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第三章 8 洗脳への抵抗

 妖精図書館に戻ったリン達は、いつものテーブルを囲んで座った。わたしの席には魔女が座り、わたしはまだ動けないので、別の場所に置いてあったカウチをナオに持ってきてもらい、そこに転がっていた。


 ひとまず全員で自己紹介と情報共有をしたところで、わたし達は揃って息を吐いた。魔女の名前はユーリと言うらしい。魔女じゃなくてユーリ。覚えた。

 わたしは時計を見上げながら、「それにしても早かったね」と言った。


「何が?」

「わたしのところまで来るの。わたし、結構万全な状態でも二日くらいかかったよ? 場所がわかっていたとはいえ、酷い頭痛の中でよく半分の時間で来れたよ」


 やっぱりわたしの仲間はすごいよなあ、とニコニコしていると、なんだかみんなの様子がおかしいことに気がついた。


「え、どうした?」

「何か勘違いをしているようだけど、アヤ君が行方不明になった日から二日経ってるからね。一日じゃないよ。あの頭痛の中普通に歩き続けるのは流石に厳しかった」

「……え、わたしは二日近く寝たきりだったってこと?」

「そういうことになるわね。よく生きてたわよホントに」

「マジか!」


 嘘だろ、それで一日消費してるのか!

 燃費の悪さに顔を歪めつつ、わたしは提案する。


「ひとまず整理しよう。リンかナオ、進行頼んだ」

「自分ではやらないんだね……わかった、ボクが引き受けよう。まず、今獣人界がクロスに脅かされている。そして、ボクたちはクロスから獣人界を救いたい。これが目標だね」

「うん。もし獣人界がクロスの手に渡ったら、相手にする数が膨れ上がるからね。そして、出来ることならここでクロスと決着をつけたい。無理か」

「それは無理だと思うわよ。無理と言うか、明らかにこっちの戦力も準備も足りない。人間は異空間に保存されてるわけだから、今のところまだ急がなくていいはず。変に焦って全滅したら、もうおしまいなんだから、慎重にね」


 うーん……どこまでその保存とやらが続くかわからないから、イマイチ安心はできないんだけど……。まあ、焦るのも良くないな。今考えるべきはそこじゃない。


「その洗脳はクロスの能力によるもの、でいいんですよね? だとしたら、その能力を無効化する方法を見つけないといけません。今のところ何もありませんけど……」

「その無効化の鍵になるのが、アヤ君とユーリ君だね」

「まあ、そうなるよな」


 ユーリが腕組みをしてわたしを見る。わたしもユーリを見ながら、考えてみる。


「……共通点って言えば、能力者ってことくらいだけど。あと魔法が使えること? でもそんなのみんな同じだもんね」

「あたしは能力持ってませんけどね」

「ついでにこっちは魔法が使えないから、それは共通点じゃないな」

「「「「えっ」」」」


 衝撃の告白に、わたし達は声をそろえてユーリを見た。ユーリは心底嫌そうな顔でため息をついている。


「え、でも人間ではないよね? 魔女って言われてるくらいだし、魔法使えるんじゃないの? 実際に魔法界の方の魔女は魔法ガンガンに使ってたよ?」

「確かに生まれは魔法界で魔法使いの血筋。昔は魔法も使ってた。けど、魔女に魔力奪われて魔法が使えなくなった。ついでに知り合いだったらしくて、面白がられて不老不死にされた。以上」

「よくわからないけど、あんたの運の悪さが恐ろしいってことはわかったわ。強く生きてね」

「まあ、死ねないし生きるしかないよな。わかってるよ」


 またため息を吐いたユーリを見て、魔女って言葉が似合わない人だなあと思った。魔女って言えば、魔法界の魔女だ。一つの要素も零すことなく魔女を体現していた奴を見た後だと、ユーリが魔女にはとても見えない。まず魔法が使えないし、不憫さが痛々しいほどにじみ出ている。


 あー、運が悪いんだなあ……と思いながら魔女を見ていると、リンが手を叩いた。


「はいはい、話を戻そう。まだ無効化する方法はわからないから、これから探すとして……アヤ君たちには出来るだけ外で行動してほしい。どこか行きたいところはあるかい?」

「タケのところには行こうと思ってる。さらに洗脳が強くなって、タケが完全にわたしのことを敵だと見なしてたら立ち直れないけど。でも、とりあえず様子を見たい。心配だもん」

「研究所も怪しくなってきたわよね。一番クロスの息がかかってそう。もしタケたちと話せる状態だったら、マツさんにもう一回研究所のことを聞くのもいいかもね」

「じゃあ、これからの行動計画をまとめようか」


 わたし達の話を聞いていたリンが言う。


「獣人界でも動けるアヤ君とユーリ君が、タケ君の村と研究所を調べる。妖精図書館に残るボク、ナオ君、セイ君の三人が、クロスの能力を破る方法を見つける。これでいいかな?」

