スモールハウス
それは、噂の中にしか存在しない家だ。
ゴミ置き場に捨てられている、可愛らしい人形の家の話。
誰が持ってきたのかは分からないけれど、いつの間にかゴミ置き場の隅に、ひっそりと捨てられているらしい。
捨てられている人形の家は、誰かが使ったようには見えない、ピカピカの新品。
おまけに見た目がとても可愛らしくて、女性受けしそうなデザインになっている。
だから、見つけた人はもったいなく思って、自分の家に持ち帰ってしまうらしい。
持ち帰った人は、たぶん大部分の人がその人形の家を、綺麗に掃除するのだろう。
当然の流れだった。
いくら新品同様といっても、ゴミ置き場に捨てられた物。
念入りにチェックしたくもなるのだろう。
たとえ見た目にゴミがついていなくても、気になるのが人間だ。
しかしその時、女性たちは気がつくのだ。
その家に人形が付属しているという事に。
その人形は、まるで意図的に隠されたかのように、奇妙な場所から見つかる。
そなえつけの家具の箪笥の中、テーブルの下、または柱の影などから。
前の持ち主は、人形でかくれんぼ遊びをして、そのまま捨てたかのような状態。
今の持ち主となった女性は訝しむはずだ。
だが、理由は考えない、思いつかない。
綺麗に手入れした人形の家に満足し、中に入れてあった人形を取り出し、そのまま一日を終えるはずだ。
そして、眠ってしまう。
翌日には、女性は消える。
すると数日後、失踪した女性の家に、友人だか同僚だか家族だかが訪れる。
円満な生活の痕跡を見て、首を傾げる彼らは最後に、人形の家を目にして訝しむだろう。
なぜならその人形の家には、失踪した女性そっくりの人形があったのだから。