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さて

 碧邪魔学院特設ダンジョンは終わった。



 前半の招待選手の部と違い、後半の一般の部の期間は普通に終わった。

 昨年のような逆転劇と告白が合わさったドラマはなかったが、数人告白タイムをして少々盛り上がった。

 結果はまあ・・・・

 この告白劇は来年もありそうな気がする。ひょっとしたら恒例行事になるかも。



 ふう。



 手元には『週刊オリハルコン』

 私の誹謗中傷の発信源だ。

 この雑誌を元に他の雑誌が記事転載してさらに盛り上がる。

『月刊勇者』は廃刊の危機だ。月刊ですらキツい。

『週刊オリハルコン』は週刊の上に臨時増刊号もある。


 この雑誌で私は今、『不祥事の百貨店』と呼ばれている。


 2年前には想像もつかなかった生活だ。

 ビジネスも順調。

 政治も順調。

 この国の景気はたった一年でここまでよくなった。

 治安も良くなった、褒めてほしいものだ。


「人はなんでも慣れてしまうものよ。幸せになっても慣れてもっと求めるの。まるで今不幸だと言わんばかりにね。程々にしておきなさい、キリがないわよ」


 こう言ったのは留美さんだ。

 その通りだった。

 失業率も減り、犯罪も減って、生活は豊かになったが人は求める。

 週刊オリハルコンをめくる。

 創刊号とは比べ物にならないくらい厚くなった。儲かっているのだろう。

 ぺらぺらページをめくる。


『涼子と寝た大物有名人独白』

 誰だよそれ。処女だぞ私は。


『国民の困窮の原因、独裁者涼子』

 一番頑張ったんだがなあ。


『勇者の婚約者としてふさわしくない涼子』

 ああ、それはもっと書いてくれ。


『また問題発言! 世間知らずの涼子』

 好きにしてくれ。


『言論の弾圧! 世論をコントロールする涼子!』

 ああ、9歳の幼女を強姦する劇画が摘発されたな。輸入品検査で。しかも、それ私の管轄じゃないし。


 そして最近の人気コーナーは連載小説。

 架空の国に存在する悪の女独裁者と戦って、ざまぁする物語。

 この分だと、来週号では独裁者は強姦されるな。

 本来なら強姦だから胸糞なのだが、序盤で女独裁者の非道っぷりを長々書いてヘイトを貯めている。

 これ、私のことだよね。

 胸糞だが、褒めるところもある。

 この小説の挿絵が恐らく私が知る限り、初めての国内の絵師。

 この国には絵師は居なかった。

 写真文化はあるのにイラストは描かない。

 絵師。隣国では珍しくない職業だが、この国には無かった。皆、金を払って買うだけ。




「見なかったことにしよう」




 国産が増えれば、勇者が隣国に数億も払うことは無くなるだろう。

 その礎になるのが自分の強姦シーンとはな。


 ちなみに勇者さとるは、このひと月で5000万払っている。外国の萌え絵に。


「誰の金だよ」



 先月勇者をコケにしたことで私の敵がまた増えた。


 勇者のファン。

 親王派。

 商売敵。

 会議での野党。

 外国。

 報道。

 萌え絵ファン。


 私の方はたいして嫌っては居ないのだがな。

 次は音楽界が敵に回るんだろうか?


 政界・経済界では割と味方が多いが、国民は敵の方が増えた。私は敵だとは思ってないが。

 もう開き直っている。


「憎まれ役なら私に任せて、思う存分働きなさい」


 部下にはそう言った。

『鉄の女』を演じるのも楽じゃない。




『週刊オリハルコン』を閉じて机に置く。

 厚志も読んでるのかしら。

 こんなんじゃ会えないわね。




 だが、ダンジョンで苦労して勝ち取ったものもある。


『国防の要としての勇者の価値の失墜』

 勇者が魔国に乱入できないようにするためだ。弱いと思われてる者には魔王討伐は命令されない。


『勇者との結婚の無期限延期』

 嬉しいわ。




 余計なおまけもついた。


『益々の世間からのバッシング』


 そして、

『勇者との婚約の無期限延長』

 それは、勇者さとるが私を厚志に渡さないための鎖。

 勇者親衛隊の隊長の入れ知恵だ。








 昔に帰りたい・・・

 厚志どうしてるかな・・・

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