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代用品さがし

 背の高いシルバーヘアの美女。

 逞しくもあり魅力的な体はマントで殆ど見えないが、隙間からちらちらと見えて、側にいる店主の心をかき乱す。




 ここは道具屋。

 もう何軒目だろう。

 その中の武人向けのエリアで剣を物色する美女。

 お目当は最高の剣。

 魔力による特殊機能があれば最高だ。

 探してる美女の腰には既に剣がある。

 しかも至高の逸品。それでも剣が欲しいのだ。


 新品、中古、店の看板商品。

 あれこれ手に取ってみる。

 なかなか満足できるものが無い。

 近くにいる店主。

 店主は商品の説明に、女が持ち逃げしないか監視、そして剣を持つたびに見えるマントの中の美体を見るのに大忙しだ。



 この美女、涼子の加護状態の優子である。

 腰には涼子の剣。そして普段持ち歩かない大金。

 剣と金は重いが、今の優子なら馬を背負っても平気だ。

 試した事は無いが、勇者さとるに勝てるかもしれない。


 涼子の剣は誰でも使える訳じゃない。

 あくまで涼子と涼子の認めた者だけ、しかも、この剣の神力に応えられる人材でなければならない。

 正直、素の状態の優子では扱えない。変身して強化してからやっと剣の力に応えられる。

 今の所、この剣を最大限活かせるのは優子だ。





『どんな感じ?』

『見た目だけでただの剣ね。何も感じない』


『いくら?』

『45000Zだって』


『高いわね』

『この店を出るわ』




 剣の物色をしているのは優子だが、頭の中に涼子も居る。

 そう、離れて居るが二人は今繋がって居る。

 涼子はといえば、強化状態を出した後で痴女衣装から事務服に着替えて、何食わぬ顔で新規採用者の面接をやっている。周りに職員や就職希望者がたくさん居るが、誰も気付かない。外見の違いといえば『普段より色気が有る』くらいだ。そして面接官と優子との通信をこなしている。


 景気は確実に上向きだ。

 早いうちに有能な人材を確保しなければならない。でないと有能な人材が他に取られてしまう。

 本来なら優子と一緒に店回りをしたいが、今日は面接官。


 多少疲れるが今の方法で剣探しをしている。

 強化状態に慣れる為の練習も兼ねる。

 やり始めて分かったけれど、結構な距離でも会話できる。

 王都内なら問題ない。

 そして優子には『ユニコーン』という物理的機動力もある。

 そしてこの状態の優子は強い!


