今度こそ初仕事!
俺は厚志!
涼子と結婚する男だ!
今、優子と行動を共にしているが、浮気じゃない!
あくまで仕事の付き合いだ!
俺と優子は今田舎に来ている!
ギルドへの依頼には【害獣退治、他】とあった。依頼主は田舎の農園主。
いざゆかん、冒険者への第一歩!
こういうときはアレだよな、予想外のアクシデントの後、仲間が増えたりアイテムが手に入ったりするのが定番だ!
心踊るぜ!
「ごめんくださーい」
優しそうな声で依頼主の家で声をかける優子。
だが、返事はない。
「ごめんくださーい、誰か居ませんかー」
優子がさっきより大きな声で呼ぶが返事はない。
因みに優子はどっしりとした黒いローブを着ている。やはり魔法使いはこうでなくてはな!
「いないのかな?」
「外かもしれん」
俺達は依頼主の家の回りを彷徨くが、それらしき人は見えない。
まさか害獣にやられたか?
周りは畑。
見渡す限りの畑。
「ん?」
今、影がうごいた!
誰か居た!
ここんちの人かも!
俺と優子は人影の方へ行く。
害獣だ!
トマトウルフ!
肉食だが茄子やトマトとかも食い荒らす迷惑な狼!
お百姓さんの天敵!
名前はトマトウルフだが、茄子にトウモロコシにスイカにイチゴも食べる!
ウルフと言うだけあって肉食だから人間も襲う怖い奴!
雑食故に繁殖力が強い!
あ、誰かがトマトウルフと戦っている!
畑の中でひとりの女性が髪を振り乱してトマトウルフに向かってこん棒を振ってる!
俺は剣を抜き、女性の元へ!
「助太刀致す!」
おお、噛まずに言えた!
俺やれば出来るじゃん!
「有難い!」
女性は答えてくれた。
「あと三頭は居る筈だ」
「あ、いたぞ!」
俺達の目を掻い潜り畑の茄子をがしがし食べるトマトウルフ。
剣を向けて追いかけるとトマトウルフはバッと、逃げるがまた反対から茄子の畝に。
「こいつめ!」
ちくしょう!
ちょこまかと動きやがって!
追えば逃げる、また野菜を食いに来る、近寄ると逃げる!
この野郎!
終わらん!
「優子!魔法でなんとかならんか!」
「え?ええ?」
優子は手から魔弾をバンバン打つが、なかなか当たらない!
しかも、外れると畑が荒れるだけで打ち損だ!
「畑からおいだしてよ!」
優子そう言うが、奴ら野菜食いに戻ってきやがるんだ!
茄子やトマトを盾に取られて魔弾をなかなか撃てない優子!
ドスッ!
やった!一頭仕留めた!
やったぞ俺!
そのとたん残りの二頭は奥地に逃げて行った。数が少なくなり不利だと思ったのだろう。
ふうっ。
「逃げたか」
女性がそういって俺達に近付いて来る。
「大丈夫ですか?」
「ああ。だが随分食い荒らされたよ。君たちは?」
「冒険者の厚志と優子です。ギルドから来ました」
「そうか、助かったよ。疲れてるところすまないが、このトマトウルフを運んでくれないか」
そういうと、女性はトマトウルフを軽々と背負った。
俺は自分の仕留めた一頭を担ぐ、重い!
そして、女性は少し離れた所のトマトウルフをもう一頭背負う。マジか!
「あと二頭あるから、もういち往復だな」
「え?」
「あと二頭あると言ったんだ」
「ええっ!」
この人、四頭仕留めたのか?
すげえよ!
この女性は、依頼主のサツキさんだった。
歳は30くらい?
俺達は仕留めたトマトウルフ五頭のうち四頭を近所の商人に売った。商人は早速町に売りに行った。肉と毛皮に価値がある。サツキさんが自分で売り歩けばもっと儲かるが、そうするとまた畑に奴らが来るかもしれない。あまり家を空けられないのだ。
しっかし、サツキさん強いな。ただの野菜農家だぞ?
「夕飯にしよう」
サツキさんが用意してくれた夕飯はトマトウルフの肉だった。とにかく量が多い。捨てるのは勿体ないからどんどん食えと!保存が出来ないから食いきるのだそうだ。多分明日の朝も同じだな。
あとは、傷物野菜を出してくれた。
「なんで? 亭主が家出して手が足りないからだよ。浮気したからぶん殴ったら家出しやがった」
依頼理由がまさかの亭主の家出のせい。
「農家はな、自分で害獣と戦えなければ暮らしていけん。獣相手と畑仕事は一人では無理だからな。だから頼んだ、明日も明後日も頼むぞ」
ひょっとして、いや、間違いなく農家は俺達冒険者より強い!
常に害獣と隣り合わせの生活してるから強くなるのか。力仕事もするしな。サツキさんはトマトウルフ四頭をただのこん棒で倒したしな・・
しかも、二頭背負うし!100キロ楽々超えてるぞ!
俺一頭がやっとだった。
優子はまあ・・
食べるだけ食べるとサツキさんが言った。
「明日は早朝から収穫だ。これからセックスするんじゃないぞ。寝不足になるからな」
「は?」
「書いてあったろう」
あー
【害獣退治・他】
他か!
なんてこった!農家手伝いだったか!
「獣退治に収穫してくれるとはお得な冒険者だ。頼りにしてるぞ!さあ寝よう」
「「・・・・」」
俺の初仕事は農家手伝い!
い、依頼だからな!
ガラガラー
あ!
サツキさん!
なんで俺と優子が同じ布団なんだ!
もじもじするな優子!
「サツキさん!
もうひとつ布団!」
「すまん、無い!」
「優子と一緒はマズイ!」
「お前らデキてないのか?」
「ない!」
「勿体ない」
更にもじもじする優子。
おい!
「じゃあ、厚志は私と寝るか」
「ちょ!待て!旦那の浮気許さん貴方が男引き込むって駄目だろ!」
「穴に入れなきゃいいだろ」
「待て待て待て待て!人妻とは駄目だ!」
「じゃあ、優子と寝ろ!穴に入れなきゃいい」
「触れるくらいなら・・いいか・・な」
顔を赤らめるな優子!
「流石に二人で同じ布団はマズい!」
「じゃあ、三人で寝よう」
二組の布団で三人寝た。
ね、寝れん!
俺を真ん中に川の字。サツキさんは隣から俺のシンボル触り、
「まだまだだな」
などと言うし、優子は俺にぴったり。
そして、二人が眠り落ちると、布団がズレて真ん中の俺は寒さで震えた・・