒より美味いものはない」 というフレデリカの案だ。そういったこともありアデルの建国は国民からは概ね受け入れられるものとなった。


「いやー、お見事でしたぞ、アデル様!」


 演説を終えたアデルをホプキンが満面の笑みで迎える。


「あぁ、どうも」


 疲れ果てて、魂が抜けたかのような表情でアデルは返事をした。


「それにしてもレイコ様が、前におっしゃってた奥の手だったのですな!」


「奥の手……?」


「私が降伏を決めた時におっしゃってたではありませんか。空を飛んで炎を吐いて金ピカの奥の手があると……まさにレイコ様のことに間違いありません」


「そ、そんなことありましたね……」


 アデルは顔を引きつらせる。完全なハッタリだったのだ。


「それよりもお疲れのところ申し訳ないのですが、村長たちが会議室に集まっております。アデル様もお越しください。」


「あー、はい」


 アデルは頭を振って気合を入れなおすと、会議室へと向かった。


 会議室のテーブルには十名以上の村長たち、そしてフォスターが席についていた。壁際にもイスが並べられ、村長の護衛や付き人たちが座っている。アデルが入室すると全員が立ち上がり、多くの者が目を輝かせた。


「おお、アデル様だ……!」


 先ほどの演説で感銘を受けた者もいれば、以前にリンジェイが指揮する北部連合の徴収兵だった者もいる。


「あ、どうぞ座ってください」


 アデルはペコペコしながら席に着く。国側の出席者はアデルとホプキン、そしてフォスターだ。フォスターは軍事的な能力はもちろんだが、内政の能力値も高かったためアデルの頼みで出席している。


 村長会議とは言っても、内容はほぼ顔合わせと国からの知らせを伝えるだけだ。各村長が順番に自己紹介をしていく。村として認められていなかった貧者高原の村々は城に来ることや領主への挨拶などしたことがなく、緊張の面持ちであった。村長の中にはマライズ村のミルドやズールの村のイラスの顔もある。


 続いて、ホプキンから各村の希望者に町への移住を許可する旨が伝えられた。これには貧者高原の村人たちは驚きを隠せなかった。元々、犯罪や借金などで町に居られなくなった人々だ。町へ住めるのであれば住みたいと思う者も多い。その際、経験がある仕事があれば斡旋することが伝えられた。特に不足している兵士と農民に関しては優先的に移住を受け入れることになっている。


「他に皆さんの方から何かご質問等はありますか?」


 一通り国からの通達を終え、フォスターが村長たちに尋ねる。


「あの……神竜様への信仰を国として推奨するということでしたが、どういった教義なのでしょうか?」


 村長の一人が恐る恐る質問した。フォスターとホプキンはアデルを見る。


「教義? いや、特には……」


 竜王を神とする宗教を作ることはただの思い付きだったため、アデルは深いことは何も考えていなかった。


「何か儀式をしなければならないとか、これをしてはいけないとか、そういったものは……?」


「いいえ、今まで通り好きに生活していただければ……まあ、あくまでも普通の方とか常識でやってはいけないことはしないでいただきたいですけど」


 いまいち納得していない村長にアデルが答える。


「信仰と言えば普通は祭壇や神の像を作って祈りを捧げるもの。またラーベル教会の例で言えば、参拝や寄付、供え物を要求します。上手く言えませんが、おそらく自分がその神を信仰していると思えるような物や行為が必要なのではないでしょうか」


 フォスターがアデルに耳打ちした。


「なるほど……部屋に推しのポスターを張るようなものですかね」


「推しのポスター?」


 フォスターは効きなれぬ単語に眉をひそめる。アデルは無宗教で育ち、日本でも「何か知らないけど拝んどけ」程度の信仰心しかもっていなかったアデルにはいまいちピンとこなかったのだ。


「し、神竜様を疑っているわけではないのです。むしろ神竜様の偉大さに感激いたしまして、村の者へも勧めたいのです」


 その村長はアデルたちが何か小声で話し合ってるのを見て不安になったのか、慌てて付け加えた。


「ああ、ありがとうございます。実はまだ全然用意が出来てなくて……そのうち、木彫りのレイコ様人形とか、レイコ様等身大ポス……張り紙とか作って、販売しましょうかね」


「おお、そういうものがあれば村の者にも伝えやすいですな」


 村長はうれしそうに言った。やはり何か形あるものがあった方が信仰しやすいのであろう。


「木工はルズレイが盛んですね。急いで作らせましょう」


 ホプキンがアデルに言う。


「そうなるとデザイン画が必要ですよね……イラスさん、書いていただいてもいいですか? 実は他にも頼みたいことがいろいろあって……」


「えっ、わ、私ですか!」


 アデルに話を振られ、イラスが驚く。以前にハーピーを描いた絵をアデルに渡したことがあったのだが、それが非常に上手かったためアデルはいろいろ仕事を頼みたいと思っていたのだ。


