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人生初誘拐!

「待って厚志さーん!」


 厚志を追って優子はギルドを飛び出したが、厚志の姿がない。

 右を見ても左を見ても居ない。

 いつもだったら引き離して走り去られたりはしない。


 怯えて物の陰に隠れているのかな?とも思ったけれども、そこまでの命の危機は無い筈。

 今日子さんに怒鳴られただけだし。


「まさかねー、やっぱ居ない」

 ギルドの中に戻ってみたが当たり前だが厚志は居ない。


「どうしたのよ?」

「厚志が居なくなっちゃった」


「ほっとけば?どうせやることないんだし」

「う〜ん」


 そして夕方になっても、翌日になっても厚志は見つからなかった。





 _______________






 俺は厚志だ!

 涼子と結婚をする男だ!


 そういや、この間見たときに涼子の胸がすこーし育ったんじゃね?と思ったわ。

 このお宝はさとるなんかに渡さん!







 とか言ってる場合じゃない!


 いててててて。

 どごだここ?



 ギルドを飛び出した所で誰かに頭を殴られて意識が朦朧とした。



 で、気がついたらここに居るんだか、いったいここは何処で今が何時で他に誰が居るのかもさっぱり分からん。分かってるのはここがどこかの部屋で、いや、馬小屋か物置小屋みたいなとこ。捕まってるのは俺一人で身体が縛られて口も縛られてうごうごとしか喋れない。トイレ行きてえな。


 俺は誰かに捕まったのか。

 優子は無事だろうか?


 ギルドのメロンに気を付けろと言われた直後にこれか。

 俺はどうなるんだ?


 殺される?

 死にたくねえ!俺が死んだら涼子と結婚出来ん!

 それにさとると涼子の結婚が決ってしまうじゃねーか!


 それとも俺と引き換えに身代金?

 俺んち庶民だぞ!優子もだし、まさかサツキさん相手に?いやいや農家も貧乏だって。

 それならどう考えても涼子だよなあ。

 あいつ今は金持ちだろうし。

 流石に将来の夫を見捨てるなんてしないだろうけど、あいつケチだからなあ。いくらまでなら払うんだろ?

 1億?

 五千万?

 一千万?

 五百万?

 百万?



 なんか自信失くなってきた。結婚了承してもらった訳じゃないしな。それでも幼馴染だぞ!


 あ、

 ひょっとしたら払うけど、俺に借金として背負わせるかもしれん!

 あいつならやりかねん!

 夫婦でも資産は別とか平気で言いそうだ。


 いやまて!

 涼子がらみとは限らん。

 案外メロンの身体目当てのエロ野郎かも。俺を殺さない代わりに言うこと聞けとか。いや、メロンだったら平気で俺を見捨てるな。


 じゃ、優子?

 いやそれだったら優子直接拐ったほうが楽そう。あいつトロいし。





 まさか俺?


 俺が魅力的なのが悪いのか!

 どこのご婦人かは知らないが俺は涼子一筋だ!




 ぎいいいい!

 ドアが開いて変な奴が来た!

「起きたか」


 うわ、冒険者だ。

 俺も冒険者だか、冒険者って感じの冒険者。

 茶色系のきたねえ服に中途半端な剣を下げてる。頭悪そうで親近感あるわ。


 そしてドアの外に向かって怒鳴った。

「野郎おきやしたぜー!」


 うわ、冒険者っぽい!

 つうか、悪役っぽい!


 そしてゾロゾロと数人冒険者が入ってきた。全部で四人。

 うむ、聞かなくても全員冒険者だわ。

 そのうちの一人が俺に向かう。


「ふっふっふっ」


「うごうごうごお!」

 駄目だ喋れん!


「厚志だな?」

「うごうごうごお!」

 返事出来ねえ!

 このへんな口塞いでるの取れよ!


「そうかやはり厚志か」

「うごうご」(だからなんだ!)


「貴様の幼馴染には酷い目に遭った。あのアマのせいでギルドに仕事が来ねえ」

「うごうご」(俺のせいにすんな!)


「あのクソアマには死んで貰う」

「うごうごうごお!」(ヤメロ!)


「お前を餌にして呼び出してぶち殺してやる」

「うごうごうごお!」(ヤメロ!それとおしっこ漏れる!)