「わっかりました!」


 セイが元気よく返事をする。とりあえず、わたしの一番の目標は早く体力を回復させることだなーと思い、目を閉じた。


 タケたちはまだギリギリ持ちこたえてたみたいだけど、あれから日が空いちゃったし……もう間に合わないかな……。

 

 そんなことを考えながら、わたしは眠りへと落ちていった。



*******************



 翌朝。


「いやー、元気元気。一日寝ただけでここまで回復するんだねー。人体って不思議だよ」


 たっぷり眠って体調が回復したわたしは、ユーリと並んでタケの村への道を歩いていた。一応姿は変えてあるから、様子を見てまずそうだったら、すぐに退散するつもりだ。


「そういえば、タケってやつは全然知らない奴が彩の隣にいても何も疑問に思ったりしない? 警戒しない?」

「警戒……。いや、タケは事情をわかってくれるから。小さいけど、自分の考えをズバッと突き通してくれるから、わたしはタケのことを信頼してるよ」

「へえ、じゃあ会うのが楽しみだな」


 ユーリが少し笑って、フードを被りなおした。まあ、この村にフードを被った状態で入るのはめちゃくちゃ慣れたことだしね。村人も珍しいことじゃないなってなるでしょ。


 わたし達が村の入り口に差し掛かった時、わたしは入口の傍の木の下に誰かが座っていることに気がついた。


「……あれ、タケじゃない?」

「へえ、あいつが。なんでこんなところで寝てるんだ?」

「わかんない。 一回声かけてみるか」


 わたしはタケの傍へ駆け寄り、起こすために肩に手をかけようとする。


 そこでわたしは、タケが額に汗をびっしりかいていることに気付いたのだった。


 苦しげに歪んだ表情から、わたしは恐怖とともに確信する。タケは寝てるんじゃない、倒れてるんだ……!


 タケの隣に座り、わたしは大声で呼びかける。


「タケ!? タケ、大丈夫!?」

「う、うーん……」


 わたしの必死の呼びかけに、タケは目を覚ましたようだった。むくりと起き上がったところで、また「痛い!」と頭を押さえる。


「なに、頭が痛いの!?」

「うん……。最近ずっと頭が痛いんだ。この村のみんな、頭痛くて……」

「頭痛って、あいつらもなってたよな?」


 ユーリが顎に手を当てて呟く。わたしは頷くと、「タケ」と声をかけた。


「まずは家に帰ろう。立てる? 歩ける?」

「当たり前だ、オレをなめるな……!」


 タケはふらふらしながらも立ち上がると、家の方向へと歩き出した。わたしはユーリに「行くよ」と合図をしてタケの後を追う。


「頭痛の症状は、洗脳に抵抗すると出るんだろ?」

「うん……まだ断定はできないけど、そうだと思う。でも、前にタケに会った時は洗脳を受けてたんだよ。どういうことなんだろう」


 そう話しながら、時々倒れそうになるタケを支えたりして歩いていると、タケの家に着いた。タケはわたし達を見て首を傾げる。


「ありがと……。でも、お前ら誰だ? オレ知らねーぞ?」

「彩だよ。ほら」


 わたしは能力を解除し、タケの前で軽く手を広げて見せる。まだ能力を使ってから少ししか経ってないから、反動もない。


 タケは唖然としていたけど、すぐにぶんぶんと頭を振ってドアをあけ放った。


「よく来たな! オレたち、彩たちを、待ってたんだよ。 ほら、入っていいぞ」

「ありがと。こっちは友達ね」

「どーも。おじゃまします」


 わたし達はぺこりと頭を下げながら、タケの家の中に入った。だいぶ体調が回復したらしいタケが、「父ちゃん!」と叫びながら居間に入る。


「彩が、彩が来た!」

「え、彩さんが? 本当に?」

「本当だよ! ほら!」


 わたし達が居間に入ると、マツさんは信じられないと言った風に目をみはった。でも、すぐに穏やかに微笑む。その顔は、前よりやつれているように感じた。


「それは良かった。彩さんたちにお話ししたいことがあったんです……。散らかっていますが、かけてください」

「いきなり押しかけちゃってすいません……あ、こっちは知り合いです」

「初対面ですいません。他は体調の面で来られないので」


 そう言いながら席に着くと、マツさんは「そうですか」と言って、姿勢を正した。


「いろいろ話したいことはあるのですが……。まず、第一に聞いておきたいことがあります」


 マツさんは一瞬顔を歪めて頭を押さえた後、わたしを見た。


「今、一体何が起こっているんでしょうか。これは、この記憶が掻き回されているような感覚は……。これは、クロスの仕業なんですか」


 ――洗脳に、かかっていない。


 マツさんの言葉を聞き、わたしはそれに確信をもつことができた。それだけで嬉しくて、「はい」と大きく頷く。希望の光が見えたような気がした。


「それはクロスの仕業だと思います。わたし達が知っていること、今から詳しくお話しますね」


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