「も、もちろんアデル様のお頼みなら断れません! それに絵が評価されたのならこんなにうれしいことは……」


 イラスは感激に震える。


「あと寄付とかは別に要らないんですが、レイコ様は唐揚げがお好きでしてね」


「唐揚げ……?」


 アデルの言葉に村人たちが不思議そうな顔をした。


「ええ、なのでニワトリをいただけると助かるんですが……」


「ニワトリに限らず、家畜は相場より高値で買わせていただきます」


 フォスターがすかさず口を挟む。ワイバーンの力を借りるためにも家畜は必要であるし、繁殖させるにも数を集めたほうが早い。


「あのぉ、納税の義務があるってことは保護もしてもらえるんですかね。うちの村がダイソンに襲われることが多いんですが……」


 今度は先ほどとは違う村長が手を上げる。貧者高原にある村の一つだ。貧者高原の村々は今まで納税から逃れていたが、ダルフェニアでは村として認め納税を求めることになっている。ただし北部連合支配下で言い渡された税よりも軽いうえに兵役もないということで、反発は小さかった。また貧しい村が多く、移住の件もあるため、一年間は免税されることになっている。


「もちろんです。実害が出ているなら早急に対処しましょう」


「おお、ありがとうございます!」


 村長たちに安堵が広がる。税金だけ取って保護などしてもらえないのではないかという不安が払拭された。ダイソンは牛のような魔物で、以前にアデルも倒したことがある。その肉は食べられるため、持って帰ってきてもらおうとアデルは思った。


 その後もいくつかの話し合いが行われ、村長会議は無事終了した。


「アデルさん!」


「おい、アデル!」


 解散を告げるや否や、アデルに声がかかる。シハの村のヒューイと”黒槍”リオであった。


「こら、お前たち! アデル王に気やすく話しかけるでない!」


 ホプキンが二人を叱る。


「いいんですよ、ホプキンさん。お二人ともお久しぶりです」


 アデルがホプキンを止め、二人に挨拶する。リンジェイが指揮する北部連合の徴収兵となっていた二人はその時アデルに降伏している。その時以来の再会であった。


「アデルさんはやっぱりスゴイっす! 感動したっす!」


 ヒューイは目を潤ませながらアデルに言った。


「こんな簡単に王になっちまうとはな。俺にも運が回ってきたぜ……」


 リオはにやりと笑った。


「ど、どうも」


 アデルはぎこちなく笑う。


「俺、前に約束した通り兵士になってアデルさんに仕えるっす! お役に立ちたいっす!」


 ヒューイは力強く言った。


「俺もお前の下で働いてやるぜ。ただし他のやつの命令なんて聞きたくねぇ。お前の直属の部下にしてくれ」


 リオが図々しく言う。


「えぇっ!」


 アデルはその勢いに顔を引きつらせる。


名前:ヒューイ

所属:ダルフェニア

指揮 58

武力 67

智謀 40

内政 44

魔力 20


名前:リオ

所属:ダルフェニア

指揮 45

武力 81

智謀 57

内政 26

魔力 13


(まあ、二人とも武力が高いからいいか……でもリオさんってこんなに強かったっけ? 能力が上がったのか……?)


 アデルは首をひねる。


「わかりました……でもちゃんと指示には従ってくださいね」


 アデルは二人の申し出を了承する。


「も、もちろんっす! アデルさんのために命をかけるっす!」


「おう。へっへ……ついにこの”黒槍”リオ様の名が世界に広まるぜ」


 二人はそれぞれの反応を示した。


「アデルさん、ところで……ハーピーはどこにいるっすか?」


 なぜか小声になってヒューイが耳打ちする、荒い鼻息がアデルの耳にかかった。


「え? 今はちょっと城を離れてますけど……」


 アデルの言葉に、ヒューイは目に見えて肩を落とした。


お読みいただきありがとうございました。

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