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魔法使いの子ども達  作者: 時任雪緒
3 私立ワシントンプレパラトリーアカデミー 初等部2年生
46/63

3-4 スポーツ大会 1



 5月の晴れやかな日が続いている。来週はスポーツ大会があるんだ。僕らの学校のスポーツ大会は全員参加で、団体種目にクラス対抗で挑むトーナメント戦。優勝したクラスは、バレーならバレー部、サッカーならサッカー部の精鋭と対決して、雌雄を決するっていう頂上決戦もある。

 種目は、バレー、フットボール、リレー、バスケット、サバイバルゲーム。エレメンタリーの低学年はどうしても不利だから、助っ人としてアスリートコースのメンバーがチームに入ってくれる。


 それで今日はメンバー決めをするんだ。僕はくじ引きで当ててしまって、今年はクラス委員。イベントの時は仕事が山積みで大変だよ。


「じゃぁ、サバゲーやりたい人」

「はーい!」

「ハイハイ!」

「俺やるー!」


 予想はしていたけれど、刺激的でさほど体力を必要としないサバイバルゲームは大人気だ。クラスの半数近くが手を挙げている。でも、サバイバルゲームの参加者は7人。しかも一人はアスリートコースの人が参加するのは決まってるから、6人になる。どうしても選別する必要が出てくる。

 僕は唸りながらサバゲーの概要に目を通す。


「フォワード、これは攻撃特化だから、勇気があって足が速い人がいいよね。サポーター、これはフォワードの支援をするから、フォワードと同じくらい運動神経が良くて、それでいてフォワードを邪魔しないのがいいよね。ディフェンスは、敵の進軍をずっと阻止し続けなきゃいけないから、体力のある人がいいな。コマンダーは、必要に応じて援軍にならなきゃいけないし、全体を見渡して状況を把握しなきゃいけない。作戦も全部頭に入れなきゃいけないし、記憶力がよくてマルチタスクできる人が理想かな。スナイパーは、単独行動で狙撃をする人だから、かくれんぼが得意で、狙撃が上手な人がいいね。レンジャーは、囮になったり奇襲をかけたり、情報を集めて伝えたりだから、体力があって機転の利く人がいい。この条件で我こそはって人は?」

「ハイハイ! 俺フォワードやる!」

「そういうことなら、スナイパーはケイトがいいんじゃない? かくれんぼ上手だし、ダーツ得意だよね」

「コマンダーはリオがいいよ。一番頭いいもん」


 一番後ろのノアがハイハイうるさいけど、みんなメンバー選別の相談を始めた。やる気のある人+推薦の方がいいよね、多分。


「俺やる!」

「みんな、とりあえずノアがフォワードやるのはどうかな。運動神経もいいし、猪突猛進で敵陣に突っ込んでいくの想像できるし。作戦とか無視しそうだけど」

「あははは」

「いーよー」

「作戦なんかいらねーって!」

「ノア、ゲームは頭も使うんだよ。たまには頭を使わないと」

「ジョニー酷い! 俺だって一応1クラスなのに!」

「ギリ30位が言っても説得力ないよ」

「あははは」

「ジョニーが酷いよぅ」

「あははは」

「じゃぁフォワードはノアで決まりだね。後のメンバーはまた聞くからみんな考えておいて。先にバレーのメンバーを決めちゃおう」


 その後は割とスムーズにメンバーが決まって、最後にサバゲーのメンバーもちゃんと決まった。ちなみに僕はリレーに出るよ。本当はノアはリレー向きなんだけどね。

 僕は放課後になってメンバーリストを実行委員会に提出。みんなスポーツ大会の練習を始めているけれど、僕はどうしようか。悩みながらプラプラ歩いていると、ちょうど仕事が終わったらしいドミニクさんと鉢合わせした。


「ドミニクさんお疲れ様」

「よう。来週スポーツ大会なんだって?」

「うん」

「ジョニーは練習しなくていいのか?」

「どうしようかなって」

「いいのか? 優勝特典もらえないぞ?」

「え?」


 優勝特典、なにそれ。僕は持っていたスポーツ大会概要をバババとめくる。一番最後のページ、一番最後の行に書いてある項目に、僕は釘付けになる。


 優勝クラスには、1週間デザートに有名店のケーキ、1日ネズミーランドフリーパス、ハーバード大学主席合格生の12年分のノートのデータ、この3つから好きなものを特典として与える。

 

 なんだってー! こんな特典があったなんて、僕としたことが!

 僕はすぐにドミニクさんに向き直る。


「教えてくれてありがと! 練習行ってくる!」

「おー、頑張れ」


 僕はバビュンとその場から走って更衣室に駆け込んだ。このことを明日改めて皆にも伝えなきゃ。絶対優勝するぞ。


 ハーバード大生のノート。ハーバード大生のノート! 



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