釈放
「お世話になりました」
刑期を終えた今日子さん。
見送りは優子と涼子だけ。
刑期は短い。取り調べと相殺されたのだ。
そもそも被害者の一人。
かつての美人ギルド員。
美貌故にギルマスに目をつけられたがために人生が狂った女。
ギルマスが依頼した結婚詐欺に騙され、謝金を背負わされギルマスの性奴隷にされ、『接待』もさせられた。
犯罪の片棒を担がされ警察にもタレこめなくなり、堕ちるところまで堕ちた。
最後はギルド内で客を取らされた。
売り飛ばされる直前に警察に逮捕(保護)された。
生きて居たのは幸運。
だが生きて居たのは不幸。
その後、他のギルド嬢も逮捕(保護)された。
彼女らに、
「生きていただけ良かった」
職員がそう声をかけると多くの女は泣いた。
生を喜んだのでは無い。
何より生きていることが辛いと。
殺された女を羨ましいと思うと・・・
自ら命を絶った人を尊敬すると・・・
保護されたギルド嬢達が共通して言う言葉。
『生きてるだけで生き地獄』
釈放(解放)された後、死を選ばず生き続ける元ギルド嬢は多い。
真面目な者ほど生きる。
真面目に生きようと思ってる訳ではない。
ギルドの命令とはいえ、犯してしまった数々の罪。
生きることは罰。
自分を痛めつけ苦しむ為に生きて居た。
逆境をなんとも思わず動けるギルド嬢はとっくにギルドを逃走しているし、糞真面目に逮捕されたりはしない。
今日子さんに身元引受け人は居なかった。
犯罪歴もあり身内からは縁を切られた。
ギルド員だった女に再就職先はなかった。
そもそも顔のしれてるこの街には居たく無い。
優子がしばらくの同居を誘ったが受けてはくれなかった。
よりにもよって寒い冬の出所。
「人目が無くて逆に嬉しいわ」
今日子さんは行き先も告げず消えた。
生きるとも死ぬとも言わなかった。
寒い日だった。




