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ユニコーンでパシリ

 俺は厚志!

 涼子と結婚する男だ!

 勇者さとるなんかに涼子は渡さん!

 どうしたらいいかは解らないがなんとかする!




「ぶるるるるるるっ!」



「ただいまー」


 ユニコーンに乗ってお使いに行ってた優子が帰って来た!

 ユニコーンに乗るときの優子は美人痴女だ!


「はい、耕平さん砥石と針金。サツキさんぱんつ。んで、厚志さん月刊勇者三冊!」


 それぞれモノを受けとる。ありがとう優子。

 にしても、ユニコーンはええ!

 普通の馬より速くてバテない!

 しかも優子が変身してイケイケ魔女状態だと更に速くなる!

 家数件飛び越す位は普通にできるそうで、そのうち空も飛べるんじゃねーか?それってペガサスと言わないか?


 ユニコーンは乗らないとき繋がなくても逃げないし、悪さもしない。

 頭が良くて獣にも食われないし。山ひとつ向こうに居ても優子が呼べば直ぐ来る。



 ユニコーンは町までの買い出しを一時間で終わらせる凄い奴!

 帰って行ったサツキさんのお父様も欲しいなあと言ってたわ。



「あー、それからもうすぐお客さん来ますよ、女のひとです。追い越してきましたから」


「あら、乗せてくれば良かったのに」


「その、折角だから乗ってく?って、言ったんだけど、シロに拒否られました」


「・・・・そう」


 うむ、サツキさんも乗れないな。因みにシロとはユニコーンの名前だ。

 サツキさんの会話を聞いていてつくづく思うのは言葉が少し女っぽくなった。結婚すると変わるんだな。でもまだまだガサツだ。


 因みに、この村周辺では優子のファンクラブが出来ている。

 白いユニコーンに乗る美人痴女は既に神格化されている! しかも処女!


 たが、変身無しで歩いてると優子だと気付かれない。それでいいのか!優子!




「ごめんくださーい!」



 それは来た!


「どちら様?」


「私、碧邪魔学院の生徒で直子といいます。サツキさんの弟子にして下さい!」


 とてもこの辺では見かけない綺麗でカッコいい服着た若い女性。長い髪を大きめに編んだ涼子似の美人。こ、これは!


「貴方はミス碧邪魔学院コンテストファイナリスト エントリーNo.12 直子さん!」


 そう、俺はこの人に投票したのだ!

 投票した理由はなんとな~く涼子に似てたからだ!あの日は髪を下ろしてたな!


「会えて嬉しいっす!優勝したんですか?」


「え?投票してくれたんですか?嬉しいです。残念ながら4位でした。すいません、ご期待に添えなくて」


「くうううう! 世間は見る目が無い! この素晴らしさが判らないとは!」


「あー、こいつの言うことは真に受けないでな。厚志は涼子様狂いだから」


「涼子様ね。よく似てるって言われます!」


「確かに似てるわね。弟子かあ。もうちょと早く来てくれれば良かったのに」


 サツキさん!

 絶対に稲刈り要員にするつもりだったろう!


「弟子にして頂けるでしょうか・・・」


「う〜ん、そもそも何を覚えたいの? 農業?」


「いえ、強くなりたいんです!」


「強くねえ。貴方のスキルは?」


「『無慈悲な炎』です」


 すげえ!

 直子さんすげえ強そう!


「それあれば充分じゃないの?」


「それじゃ駄目なんです! スキル無しで強くなりたいんです!」


 確かにスキル無しで強くなりたいならここの夫婦は最強の師範かもしれない!

 サツキさんなんてダンジョンの最終ステージで魔王をこん棒で倒したしな。


「理由を聞かせて貰えるかしら?」



 直子さんは待ってましたとばかりに語り始めた。



「私の夢はファッションクリエイターです。特に大型獣や大型魔獣の毛皮を扱いたいんです。今、この国は好景気になりつつ有ります。ファッション業界には追い風なんです。今こそ夢を叶えたい!

 私は既に趣味レベルてすがコートとかも作り始めています。

 あるとき見たんです。

 運ばれて来たキングトマトウルフを!

 血も付いてない刀傷も無い! 真っ新(まっさら)なキングトマトウルフ!

 残念ながら手持ちが足りなくて毛皮の権利を競り落とせませんでした。

 私はこれを何所で手に入れたか聞いたんです。そうしたら『野菜農家のサツキ』という人だと。

 色々調べてサツキさんの家に行った時は引っ越しの後でした。

 落胆しました。何所に行ったかも分からないと言われましたから。

 でも神様は私を見捨ててはいなかった!

 学園ダンジョンの最終日!

 遂に会えたんです!

 憧れのサツキさんに!

 お願いです!弟子にしてください!」


 ええと、スキル無しで強くなりたいのは毛皮を取るため?

 確かにサツキさんはこん棒だけでキングトマトウルフも倒すよな。しかも一撃で!

 俺、トマトウルフを刀で仕留めたけど、あれって、値段が下がるの?

 そういや、傷口あったら肉も腐りが早まりそうだし。



「どうだろうサツキ。少し教えてみるかい?」


 耕平さん優しい。



「そうねえ・・・う〜ん。直子さん、学校は?」


「2ヶ月間のインターンが認められてます!それと、卒業してからも教わりたいです!」


 ほおお、インターンもあるのか。

 しかもちゃんと卒業もすると。真面目だなあ。


「そうね。将来商売をするなら卒業はしっかりしないと。それと」


「それと?」





「農家になる気はある?」





「え?」



「野獣、魔獣の個体が欲しいなら田舎に住む事ね。いつ来るか判らない魔獣を待つなら農作業をするのが一番よ。わざわざ山とかに入ると仕留めた後運び出すのに時間が掛かるし、運び傷もつくわ。まあ最善は兼業農家ね。農業と製造業の兼業ね。確かに自分で取るなら傷の付け方もコントロール出来るし、仲買人から買うより安いわ。後は肉の販売ね。それは私の実家に聞いてみるわ。まだ早い話だけれど」


「農家・・・」



「それが最善よ。強いだけでは駄目よ。その先も考えなければ。どうする?直子さん」


 直子さんは考えた。

 きっと直子さんは都会育ちだろう。

 あの学校にいる人はだいたいそうだ。

 田舎に暮らす、農業をする。

 ファッション関係と言えば都会のイメージ。



 どうなる?






「・・・農業します!強くなります!夢の為です!宜しくお願いします!」


 力強く直子さんは拳を握った!

 そしてサツキさんに深々と頭を下げた。


 サツキさんは超笑顔だ。

 あ、絶対今日から稲刈り要員にされるわ・・・・

 そして俺は他の家に貸し出される日が増えた。





 一週間後、村の男で構成された『優子ファンクラブ』の半分が『直子ファンクラブ』に寝返った。

 それは直子さんが美人だというのもあるが、直子さんが好みの男性を『優しいガチムチ』と答えたからだ! これ絶対サツキさんの影響だよな。 それとも毛皮ゲットのための先行投資?


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