 一方、剣を優子に貸してしまうと涼子は戦力は大幅ダウン。

 多少強いとはいえ、この程度の実力の人は割と居る。

 先日も冒険者たかしに敗北しそうになっていたくらいだ。

 剣を優子に貸してる間の代替え品が欲しい。


 できれば教授の言っていた『聖剣』が欲しい。

 かつて勇者の付属品()()()()聖剣が存在していたと言う。涼子が一番欲しいもの。

 手がかりは無い。

 しかし動かねばたどり着けはしない。


 聖剣が手に入らなくとも、強力な力を持った剣が有るならばそれでもいい。

 良い剣はだいたい誰かの所有物になっていて、滅多なことでは譲っては貰えない。

 だが、ごく稀に誰のものにもなってないものは有る。

 できれば魔力か神力の使えるものがいい。



 それを探すには『強化状態の優子』が最適だ。

 一般人なら気付かないものも察知できる。



 そして4軒目。


『あー勿体無い』

『どうしたの?』


『すっごい魔剣が有ったんだけど、枯れてる』

『枯れてるって?』


『多分、現役の時はすごかったんだと思う。内部の魔道がでっかいのよ。でも、ズタズタになってる』

『限界を超えて使ったということかしら?』


『多分ね、それも何度も。こんなすごい剣がダメになるってどんな戦いが有ったのかしら?』

『いくら?』


『2000Z。見た目はただのボロだし。随分刃も薄くなってるし。まあ、包丁程度なら使えるってとこ』

『復活できるかしら?』


『無理だと思う。『使い切った』と言うよりは『破壊された』感じだし』

『残念ね。休憩しましょう』




 店を出た優子。

 近くの質素な食堂に入る。昼飯だ。

 優子は戦力だけで無く、財政面でも涼子の加護(補助)がある。

 だからと言って無駄遣いはしない。




 入った食堂はトラブル中だった。


 二人組のガラの悪い冒険者が怒鳴り散らしてた。

 出された料理に虫が入ってたといちゃもんをつけ、詫びに大金を寄越せと怒鳴ってる。

 こんな奴に正義は無いから言うことを聞く必要は無いが、いかんせん店の方は年老いた老夫婦だし、用心棒なんて居るわけがない。



『やっちゃっていいかしら?』

『疲れない程度にね』


 店員に怒鳴り散らす冒険者二人の背後から優子が近く。

 後ろガラ空き。

 優子は冒険者二人の首をがっしり掴んで持ち上げる。

 浮いた足をばたつかせる冒険者二人。


「誰だ!離せ!」

「いて、いてて!」


 二人を床に叩きつけ無理やり座らせる。

 優子は前に立ち、立とうとした二人に『座れ』と声をかけると二人は何故か立てなくなった。何度も立とうとするが立てない。魔力で押さえつけられているのだが。


「人がこれから楽しみな食事をしようって言うのに邪魔なんだけど?」


 怪力に不思議な力を使う女に怯える冒険者二人。

 戦ってみなくても見た目だけで如何にも強いって感じの優子。

 男二人の首を持って持ち上げるだけで物凄い事は解ったはず。


 だが、


「ぎ、ギルドに言い付けるぞ!」


 ガキか。


「あら。財政が火の車のギルドが貴方達を守ってくれるかしら? なら、どこのギルドか言いなさい。私がギルドを()()()()()()()から」


 途端に口を閉ざす二人。

 どうやらこの女に逆らってはいけないと察したようだ。


「それとね、出されたものは食べなさい」


 そう言うと優子は冒険者の持っていた『虫』を持つと、男の口に持っていく。

 涙目で必死に口を閉ざす男。

 見るからに気持ち悪い虫。こいつらどこから持ってきたんだか。

 ぐいぐいと口に押し付ける。


「食べなさいよ」


「その虫は俺たちが入れたんだ! 料理じゃない! 許してくれこの通りだ!」


 もう一人の男が叫ぶ。漸く白状したか。


「じゃあ、犯人は?」

「俺たちだ!許してくれ!」



「私に謝ってどうする!」


 怒鳴る優子。


 手で持つ虫を魔力で灰にする。炎も出さずに一瞬で灰にするのは圧倒的魔力の証拠。

 ほんの少しの魔力の披露だがザコ相手には充分だ。

 観念した冒険者二人は店主達に向かって土下座をした。

 虫は俺たちが入れた、俺たちが悪かった、反省してるとこんこんと許しこう冒険者。

 謝罪はいいだろう。あんまり長々聞いていても腹がたつ。

 あとは迷惑料だ。



『優子、ギルドカード出させて』

『どうするの?』

『任せて』



「お前ら、ギルドカード出しな」


 すごすごとカードを差し出す二人。

 それを読んでから返す。

 没収されると思ってた冒険者は不思議がって居る。


 そして優子は財布から札を数枚出し、店主に渡す。


「店長、これはコイツらの迷惑料。それから私にA定食大盛り」


「???はい???」


 なにがなんだか判らないでいる店主。

 迷惑料を何故この女が払うのか?ってとこだろう。結構な金額だ。


「お腹空いてるの。おねがい❤️」

「は、はい」


 なにがなんだか判らないが厨房に急ぐ店主。

 再び冒険者に向く優子。


「これはお前達の口座から引いておいた。足りないのは借金になってるはずだ」


 青くなる冒険者二人!

 ここに居ながらギルドの口座を弄る!

 どうしてそんなことが可能なんだと驚いて居る。

 だが、不思議な存在のこの女なら有り得ると思っただろう。

 恐ろしい女を敵にしてしまったと後悔する二人。

 強い奴なら珍しく無い。

 だが、ギルドの口座まで操るのは別格だ!


 実際に口座から無理やり引き落としたのは涼子だが。


 そして、おそらくはコイツらに貯金などない。

 そうなるとギルドに借金。

 借金してはいけない相手ナンバーワンはギルドだ!



 優子は近くのテーブルに着く。

 そのうちA定食大盛りが来るはずだ。



「行っていいわよ」


「え?」


「もう、店に謝って貰ったし、お金も貰ったし、名前も所属ギルドも覚えたし。次こんなことしたら解ってるわよね?」



 体が自由にされ立つ冒険者。

 逆らってはいけない奴に名前を覚えられた。それだけで充分恐ろしい。

 二人はそろりそろりと入り口まで行き、表に出た途端、猛ダッシュで走り去った。行き先はおそらく所属ギルドだろう。もう、金を引かれた後だが。



 ふう。





 午後も剣探しをする優子。

 だが、良い物がない。



『ふう』

『今日はここまでにしましょう、お疲れ様。明日は別の地域で今日と同じ時間から始めましょう』


『おっけー! 歩いてると凄い剣の気配はあちこちからするんだけれど、皆所有者有りなのよね』

『上手くいかないわね』


『涼子に早く次の剣が生まれればいいのに。そうすればそれ持ってればなんとかなるのに』

『今の所増える気配はないわね』



 ちなみにすでに二人は『涼子』『優子』と呼び合う仲。

 年もほぼ同じで、共に厚志を慕う者同士。

 涼子は人生最大のミス『勇者と婚約』、優子は『涼子の存在』もあったしユニコーン乗りとして処女を貫く。二人は正に同士。


 そして、かつて老婆が涼子に言った内容は優子も知って居る。それは加護を与える人数を増やせる。恐らくは剣を増やせると言う事だろう。

 なにせ、二人は能力を使ってる最中は心が通じ合っている。悪い言い方をすれば隠し事ができない。

 涼子は優子が厚志と同じ布団で寝た事も知ったし、優子は涼子の後悔を知っている。頭に思い浮かべただけで相手に見えてしまうのだ。





『優子。もし2本目が現れても貴方に預けるわ』

『それでいいの?』


『当然よ! こんな恥ずかしい物、誰に渡せるって言うのよ。こんな心と記憶がモロバレするような物!』

『間違っても男なんかには渡せないわね。さつきさんは? 絶対戦力になるわよ』


『なるべくなら遠慮したいわ。2度も結婚してる猛者の記憶見せられたら私じゃ耐えられない! 貴方の記憶のさつきさん夫婦の夜の声だけでも耐えられないのに!』

『あれは凄かったわ。処女には刺激が強すぎ!あれを脳内で映像付きで再生されたら・・・・』



 涼子の剣による脳内リンクは容赦ない。

 稲刈り(結婚式)で泊まってた耕平さんの家。夜は耕平さんとさつきさんが大変熱い共同作業をしていて、音と揺れと声が凄かった。

 あの後、優子が布団の中でこっそりもぞもぞしたのも涼子に筒抜けだ。


 そして、『ひとりもぞもぞ(オナ)』というのをそれまで涼子は知らなかった。セックスの知識は有ったが、ひとりもぞもぞは知らなかった。





 そしてそれを真似してやってしまったことも優子に筒抜けだった。


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