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涼子の苦悩

「お願いだから厚志を助けて!」



 私の肩を掴み必死に訴える優子。

 私はどうしたらいい。



『斬撃の女王様』と言うスキルを獲得した時に私は自分の道を決めた。

 物心ついた時から私には欲があった。

 お金、財産の欲。

 人の上に立ちたがる。

 知識欲。それは雑学にも。

 今思えば、のちに発現するスキルへの布石だったのかもしれない。

『女王様』これを聞いた時に私の中のいくつもの点が繋がった。

 今まで行き所のない欲達の方向がびしっと照らされた。

 成人の義を行った村長の居間で狂気乱舞した。



 厚志のことは嫌いでは無い。いつも一緒の幼馴染だし。

 好きと言えば好きの内だが惚れているかと言われれば少し足りない。

 出来の悪い弟のようなものだ。



 私を好いてくれる厚志には悪いが、私の歩む道に厚志はついてこれない。

 政界、経済界、外交。

 厚志の居られる世界じゃ無い。

 私と一緒でも厚志は幸せにはなれない。


 スキルの剣で強くもなった。

 勇者さとると婚約して今まで貯めた才能を生かす場も獲得できた。

 すまない、厚志。

 私と一緒にならないほうがいい。不幸になるから。


 いろんな欲だらけな私に備わって居なかった欲。

 それは『性欲』だ。

 恋愛感情も湧かない。知識では理解してる。

 好きでも無い勇者さとると婚約をできるのも、厚志を捨てれるのも恋愛感情を持って居ないせいなのかもしれない。

 こんな女と結婚しないほうが厚志にとってはいい。もっと厚志に応えてくれる女が居る筈だ。

 そう思って去った。

 後ろ髪引かれる想いが無いわけじゃ無いが、割り切った。

 人生、欲しいもの全てが手に入るわけじゃ無い。

 お互いお爺ちゃんお婆ちゃんになるまで厚志と生きて行くのも良かったかもしれない。

 めんどくさい奴だが、嫌いでは無い。いつも何かやらかすので暇しなくて済む。

 思い返せば『楽しい日々』だ。

 だが、手放した。



 来賓として呼ばれた碧邪魔学院特設ダンジョンの後夜祭。

 思いもかけない厚志との再会。

 成人の儀以来の再会。

 厚志、すこし背が伸びた? 日焼けした?

 でも子供っぽく煩いのは相変わらずだ。

 でもちょっと男らしくなったじゃない。

 懐かしさに大喜びして厚志に絡みたかったが我慢した。

 あくまで毅然として立った。

 丁度よく一般の部の優勝準優勝者のカップルが居る。彼らにお祝いを言う為に近づいた。

 すでに彼らと仲良しな厚志。

 厚志の隣に同じくらいの歳の女の子。


 ああ、明るい厚志の周りにはいつも人が集まる。



 楽しそうだ。



 私が居なくてもすぐ仲のいい女の子ができる。厚志はバカなことをしなければ魅力的な男の子だ。

 そうか、この子が厚志の側に立つのか。

 もう私の席は無いのだな。

 それでも私に『結婚してくれ』なんていう厚志。

 横に女の子が居るのに何してる! 思わずハリセンで叩いたが、感触が懐かしい。いや、懐かしいと言うよりは、いつもの暖かい場所に帰って来たような安心感。子供の頃から毎日繰り返したボケとツッコミ。


 いつも厚志が近くに居たらいいのに・・


 結婚はできない。

 もう、さとるの婚約者だから。

 でも私の我儘を言うならどこか近くに居て欲しい。



『俺だったら主夫してるわ』


 この言葉は私の心を揺さぶった。

 何度勇者さとるに求めても搦め手で誘導してもたどり着いてくれない私の理想をあっさり口にする厚志。

 私には性欲が殆どない。

 だが、結婚はいずれしなければならないだろう。

 あまり欲がないといっても結婚観はある。


 理想の旦那像、それは『働く私を家で待っててくれる旦那様❤️』



 なんてこったい。

 はやまった・・・









 そして冒険者たかしの手紙。


 こんな奴に厚志は渡さない!

 男だろうが女だろうが厚志を穢すのは許さない!

 厚志の幸せを穢す奴は許さない!

 私は狂い出した。

 人生の曲がり角から大きく歩きすぎた。

 行き過ぎた距離がでかいほど私の心が狂う・・・






「ねえ、お願い!」


 半泣きで私を揺さぶる優子。

 ()()()厚志が好きなんだろう?

 上がってくる情報でそのくらい知って居る。

 はっきりと厚志には断られて居るのにそれでも厚志に尽くす。厚志のために叫ぶ。

 なんて可愛い娘なんだろう。

 いっそ、この娘と厚志が結婚してれば気が楽になるのに・・







「ねえ、ちょっと」


 私と優子はギルド嬢を見上げる。

 なんだろう?


「明日の正午って、今日の正午の事じゃない? 時間ないわよ」


「え?」

「しまった!」


「間に合う?」


 冒険者たかしの手紙。

 あの頭の悪いたかしは文章と日時に気を配ってないに違いない!

 書いて居る時の『明日』は今日の事だ!まずい!

 もう随分日が高い、正午までいくらもない!


「なんて事!間に合わない・・・・」






「行ってくれるんですよね!」


「ええ、でも・・」


「間に合うんだったら行きますよね!」


「でももう・・・」




 驚いた!


 半泣きだった優子がローブを投げ捨てると、体が緑の光に包まれた、眩しい!

 魔法?

 確かこの子は魔法使い。

 でも、どうやって赤の広場に? 馬でも間に合わない! 転移ができるとは思わない。



「シローーーーーーー!」


 怒鳴る優子!

 光が消え、

 投げ捨てたローブを再びまとうその姿は目を見張るような大人の色気を振りまく美女!

 これが優子? 変身?


 そして切れ長の目で私を睨みつけこう言った。



「勇者と寝てないでしょうね!」


「・・・」



 そう言うことは人には言えない。

 なんでそんな事を?


「乗れるなら間に合います」


 そう言って私を表に連れ出す優子。

 なに?どう言う事?




「シローーーー! ここよーーーー!」


 優子が叫ぶと目の前に白馬が だんっ!と降り立った!

 デカくて逞しくどんな名馬よりも凄いって一目でわかる!

 そして神々しい美しさ。


 そして頭にそびえる1本の角。


 こ、これはユニコーン!

 伝説の馬!

 魔物にも負けない体と圧倒的な機動力を持つ。そして本来なら人には従わない。


 慣れた感じで飛び乗る優子。

 これは優子のユニコーンなのか!

 こんな凄いものをどうやって!




()()()()()()。乗れないならロープで引きずって行きます!」


 優子が綺麗な目と言うよりは恐ろしい目つきで私にそう言いはなった。

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