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さとるよ・・・

 冬の毎日。


 魔物が現れる訳でも無く、災害もなく、平和だった。

 景気もいい。

 だが、週刊オリハルコンは『この未曾有の不景気は涼子のせいだ!』とばんばん書いている。

 根拠がないことを言っているのだけれど、繰り返せば信じる人もいる。


 たまに街角に、


『涼子政治を許さない!』


 と、看板が立っている。

 立てた人はわからない。

 それは1枚や2枚ではない。


 実際、爵位を持ってない私に議決権は無く、投資家、経営者として世の中に関わった。そう、世の中は政治よりも民間から変える方が早くて確実だ。

 だがこの看板はひどいな。

 いつ、私が議長になった?

 問い詰めたいが、看板主は不明だ。




 勇者さとるといえば、相変わらず公務を放棄して趣味に没頭している。

 ダンジョンでの敗北の悔しさをバネにトレーニングとかはしてない。

 萌え絵サークルへ湯水のごとく金を流すのは相変わらず。まあ、実際は外国に流しているのだが。



 そして最近新たな分野に足を突っ込んだ。

『紙芝居』だ。


 この国にも紙芝居はある。

 紙芝居屋さんが目の前に子供達を集めて、おとぎ話や5分程度の小話をしながら絵を見せる。


 今話題は外国の紙芝居だ。

 紙芝居屋さんの代わりに女性の講談師が物語を喋る。

 その後ろに飾られるのはどでかい絵!

 裏方さん2〜3人で次々と巨大額に差し込まれる巨大な絵。

 しかも、萌え絵レベルの力作。

 通常の紙芝居が5分程度なのに、これは30分もかかり、しかもシリーズ物になっている!

 下手な小説より長い!

 題材も新しいものばかり。

 勝負もの、恋愛もの、冒険もの、コメディ・・・

 かなり凝っている。


 大型紙芝居会場の入場料は通常の紙芝居の100倍だ。


 どうもうちの国はこの分野は遅れているようだ。

 今漸く芽生えた国内産大型紙芝居のい小さな芽。

 そこにさとるが首をつっこんだ。

 ひょっとしたら将来巨大な産業になるかもしれない。そうかんがえたのだろうか?


 いや、きっとそこまでは考えてない。



 ある日、さとるの側近が私を訪ねてきた。

 愚痴を言いにきたのだ。

 側近の愚痴は長かったが要約するとこう言うことだ。


 最近さとるが入り浸ってる大型紙芝居サークルから苦情が来た。

 このサークルは海外の長編紙芝居に感動して自分たちでも作りたいと有志で活動を始めた。

 なにしろ実績もないし、ゼロから始めたサークル。

 資金は苦しいし、試行錯誤で資金が湯水のごとく無くなる。


 そこにさとるが現れた。


 最初はビッグスポンサーの登場に彼らは喜んだ。(その金はどこから?)

 だがそれは悪夢の始まり。


 さとるが総監督をすると宣言した!

 さとるは王族。

 逆らうわけにはいかない。

 さとるは自分に才能があると信じ込んで居た。

 ストーリーを決める、だが、めんどくさいところは人に丸投げ。

 丸投げされた人が作ったものにはリテイクの嵐!

 そしてさとるの作った紙芝居が圧倒的に面白くない・・

 しかも、制作してる話を途中で放り投げて次の話を始めると。


 助けてほしい、さとるを連れ帰ってほしいと懇願されたそうだ。

 そもそもさとるはお忍びで出ている。我々にどうしろと?



 頭が痛い・・・



『また幾ら使ったんだ!』

 と聞けば、

『50万です』


 あら安い。

 なーんだ。


 私は側近に言った。


「そのサークルの人たちには今制作してる作品の間だけ我慢しなさいと、言っておいて。終わったら解散して別に集まりなさい。そしたら貴方が裏から支援しなさい。請求書は私に回しなさい」


 側近は頭を下げて出て行った。

 どうやら直訴して来た(なきついた)のは側近の知り合いらしい。息子?




 さて、先日『床太鼓』に食いついたメイド。

 名前は沙羅。

 教授から予算を要求して床太鼓の発案者と打ち合わせをおっぱじめた。いいけどね。


「ファッションスタジオ直子に行っていい?」

 彼女はそう言った。

 ああ、大工と衣装と目立つ優姫が目的か。


「好きにしなさい。私は口を挟まないわ」

「オッケー」

 このメイド軽い。


 沙羅は直子さんを巻き込んであれやこれやと企画を進めた。

 だが、新しいものは大概うまくいかない。

 漸く完成した床太鼓第一号。

 小さく作ったがそれでもでかかった。

 組み立て式にすると強度が出ないからダメだそうだ。

 人一人乗るだけで振動してもいいんだから組み立て式でいいかと思ったら、音を作るためには強度がいるのだそうだ。私には良くわからない。


 狙った音は出なかったがこれから調整を進めると言う。

 沙羅によればすごい重低音だそうだ。大太鼓とは違うらしい。



 それはいい。


 花形演者として呼んだ優姫。

 踊れない、演奏できない。それはまだいい、皆んな素人だし。

 だが、優姫が踏むと床太鼓が割れた・・・


 沙羅の狙い、時の人で人気絶頂の優姫を採用しようとしたのだが、まさかの力強すぎ問題!

 試すと、小柄な女性がタップするだけで良く響く。優姫ほどの体はいらない。

 しかも、単なる楽器ではなく上で踊る事が前提なので大女には向かない・・





 優姫を使うことはボツになったらしい。



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