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厚志を返せ!

 こんにちは、厚志です。

 涼子と結婚を夢みてた男です。

 悔やんでます。


 涼子の足を引っ張ってるだけの俺は果たして存在して良いのだろうか?

 俺のために涼子が殺されるかもしれない。

 死んでしまいたい気分。



 ええ、冒険者たかしから聞きました。

 正午に結婚式だってね。

 涼子を誘き出すための結婚式だけど、冒険者たかしは俺で遊ぶのは決定事項らしい。

 何より涼子の迷惑になってる俺の存在・・


 もうすぐ正午だ。


 涼子を追って村を飛び出した時にはまさか男と結婚式するなんて想像もしなかったよ・・

 それをネタに涼子をおびき寄せて涼子を倒して酷い事をして、俺も・・

 人生で初めて死にたいって思ったよ。




 涼子ごめん、迷惑かけて。

 できれば来ないで欲しい。

 涼子が勇者さとると結婚も嫌だけど、冒険者たかしに壊されて殺されるのはもっと嫌だ!

 そんなことなら、俺の事なんか見捨てていいよ。

 ダンジョンランキング見たけど今の涼子じゃ冒険者たかしに勝てないよ・・

 しかも、手下が3人居るし。俺を人質にされたら恋人じゃないと言っても涼子は動けないかも。いや動けない。


 涼子ごめん、迷惑かけて。

 俺が王都に来なければ。そして涼子のことさんざん言いふらさなければ。

 涼子は別に勇者さとるとの結婚は嫌がってなかったな。

 俺が勝手に纏わり付いて言いふらして邪魔になってただけだったな。

 ただの足枷になってごめん。



 涼子ごめん、迷惑かけて。

 もし、人質の俺の首に刀が突きつけられたら、自分から首掻き切って死ぬから。

 そうしたら冒険者たかしの言う事を聞かなくて済むよな。

 そしたら逃げてくれ。

 お願いだ。






 赤の広場


 俺は腕を縛られ、二人の冒険者に見張られて居る。

 少し前に仁王立ちする冒険者たかしともう一人の冒険者。

 たまに人が通りがかるが、たかしを見ると皆そそくさと逃げる。ご近所でもヤバいのは有名らしい。



 ぱからっ、ぱからっ!

 走る馬の足音。


 正面から馬が見える。

 どんどん近づいてくる。


 白い!

 角!


 優子のユニコーンだ!

 上に居るのは遠目でも判る痴女衣装ぽいのを着る女性。

 優子か!


 馬を飛び降りる黒っぽい痴女。

 走り去るユニコーン。

 長い剣を構え堂々と立つ!



 あれ?




「冒険者たかし! お主の悪事はお見通しだ! 嫌がる美男子と無理やり結婚するとは男の風上にも置けない奴! 成敗してくれる!」


「なんだあ!テメエは!」


 冒険者たかしが声を荒げて怒鳴る相手の女。


 光る素材のスーツでやたらセクシー。

 しかもやたらゴツい襟が立ってる。

 ガーターベルトでソックスのようなブーツが吊られてる。

 長くてロングな手袋に夜会用のアイマスクにティアラ。

 ガンガン立ってる髪の毛に鳥の飾り羽!



 優子じゃない!



「私はブラッククイーンマスク! 正義と愛の戦士だ!」




「・・・・・・・・・・」

 涼子なにやってんの?

 その怪しいデザインのアイマスクどうしたの?

 太ももからお尻まで肌丸出しだし、上半身の衣装は左右に別れてて胸の谷間からヘソまで布なくて紐でジグザグに縫われてるだけだし。お前、そんなに露出狂だった?

 それに『ブラッククイーンマスク』って小っ恥ずかしい名前叫んでさ・・

 しかも『正義と愛の戦士』って・・・



「誰だか知らねえが楯突く奴は叩き切ってやる!」


 いや、涼子だよ!

 お前がさんざん目の敵にしてた涼子だよ!

 目を隠して変装したって声が涼子じゃん!



「己が力を欲望の為に使うとは許せん!このブラッククイーンマスクが成敗してくれる! 天誅!」

「黙れ!小娘!」


 涼子の青く光る長い剣!体も少し青く光る!

 ハイスキル故の能力か!


「天誅!」

 ガ キ ー ン !


 有りえない轟音!

『斬撃』の剣がたかしを倒したかと思ったが、涼子の長い剣を右手剣で受け止めるたかし!

 直後左手で持った短剣で涼子の腹を狙う! 

 突如始まったロングソードの涼子と二刀流たかしの打ち合い!


 ガン!

 ガン!

 キーン!


『斬撃の女王様』対『両刀使いの二刀流』

 有りえない身体能力で素早く動き豪快な剣圧を叩き込む涼子!

 細い体からは想像もつかないパワー!凄い跳躍力!

 だがたかしもハイスキルなのか片手で受け止める!

 しかも空いた方の剣で反撃!

 涼子もスキルで身体強化しているが、たかしの素の良さがスキルの差を埋めている!

 耕平さん程では無いがガチムチの筋肉パワーで涼子の斬撃と張り合う!


 キン!

「ちっ!」


 もう何度目かの打ち込みを阻まれ、宙を舞いながら後ろに飛んで引く涼子!

 剣を左手で逆手に持つと、刀身が半分以下の長さに減る。

 なんだ?


