眩しすぎる過去
山の上の更に高い木の上に陣取る二人。
サンドラと優子である。
優子は姫剣の力を使い瑠美から教えてもらった治癒加速魔法で健康になった。
山の麓では一人の女性がダブルヘッダードラゴンと戦っている。
ダブルヘッダードラゴンは常に双子で生まれるドラゴン、頭が二つある訳じゃない。魔力持ちで双子のドラゴンは意志疎通が出来て連携攻撃をしてくる魔物。体は大きく空を飛び火を吐くし、怪力で普通の人間ならひとたまりもない。人間や牛は、このドラゴンにとって食料。
女性は空から攻撃してきた一頭のドラゴンを華麗にかわし草刈りガマを突き立て、翼に切れ目を! 痛みに叫ぶドラゴン!
思わぬピンチに相棒のドラゴンが火を噴きながら助けに入るが、女性はこん棒で助けに入ったドラゴンの頭を打ち抜いた!
どさりと地面に落ちるドラゴン。怒った残りのドラゴンが女性に襲い掛かるが翼が切れているのでうまく飛べずに女性のこん棒に打ち抜かれて終わった。そして女性は悠々と動かなくなったドラゴン2頭にトドメを刺す。
狂暴なドラゴン2頭は草刈りガマとこん棒を持つ女性に下った。
女性は農村を襲いに来たドラゴンを駆除した。
害獣や魔物を駆除するのは住民の日常。
田舎に住む。
それには、強さが必要。
害獣が出たからといって、助けを遠くに呼びに行っていたのでは間に合わないのだ。自分でなんとかするのが農家の日常。
「さつきさん、相変わらず強いわね。もう結構な歳なのに」
「ダブルヘッダードラゴンを魔法無しで倒すって凄いわね。サンドラ出来る?」
「無理無理。優子は?」
「昔だったらなんとか。今は無理」
ここは大洗領になった耕平さんとさつきさんの村。
さつきさんは、かつて優子を鍛え上げた人でもある。
優子とサンドラは村を眺めに来た。ここは懐かしい場所。山向こうにはかつてさつきさんが野菜育てながら住んでた村もある。
「会わなくていいの?」
「いいの。私の関係者とバレたら迷惑掛けるし。もう充分よ行きましょう」
「ああ」
ーーーーーーーーー
山の反対側。
かつて優子と厚志が遠征依頼を請けて来た村。初めてさつきさんと出会った村。
その一角、新開地となってる高崎からの移住者の多い地域に目的の場所はある。
高崎王国を捨てここに住み着き商売を始めた女性の工房。実際は高崎の王都から初代工房に戻っただけだが。
社長の名は直子。
元は毛皮のコートを作る為に始めた工房だが、今の本業は大工と木工家具の製作。コートは副業になり下がってしまった。
顔を見えないように隠し、遠くの物陰から工房を伺う優子とサンドラ。二人とも無言。
よく知った顔の男が客や依頼人の相手をしているのが見える。
随分元気になった。
かつては起き上がれないほど痛め付けられた。かといって今でも力仕事はそれほど出来ないだろう。それほどかつての怪我は酷かった。
男は優子とサンドラに気付かない。
「会わなくていいの?」
「貴方こそ」
二人は眩しい姿に背を向けて立ち去った。
これ以上ここにいると見たくない姿を見せつけられる。既に知っているが見たくない。情報はサンドラが手にいれてるから分かっている。いたたまれない、このまま去ろう。二人は同じ事を思った。
二人は感じた。
確かにあの建物に聖剣が有る。厚志が引き継ぐ筈だった魔界からの聖剣。夫婦剣の片割れ。未だ未登録の聖剣。
「優子、お願いがあるの」
「解ってる。全てがおわったらね」
「まあ、結婚祝い・・・・よね」
「そういう言い方もあるか」
優子は姫剣を高くかかげ見つめる。
「渡すときには綺麗にしなきゃね」
「礼はするから」
「いいって、いいって」
「じゃあ、いこっか」
「シロ呼ぶわ」
「たまには歩こう」
「それも良いわね、何か買って食う?」
「そうね」
これからやり残した戦いに向かう二人だった。




