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ケンの不安

 俺は闇ギルドのギルド長。

 俺の事を『お父さん』と呼ぶ牧子のお陰で今の地位がある。



 今、部下の悩みを聞くために、ギルドの一室で部下と一緒に酒を飲んでいる。


 組織というのは力で支配するだけでは駄目だ。たまにはこうやって部下の話を優しく聞くことも必要だ。

 信頼を得る為だけではない。話の端々に重要な情報や、組織の中の裏事情が手にはいる事もある。アイツがサボってばかりだとか、ちょろまかしたりだとか、不味い動きをしてるとか。

 まあ、個人の悩みも聞くのだが。


 俺は組織全体の飲み会はやらないと決めている。

 全員が酒飲んでのびていたら、誰も急務に駆けつけることが出来ない。

 それに、酒の席で冒険者同士の交流が深まるかというかというと、そうでもない。


 よく見かける情景だが、

『おお、お前は錠前破りが上手いのか。今度俺の仕事に一緒に行ってくれよ!』

 こういう感じで酒を飲みながら、錠前の扱いが得意な冒険者の背中をバンバン叩きながら初対面なのに陽気に友達宣言する奴。

 一見、横の繋がりが増えて仕事が上手く行くような風に見える。

 だが、実際は錠前破りの仕事を押し付けて、自分は技術を覚える気がなく、仕事をせずに人に頼って成功だけを得ようとしてる。こういうお調子者の冒険者は咄嗟の時に自分で障害を乗り越えられなくて文句ばかり言う。失敗はお前のせいだと。

 そのくせ、成功した時には俺にドヤ顔で終了報告しにくる。

 こういう奴は危険だ。

 責任感が無いので、逮捕されたときに簡単に向こうに堕ちる。

 人脈だけで仕事をして自分は何もできにい奴には用は無い。

 ならば、そういう奴には人脈を作らせない。全体での顔合わせは必要無い。




「ケンさん、俺たちなにやってんでしょうね・・」


「聞くだけ聞いてやる。言ってみろ」


 部下は俺の態度に安心したらしく、口を開く。


「俺、昼間に死体捨てに行ったんすよ、パン屋の夫婦の死体なんですがね。いや、それが嫌だというわけじゃないっす。仕事ですもん。

 ただね、どうしてこいつら死んだんだ?って聞いたら馬鹿馬鹿しくなったんですよ。オタの野郎が殺したってんです。なんでって聞いたら親から『部屋を片付けろ』と言われたからキレて親を殺したと。

 そんな奴庇うために変装して死体隠して偽装してまた夜にこっそり隠蔽して、山に死体埋めて、金、回収して。

 隠蔽作業の為にオタの部屋も見たら、『片付けろ』と親が言ったのも納得です。

 俺、親に同情しましたよ・・・あそこは人間の住むところじゃ無い」


 ああ、部下のや悩みが見えてきた。それは俺も思うことだ。


「俺達って、あのオタの子守りの為に裏ギルドしてるんすか。ケンさんから誘って貰った時は嬉しかったっす。昔みたいに冒険者が出来るって」


「そうだな。昼間はご苦労だったな。俺も今後については色々考えている」


 部下が不満に思うのは当然だ。

 昔のような冒険者になろうと俺が誘ったのだ。


 だが、やってることはオタの尻拭いと、商家や有力者の暗殺。

 暗殺はまだいい。これは昔から冒険者の仕事だった。

 昔から冒険者の仕事は裏稼業だ。

 カモフラージュで表の仕事もあるが、あくまでカモフラージュと新たな冒険者の獲得のためだ。

 何も知らずに冒険者になった者を借金まみれにしたり、弱みを握ったりして裏稼業もできる立派な冒険者にする。

 この部下もかつて知らずに冒険者になったが、その後どっぷりとはまった。

 お陰で俺が声をかけた時に、再び冒険者になるとついて来てくれた。


 昔はギルドの依頼をこなし、報酬を得て生活して居た。

 たまに大きな仕事があると、とんでもない報酬が貰えたものだ。


 牧子からの報酬はそこまで大金じゃ無い。

 集めたオタの持ち込みが資金源だ。

 既に潰したオタの家からの収入は無い。

 オタの生活費もバカに出来ない金額だ。

 冒険者一人一人に渡せる金額は多いとは言えない。

 少なくも無いが、なんと言うか定額過ぎてつまらない。仕事による報酬の変化がなければ人は夢を持てない。いつも定額だと、困ることは無いが夢を感じることができない。

 ギルド長の俺がなんとか報酬の格差を作って冒険者の機嫌を取ろうとして居るが、総支給額が多くはないから物足りない額しか渡せない。

 そもそも牧子の活動目的が世の中の混乱。いや、破壊活動で、その中でも涼子を目の敵にしている。生産性のない活動だ。営利目的ではないからな。

 牧子は冒険者なら誰しも持ってる野望『大金を掴む!』という事を目的にしてない。これは部下の間でも噂になっている。このギルドの存在意義と将来の展望が部下達にとって不味いと。ギルドからの足抜けを考えてる者も居るだろう。


 牧子は自身のスキル『オタサーの姫』を使ってオタをコントロール出来ると言っていた。だが、実際は完全にはコントロール出来ない。コントロールするオタと牧子の要望が合致したときだけコントロール出来る・・・・いや、背中を後押しする程度だ。

 勇者に命令して勇者の婚約者になったと聞かされたときは凄い能力かと思ったが、実際は『勇者の公務に牧子が代わりに出る』という提案があって勇者が飛びついただけに見える。

 パン屋の両親をオタが殺したのも、牧子からの『店と職人を目脈茶にしろ、殺せ!』というのと、オタ息子の『部屋を片付けろと言う親が憎い』が合致してスキルが漸く効いただけだ。



 雑魚スキルじゃないか?


 雑魚なオタを守る為に俺たちは危険を犯してるのか?

 ただ、勇者を支配下に置いている現状は魅力的で捨てがたい。牧子を出し抜いて勇者を使えれば何か凄いことが出来るんじゃないか?

 俺がこの裏ギルドを捨てきれないのはこれの為だ。



「ケンさん。俺達このままでいいんすか」


「今は我慢しよう。勇者を手懐けるまでの辛抱だ。牧子が方法を探している」



「ケンさん」


「なんだ」



「俺たち、あくせくオタ野郎どもの尻拭いしてるけれども、あいつら俺たちに感謝してるんすかね? 俺たちが警察に捕まったら、あいつらや勇者は助けてくれるんすかね・・・」


 俺は答えられなかった。

 でも、答えは解っている。

 助けてなんかくれない。頼んだところで部屋からは出てこないだろう。



「ケンさん」


「なんだ」






「これは俺の独り言です。もし、ケンさんが他所でもう一度旗揚げするなら俺も行きたいです」


「なら俺も独り言だ。このままではマズいと思ってる。ただ、まだ動く時じゃ無い」

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