「そうかそうか、お前も運が無いな。あんな奴が幼馴染なばっかりに」

「うごうごうごお!」(運が無いのは分かったからトイレ!)


「いやいや、俺は強いぞ。あのクソアマ血祭りに上げてから全員でお楽しみタイムだ。憎い相手だがいい女には違いない、あいつが泣き叫ぶのが今から楽しみだぜ。お前が出てきたギルドに脅迫状置いてくるからな。クソアマには一人で来いとな」

「うごうごうごお!」(それは後で、詳しいことは後で!今はトイレ トイレ  トイレ!)


「なに?やめる訳が無いだろう。コテンパンにした後で全員で息が止まるまで弄んでやる!」

「うごうごうごお!」(ああ、鬼畜!トイレ!鬼畜!トイレ!)


「なに?俺の名か?」

「うごうごうごお!」(聞いてねえよ!トイレ~!お願いトイレ!)


「俺の名は冒険者たかし。悪いがクソアマより強いぞ」

「うごうごうごお!」(クソアマいうな!あと、俺のピンチ察しろ!だいだい名前なんかきいてねーよ!)


「ん?俺のスキルか?よくぞ聞いてくれた。『両刀使いの二刀流』だ。今年のダンジョンも二位だったんだぞ、凄いだろう!」

「うごうごうごお!」(聞いてねえよ何だよそのダブりネーム!あとトイレ!やばいって!)


「クソアマ可愛がった後でお前も可愛がってやるからな」

「うご?」(はい?)


「可愛い顔しやがって」

「うごご?」(まさか!)


「クソアマの後で全員の相手してもらうからな!」

「うごおおおおおお!」(やめてーーーーーー!)


「「「俺たち要りませんから!」」」


「何を言ってる!こんな滅多にないチャンスを!」

「いやいやいや、俺たちノーマルですから!」

「男の良さが解らんとは情けない奴らだ。こいつにも聞いてみるか」




「●●●漏れる! 助けて!」


 変態が口を自由にしてくれた瞬間に俺は叫んだ!

 本当は、小の方だけだったが、ばっちいイメージをつけたかったから●●●と叫んだ!

 頑張れば出る!



「漏れる漏れる漏れる漏れる漏れる!」


「漏らすなあ!」







 画して俺は無事トイレを()()ことができた。

 手下の見張られながらやるのはイヤだったが。

 あの変態たかしが変食趣味でなくて助かった。もしそうだったらトイレで俺は大変なことになってたに違いない。ひとまず変態たかしと離れられてよかった。

 ただ、変態たかしが、

「トイレに連れてけ。綺麗にふけよ」

と、()()()言っていたのは嫌だった!

必死にお願いしてトイレで手を使う事を許してもらった。いや、手下も俺のケツを拭きたくなかっただろし。


 しかし大変な事になったな。

 このままだと涼子が危ない!

 冒険者たかしってダンジョンで三番目の強さだよな。涼子は確か12位くらい。

 やべえよ、完全に負けるじゃん! 耕平さんとサツキさんに連絡つけないと! さとるには助けられたくねーし!



 でも、頭が悪いとかいってもさとるならこの危機を解決できるよな。

 しかも、狙われてる涼子の婚約者だ。二人のタッグならこのくらい余裕なはず。


 やはり勇者はすげーや。

 きっと涼子が厳しい政財界で生きていくには勇者さとるの戦力は不可欠だよな。言葉だけじゃ意見は通らんし。



 悔しいけど俺にはそんな力は無い。俺が側に寄り添っていたところでなんの役にも立たんし。それどころか涼子の足を引っ張ってる。

 やはり涼子はさとると結婚するのが最良なのか。俺はやはり・・

 せめてさとるがマトモな奴だったら・・

 あれ?さとるって、どんな性格?どんな奴?

 よく考えたら全然知らねーわ。涼子はさとるとの結婚は嫌がって無いように見えなくもない。王にならなきゃいいって、王にならなきゃ構わないって。さとるは悪い奴じゃないのかも。

 文句はあるかもしれないがさとる以上に涼子の力になれる奴は居ないだろう。


こんな状況になってやっと冷静に物を考える俺も馬鹿だな。




 もし、俺がさとるを越える存在になれなかったら。






 涼子はさとると結婚するのが最善なのか・・

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