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旅の終わり

「今日子さんよ、間違いないわ」




 町外れの遺体安置所。

 涼子と優子は冷たくなった今日子と再会した。

 27歳の若すぎる死。

 再会は意外と早く、そして残酷だった。痩こけせてかつての魅惑的なスタイルは失われ、あちこちアザだらけ。短く切られた髪は切り揃えられたわけではなく、リンチで誰かに切られたらしい。

 衣服は破かれて着て無かった。

 遺品は仕事場に置きっぱなしにされた袋に入った一組の着替えだけだった。


 かつて碧邪魔学院の真面目で可愛くて優秀な生徒。

 卒業後、美貌ゆえにギルマスに気に入られ結婚詐欺をけしかけられ借金を背負わされ、ギルマスの奴隷となった、それは昼も夜も。

 ギルドは崩壊してギルマスは逮捕されたが、彼女の平穏は二度と戻らなかった。

 犯罪の片棒も担がされ、身を滅ぼした彼女に引き取り人は居なかった。寒い冬に釈放され、身寄りの無いまま町に消えた今日子。

 優子が同居を申し出たが、断られた。

 元ギルド員が同居すると迷惑になると。


 彼女が発見されたのは廃屋。


 釈放後、町の外れでひっそりと暮らし初めた今日子。定職には就けず、短期の仕事でなんとか生きていた。

 髪型も変え偽名で生活していた。

 新しい生活。だが不幸の連鎖は止まらなかった。ゴシップ好きの暇人達に『今日子』だと見抜かれ責められ叩かれ、たまらず泣きながら仕事場から走り去った。

 逃げるように町外れの廃墟に入ったが、そこで数人の野良冒険者に襲われ、人として女としても甚振られ殺された。実は冒険者は情報を貰って彼女のあとをつけたのだ。


 彼女に野良冒険者をけしかけたのは職場の社長の息子である。


 今日子を雇ったのは職場の社長だが、その息子が『穢れてる』と今日子を毛嫌いしていた。そして社長に内緒で野良冒険者をけしかけた。

 社長の息子から依頼を貰い、冒険者をけしかけたのはは萌え絵サークルで勇者さとるの仲良しの鉄哉という男だった。


 そして、今日子は死んだが誰も逮捕されなかった。

 鉄哉は町でぽろっと愚痴を言っただけ。()()()()()野良冒険者が聞いていた。野良冒険者は勝手に動き己が欲求を満たし、隠滅して何処かに消えた。


 ひとりの女が絶望の中この世を去り、今日も鉄哉とさとるは絵に夢中になっていた。

 そして何事も無かったかのように毎日が過ぎていく。




 共同墓地に埋葬された今日子さんに花を捧げたのは優子と涼子の二人だけだった。





 ーーーーーーーーーー




 俺の名はケン。

 生粋の冒険者。



 一年振りに冒険者に返り咲いた。いや、今はギルマスだ。

 世の中が変わり、ギルドは殆どなくなり、ただ一社残ったギルドは骨抜きされたギルドだった。しかももうすぐ倒産する。根性のない冒険者は皆サラリーマンなんぞに落ちぶれやがった、情けない。

 冒険者は己が体でギルドの依頼をやってのけ、博打のような大仕事に掛け、町に帰れば気に入った女を好きな時に抱く! それが冒険者だ。世の中の暗部も担う、精神が弱い者には務まらない。


 暫く日雇いで冷や飯を食わされて居た俺だが、チャンスがやってきた。



 牧子だ。



 この女は何故か俺を『お父さん』と呼ぶ。

 牧子の母親はギルドの奴隷女。今まで何十人の冒険者に代金の代わりに抱かれたか判らない女。

 本当は牧子も本当の父親を調べる方法など無いと判って居るのだろう。

 だが、それは逆に可能性を好き勝手に解釈できるということだ。

 そして俺をお父さんと呼ぶ。


 生憎、あの女(母親)を抱いたことはない。

 いい女ではないし、俺が見たときは既に中古どころか残飯状態だったしな。

 この事は牧子の為に黙って居る。


 いや、俺の為。


 俺を探して訪ねて来た牧子。

 地味で馴れ馴れしい女で邪魔だったが、牧子の話を聞いて驚いた。

 牧子はいくつもの会社や団体を率いていて、しかもスキルで支配して居た。

 支配された男たちは牧子を『姫』と崇める。

 支配して居るのはもやし男やデブ男ばかり。

 まあ、無能男ばかりだがこれだけの数が居ればまあ何か出来るだろう。

 そう思って居た。


 だが、次の牧子の言葉に驚いた。




「勇者さとるも支配してるわ」




 連れられて入った建物に確かに居た!

 勇者だ!

 本物だ!

 他の男のように牧子を姫と讃える。牧子の話は本当だった!

 凄いぞ。

 そして牧子のスキル『オタサーの姫』のカラクリを説明された。

 なるほど、そういう仕組みか。


「お願い、お父さんに重要なポストについて欲しい」


 そう牧子は言った。

 嬉しかったがオタサーの幹部は嫌だった。どうも、あの中には入れない。

 代わりに、


「お前たちの影の守護神になってやろう」


 これで俺の将来は安泰だ。

 牧子をスポンサーにして、俺は裏ギルドを結成した。

 牧子と牧子の所有団体を守る為だ。表に名前は出さない。正直オタサーに名前を置きたくない。

 野良冒険者を集め、仲間をどんどん増やした。野良だった奴には野良の振りをさせておいた。その方が都合がいい時もある。



 たまにオタの呪縛が解け、逃げ出すことが有れば追って密かに始末する。

 我々の障害になる人物も始末する。

 剣を振り切る度に冒険者で良かったと実感する。

 いつかはギルドと冒険者を潰した『涼子』を血祭りにあげてやりたい! まあ、先の話だが。

 涼子を敵視してるのは牧子も同じ。

 まあ、今は裕福な裏ギルド生活を満喫しよう。



 先日、ギルドの裏切り者の今日子という女を殺した。

 久しぶりにいい女を抱いた。以前見た時より少しみすぼらしくなって居たが、泣き叫ぶ裏切り者を甚振るのは最高だった!

 部下にも楽しませた。





 やはり冒険者は最高だ!

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