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「やっぱり居なかったの?」


 翌日もギルドに顔を出す優子。ギルドの今日子がやっぱりかといった感じで声を掛けた。

 優子は当然ここに来るまであちこち厚志を探しながら来た。

 優子は近所で頼る相手がいない。

 耕平さんとサツキさんちは遠すぎる。ユニコーンはいるが人探しの役には立たない。

 そもそもなにがなんだか判らない。


 困り果てる優子。不安と心配で胸が張り裂けそう。

「どうしよう・・」



「あー泣くな。優子ちゃん、どうする?」

「どうしたらいいかわかんない・・」


「涼子様に教える?」

「涼子様に?」


「そう。ギルド登録の非常時の連絡先になってるし」

「涼子様に・・」


「恋敵に頼りたくない?」

「いえ、私なんか全然敵わないし・・」


「憲兵に言うより涼子様の方が強そうだし、連絡した方がいいんじゃない?」


 優子は悩んだ。

 ギルドの今日子さんの言うことは確かだ。それに解決した時に涼子さんに会えれば厚志は喜ぶかも知れない。助けられるのは男としてアレだけれども、厚志にとって世間体よりも涼子さんに会えれば状況はどうあれ厚志は喜ぶだろう。

 優子は厚志のことは好きだが最初から結ばれることは無いと思っている。なにせ厚志は最初から『俺は涼子と』なんて宣言してるし、どんなに近くに居ても口説いてこない。


 まだ厚志がピンチとなったと決まった訳じゃない。どこかで普通にしていることだってありえる。

 手がかりは増えないし、考えても考えても答えは出ない。



「連絡したわよ」

「え?」


 優子は驚いた。

 そういえばさっき今日子が奥に消えたっけ。ちょっとカウンターを今日子が離れたのは連絡の為だったようだ。因みに通信方は謎だ。鳩だろうか?


「あんた悩んでばっかりで答え出ないんだもん。『厚志が昨日から行方不明』って送ったわよ」

「あ、はい。でも、その・・」


「どうせあんたじゃ解決出来ないんだから。それに、言ったからって涼子様が何かしてくれるとは限らないわよ。超忙しい人だし、まだ事件と決まった訳じゃないし。『そうですか』で終わるかもよ」

「それもそうですね・・」


「まあ、連絡するだけなら別に困ることじゃないわよ」

「す、すいません」




 だが。




 だだだだだだっ!

 ばん!



「厚志は!」






 優子と今日子は唖然とした。


 そこには手下も連れず息を切らして走り込んできた・・



 涼子が居た。






「今日子さん、何て書いた・・の?」

「いやだから、厚志が昨日から行方不明って。それだけよ」

「その割には・・」


 どう見ても涼子が凄い形相をしていた。いつもの優雅な姿は無い。

 しかも今さっき送ったばかり。

 街の噂では涼子は美しくて強いが『才女だが冷酷』『自分の婚姻さえも道具にする女』『計算ずくで動く』と言われている。

 まさか連絡貰ってすっ飛んで来るとは思わなかった。




「郵便でーす」

 またもや来客、いや郵便配達。

 今日子に手紙を渡して去っていく郵便やさん。

 かさかさと封筒を開く今日子。



「あ」


「なに?」

「厚志のことか!」


 今日子は二人に手紙を見せた。

 目を丸くする二人。

 そして二人の時間がぴしりと停止した。





 ****************



『ギルド院はこの手紙を良子に見せろ。他のやつには見せるな!』




 クソアマ良子!

 明日正午に厚志と俺の結婚式をする。

 場所は中野村の赤の広場だ。

 俺たちは愛し有っている!

 祝いたいなら祝え!

 もし文句があるなら一人で来い! 1たい1の勝不だ!

 助っ人は許さん!

 勇者とか他かのやつとか言うなよ!

 買ったほうが厚志と結婚だ!

 俺の結婚を嫌なら俺と戦え。

 お前が買ったら厚志との仲を認めてやろう。

 俺がお前に買ったらお前は俺の2号だ!




 中野村 意大なる冒険者たかし



 ****************









「おーい、きこえるかーおーい」


 今日子が二人に声をかけるが反応がない。

 あまりの内容に精神が飛んでしまっている。

 馬鹿丸出しの文章。

 手がかりだらけというよりフルネームの脅迫状?いや怪文書。

 そして、若い二人には刺激が強すぎる冒険者たかしの性癖。

 まさか厚志の貞操の危機になるとは。


「たかしは『両刀使いの二刀流』だしねえ。聞いたことあるけどマジもんなんだよなあ」

 今日子のヤバい説明。

 マジモンのホモォ。





 だが、頭の悪い奴の書いた手紙にしてはよく考えられていた。

 あくまで『結婚』『勝負』だ。

『誘拐』『身代金』『命』には触れていない。

 しかも、勝ったら厚志と良子の仲を認めてやるときたもんだ。

 あくまで涼子はさとるの婚約者。

 しかも負けたらたかしの2号にされるとある。

 涼子を翻弄しっぱなしの手紙の内容。

 用件は結婚だ。決闘ではない。別に行かなくてもいいのだ。

 行きたくなければ行かなくていい。無理に憲兵出させる件でもない。どちらかといえば民事だ。いや、それ以下の当事者の問題だ。

 厚志がたかしを愛してるわけない。そんなのはわかっている!

 だが、この世は愛してない結婚、嫌だけど結婚なんてことはザラだ。

 困った。

 こんなのは婚約者さとるには言えない。

 変態たかし理論では『結婚式に勝負しに行く』イコール『厚志が好き』になってしまう。

 しかも負けたらたかしの2号なんて、さとるにも部下にも言えない!


 何もかも叩き潰して隠滅してしまう?

 いや、この要求では殺すわけにはいかない。

 たかしの仲間も居るのだろうが、当然隠滅できない。

 それにだ、もし、赤の広場に大勢の参列者がいたりなんかしたら・・・・・・

 誘拐や決闘なら冷静さを取り戻して対策を考えたであろう。

 自分の野望の為に勇者との婚約をする女が割り切れないことに悶える。

 まさかの愛を語るホモォの登場に流石の涼子もパニクっていた。



 そしてその横で優子は脳内反省会をしていた。

『厚志のことは好きだが涼子さま相手なら諦めるのも仕方ない』

 だが、まさかのホモォ・・・・

 こんなことなら自分が先に後ろの●●を捧げれば良かったなどと思った。求められていないのに。

 ユニコーンに乗る身としては処女は守りたい。だが●●はオッケーかもしれない。

 そう言えば、その日が来たら厚志は攻めなんだろうか? 受けなんだろうか? それによっても考えが変わる。どっちだ?



 今日子が二人をぺしぺし叩いて正気を取り戻させたが、ふたりはしばらくは床にぺたんと座ったままで立てなかった。

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