 何かを放つ様に右手を前に向ける!

 何かが右手に集まってる!

 なにか出すのか!





「 跪 け ! 」

 怒鳴る涼子!

 右手から何かの衝撃波が出て広がる!魔法か?


 ばたっ!

 俺と手下3人は地面に突っ伏した!

『女王様の命令』か!

 でもたかしに効いてねえ!

 ハイスキル保持者のたかしには効かない!

 ちょっと膝が落ちたがそこまで。


「甘いな! 俺には効かん!」



 たかしが構えを続けて力を出し続ける涼子に剣を向ける!

 まずい!

 逃げろ涼子!





 ドン!

 ドン!


「いてえええええ!」

「うぎゃああああ!」

 そして、俺の横にいた下っ端冒険者が吹っ飛ばされて激痛に悶えている!

 なんだ?

 あ、体が動く!


 ザクザク!

 ロープ越しの感触。

 気がつけば、いつの間にかもう一人の女が俺の横に居た!

 縄を切ってる!


「切れた! 逃げて! 走って!」

「あ、ああ」


 ()()に引かれるがままにヨタつきながら走る!

 なんで優子までそんなアイマスクしてんだ?


 まだ残ってた下っ端冒険者が俺たちを追う!


「先に逃げて!」


 優子が残る。

「はああああああっ!」

 ばん!

 ばばん!

 優子が冒険者に魔弾を次々と撃つ!


「ていっ!」

「なんの!」


 下っ端冒険者が攻めてくるがなんとか優子が魔弾打って凌ぐ!

 優子の魔弾は連射では威力が弱い!

 敵をぶっ飛ばす強力なのはタメが必要だったはず。

 それでも距離は稼いだ!


「り・・ブラッククイーンマスク! 厚志取り戻した!」

「よくやった!ゆ・・ブラックウイザードマスク!」


 ブラックウイザードマスク?

 名前なげえよ!

 てか、なんで名前隠してんのさ! お互い名前言いかけたよな!

 あ、内緒なのか?

 たかしも気づいてないし。


 おれはひとまず民家の脇に隠れた。

 情けない!

 剣がそのへんに落ちてないか探したが、そんな都合よく有るわけない。ちくしょう!

 ずっと縛られてていたし水も食料も無かった俺は全然動けないし武器もない。

 悔しいが戦えない!


 広場では涼子とたかしが打ち合っている。

 別の場所で下っ端と優子が戦っている。



 優子が戦い方を変えた!

 魔弾を撃たずに両手の拳に貯め続けて撃ち放さずに直接殴る方法に変えた!

 手に貯め続けているのでパワーは有る!

 だけど、リーチが無い!

 そこに長い剣でガシガシ打ち込んでくる下っ端冒険者!

 拳の魔弾で受ける優子、刃がすげえ顔に近いいい! きっと怖いはず!


「このこのこの!」

「このアマ! あのガキはすぐに叩きのめせたのに!」


 ざざっ!

 優子が少し離れる。



「今なんつった!」



「はあ?」

「厚志叩きのめしたって言ったか!お前か!」

「な、なんだ!」


 優子の拳の魔弾がどデカく!

 優子が怒っている!


「厚志を殴ったのか!」

「おおよ!」





「 死 ね え ! 」




 怒りの超でかい魔弾のマジパンチ!

 たまらず高く吹っ飛ぶ冒険者!

 冒険者はどさりと地面に落ちてそのまま動かなくなった。

 やった、優子の勝利だ!

 そしてもう動かない冒険者3人の顔に迷わず追加パンチをお見舞いする優子。

 こええ・・・

 そして満足すると優子はぺたんと座り込んでしまった・・









 そして、広場の向こう側では涼子とたかしの戦いが続いていた。

 涼子は退がる一方。

 後ろは建物。

 機動力を奪われる。壁から離れようとしてもたかしが先に回り込んで封じる!

 スキルでは涼子の方が優っているのに、戦闘の経験の差で不利だ。



 その様子を屋根の上から眺める二人組。

 見世物でも見る様に屋根に座るのは、老人二人。

 そのうちぽっくりいきそうなシワくちゃのジジイとババア。

 そしてそれぞれ腰に剣を携えてる。


「あれが見込みのある奴だってかい?」

「ああ、綺麗な子じゃろう。頭もいいし、魔王を倒したいとも思っている様じゃ」



「ああ、でも勇者の手下なんじゃないかい? それに向こうの子もいいと思うわよ? まっすぐで可愛いし育てれば伸びそうだし、魔法使いだから剣なくて丁度よさそうだし」

「おまえ、よく見なよ。あの子はユニコーン使いじゃぞ」



「あらあら、それじゃ駄目ねえ。じゃあ貴方が言う通りあの子を選ぶことになるのかしら」

「多分そうなるじゃろう」



「貴方は? じゃああの弱い子?」

「今の所そうなるかのう」



「今の所ねえ・・・まあいいわ。まだ死なれちゃ困るわ」

「おいおい、助けるのか?」



「ちょっとアドバイスよ」



 そういうと老婆は屋根の上をてくてくと歩いて屋根の先まで進んだ。

 涼子たちの少し近くだ。

 そして戦闘中の涼子に声をかけた。






「嬢ちゃん、いいこと教えてあげよう」

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