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サンドラ、仕事一段落

「サンドラ、ご苦労」


 サンドラは五人目の逮捕者を元魔王ケルマに引き渡す。ノルマは終わった。

 サンドラは人間界に逃げ込んだ犯罪者を捜索して捕縛する任務をこなした。

 これで魔界生まれのサンドラは人間界で力をある程度行使する権利と装備を獲得した。言うなれば魔界の職員としての試用期間が終わり、実績もつき、正規の職員として認められた。

 サンドラには人間界でやりたいことがある。しかし、何でもかんでも自由にしていい訳ではない。権力には役職が要り、力には装備も必要だ。

 サンドラは五人の逮捕をしたが、そのうち三人は人間界生まれだった。

 一人は苛められた相手に復讐を。

 一人は幼馴染をとられた腹いせで復讐を。

 一人は解雇された腹いせで復讐を。


 皆、全てを忘れて魔界で平和に暮らす道があったのに、強力な武器を知った途端に狂った。所持禁止の武器を強奪したり、説得する者を害したりして罪を犯してまで人間界にザマァしに向かった。

 彼等は弱かった。

 縁があり、魔界は彼等を優しく受け入れた。でも彼等はそれを結局反故にした。

 過去にけじめをつけて新たな人生を歩む先駆者を見習わなかった。


 魔界は寛容だが、優しさを裏切った犯罪者には厳しい。極刑が待っているだろう。




 元魔王ケルマとサンドラ。


「これからどうするんだサンドラ」

「期間はあと一月残ってるのよね」

「ああ。勇者を倒しに行くのか?」

「今はその理由が無いわ。私は涼子じゃないもの。まあ、好きか嫌いかで言えば叩き斬りたいほど嫌いだけどね」

「弁えてて安心した。もし()()が出来たなら直ぐ知らせよう」

「頼むわ」


「一緒に帰るか?」

「まだ帰らない。優子を捜すわ」

「そうか・・・・確かに優子の持ってた筈の聖剣を所有すれば、勇者と対峙する権利を得られるしな」

「期間いっぱいの・・遅くとも一月後には戻る。私は決まりは守るから」

「二ヶ月だ」

「え?」

「観光ビザと合わせれば二ヶ月までオッケーだ。だが、無茶はするなよ」


「感謝してるわ、ケルマ」


 あと二ヶ月の間にサンドラは優子を探さねばならない。

 サンドラとはいえ、何時までも自由に人間界に滞在していいわけじゃない。

 皆の目を盗んでこっそり人間界に出入りしていたライケルは・・・・


「サンドラ、馬は要るか? 餌と水を自力で用意するなら一頭置いていくが?」


 暫くサンドラは考える。


「そうね、借りようかしら」


「食べるなよ」

「借り物食べないわよ。本当はバイクがいいんだけど」

「それは許可ならん。それに燃料が手に入らんだろう」

「そうね。それから()()()はどうなったの?」

「やはり気になるか?」

「そりゃあね」

「苦戦してるようだ。昔のようには行かん」


「そうね・・・・でも私も応援してるわ」

「応援してるのか?」



「してるわ」


 サンドラは彼方を見つめた。





 ーーーーーーーーーーー





 俺はケン。


 どこで人生間違えたのだろう。もう部下は一人も居ない、皆居なくなった。

 俺たちのしたことは国を滅ぼしただけ。少しくらい荒れていても自分達くらいは贅沢出来ればいいと思っていたが、終わってみれば最悪の結果だ。

 城にもアジトにも仲間はもう居ない。冒険者とオタは逃げるか餓死するかで皆居なくなった。

 牧子は国外に財産を抱えていたが、財産管理していたホスト達にみな取られた。まあ、その前から浪費で食い潰していたらしいし、ホストに裏切られなくても時間の問題だったろう。

 今俺は疫病神牧子とクズ勇者と三人で旅をしている。

 食い物を求めてだ。

 王都は食い物がない。

 なるべく田舎を歩いている。馬なんて無い。

 畑らしき物を発見したらクズ勇者に暴れさせ、その隙に作物を奪う。

 なんて情けない日々。


 そして俺は何故、冒険者達に置いて行かれたか知った。

 俺は一度偉くなってしまったが為に、顔が売れてしまった。

 国を滅ぼした三人のうちの一人として有名になってしまった。三人とは牧子とさとると(ケン)

 かつては涼子に全てを擦り付けていたが、今や俺達三人が疫病神で破壊者として知れ渡っている。

 冒険者達に置いていかれる訳だ。もう、国外には出れない・・


 かつて王都日報の奴らが俺に向かって怒鳴り混んできた。

 お前達に協力したのは間違いだったと怒鳴り散らして来た。


 何 を 今 更。


 お前達だって嬉々としてでっち上げ記事書きまくってた癖に!

 ああ、新聞記者全員皆殺しにしたさ。

 少し目を離したら死体は皆無くなっていた。 地域住民の()()()()()()()()。俺は要らん。





 食料を求めて三人旅。



 ある日、押し入った民家で寝ていると、ドサリと音がした。その後、馬の走り去る音。


 俺は飛び起きた!


 馬!


 その馬を俺にくれ!

 この国を脱走するんだ!

 牧子と勇者から逃げるんだ!





 だが、外に出たときはもう馬も人も居なかった。

 確かに馬の蹄の跡はある。


 遅く起きてきたクズ勇者と牧子。

 勇者は音の元かもしれない大きな袋を見てる。

 中は?

 警戒しながらも開けてみると袋の中身は大量の本!

 見たところ三十冊くらい! いやもっとか?


 その日以来クズ勇者が引きこもりになってしまった・・・・

 こんな僻地で・・・・

 牧子が怒鳴っても勇者は部屋から動かない。

 本を奪おうとすればキレる!


 最悪だ・・・・



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