T字路の戦い
「うひょひょー!」
如何にもエロそうな男が正面から来た!
全員一斉位に会敵するのはマズい。ならば正面突破だ!
前に出て、その男から胸を隠すように左腕を横にし、掌で自分の右乳を覆う。
優位だと思ってる変態は安直に胸を隠す腕を引き剥がしにきた。
「手ェ、どけろやぁ!」
私に胸を隠す左手を右手でどかしにかかるエロそうな男!
遊ばせておいた右手でそいつの手の指を掴んで折る!
私の握力舐めんな!
「いぎっ!」
男が指骨折の痛みで右手を後ろに慌てて引く!
かかった!
逃しはしない、指を更にへし折りながら右手で押し込むと、その男の隣の男の顔面に丁度よく肘鉄に!
後は泳ぐように二人の間をすり抜けて脱出!
「逃すな! 追え!」
「捕まえろ!」
「ひんむけ!」
まずは輪の中から抜け出し成功。
走る私の後を汚い男たちがバタバタと走ってついてくる!
倉庫街を走り、T字路を曲がる。
「追え!いけるぞ」
「あの通りは! しめた!」
奥まで走って止まる。
行き止まりだ。
後ろ、通りに通じる方には汚い男がびっしり居る。
背中には行き止まりの壁。開きそうなドアも窓もない、倉庫だからか。
「自分から袋小路に逃げるとはバカじゃ無えの?」
「全くだ。じゃ、嬢ちゃん、始めようか」
「おーい。誰が最初に行くんだ?」
誰が相手なんかするもんか。
こいつら、女をなんだと思って居る!
どこの国でも冒険者は同じか。自分も15歳の時に冒険者になったという黒歴史が有るが、無かったことにしてしまいたい。あの時は世間知らずのカモネギ娘だった。
「まず、3000から!」
「5000!」
「6000!」
「8000!」
「どうだ?今、8000だ。上は居るか?」
「10000!」
「デュフッ、11000!」
「11000だ。もういないか?12000居ないか? よし、11000Eでハゲで決まりだ!」
「うおおおおおお!」
って、勝鬨をあげる太ったツルッパゲの男!
こいつがハゲか。
私を最初に抱く権利をオークションで決めやがった。
それにしても11000Eとは安く見られたものだ。商売女の一晩より安い。胸が無いからか? それとも顔か?
「お嬢ちゃん、お前の最初のお客だ」
「でゅふっ!」
ハゲデブが前に出た。
臭う、小便が腐った匂いだ。何十日同じ服を着てる!
アソコはとんでもない状態に違いない!
ハゲが私と対面して、その少し後ろを種部運送の奴らがかためる。隙間はない。
「商談とは言えないんじゃない?」
「ウチの営業担当は凄腕だぞ? 」
「どうみても初仕事じゃないの」
バッと、ハゲが後ろの偉そうな男を見る!
童貞をバラされて焦ったらしい。馬鹿でもそういう言葉には敏感だ。
今だ!
一歩の助走で左の壁を蹴り、反動で右の壁に登り、梁の飛び出た引っかかりに足をかけ、壁を一気に駆ける!
勢いがついたら反対の壁を蹴り、更に高く!更に速く!
男供の頭の遥か上を駆け抜けて通りとの合流地点を目指す!
そこには見張り担当の男!
慌てて、剣を抜くのが見えた!
だが、躊躇したのか遅い!
強姦対象に切り込んでいいのか迷ったんだろう!
空中で斬撃剣を一本取り、落下エネルギーも使って見張り野郎に振り切った!
ゴトッ!
私が地面に着地すると、そいつの剣も地面に落ちた。右手がついたまま。
「そっちが先に抜いたんだからな」
それは確かめた。
手が無くなった右手首を必死に抑える男。
「うああああああああ! 手が! 手ぇがあああああ!」
吹き出した血が辺り一面を染める。死ぬかな?
団体様は呆然として居る。信じられないものを見たといった表情だ。
だが、負けたとは思ってないだろう。
「逃げるぞ! 捕まえろ!」
「許すな! 血祭りに上げろ!」
「仲間も殺せ!」
次々と剣を構える汚い男達。
ほらな。
「誰が逃げるか!」
私は通りに背を向け、斬撃剣を汚い男達に向けた。
この位置を取ったのは逃げたわけじゃない。
全員を逃さない為だ。
ギルドの冒険者なら遠慮はいらない。
「全員の相手をしてやる! そっちが言い出したんだからな」




