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見知らぬ天井

目を覚ますと見知らぬ天井があった。

身体を起こそうとするがあちこちが痛く、なんだか気怠い。痛いのを我慢して、どうにか視線を巡らせると大きな窓があった。白いレースカーテン越しに光が差し込み、昼間のようだった。

なんだか頭がボンヤリする。


しばらくボーッと窓の辺りを見ていると、足元の方からコンコンと軽いノックがした。

「失礼致します」の声と共に知らない女が3人入ってきた。2人は簡素な侍女のお仕着せを着ているが自分の邸のデザインでは無く、1人は装飾のない白い上着にベージュのゆったりとしたパンツスタイルだった。

「お目覚めになられて何よりでございます。エルフリーデ様」

あちらは私の事を知っているらしい。

「此処は何処なの?貴方達は?」

自分の声が随分と掠れていて驚いた。

「此処はハイデマリー帝恩賜病院でございます。私はエルフリーデ様の担当医を務めます、サルコウと申します」

「恩賜病院のサルコウ先生…」

ハイデマリー帝恩賜病院は、たしかお母様の産まれた病院だ。その際お祖母様は後期高齢出産の上大変な難産で、この病院でなければ母子ともに無事には済まなかっただろうと聞いた事がある。医師とスタッフの献身に甚く感動した祖父母は、産まれた娘にハイデマリーと名付け毎年寄付を欠かさなかったそうだ。祖父母亡き後の今はお母様がその寄付を引き継いでいる。

「後ろの2人は当院の看護師で、入院中エルフリーデ様のお世話をさせて頂きます」

「ループでございます」

赤髪でそばかすの目立つ娘が一礼する。

「ルッツでございます」

栗毛で短髪の娘が一礼する。

「オートマタメイドなの?」

3人揃って微笑む。

「いいえ、2人とも人間ですよ。エルフリーデ様には珍しくないでしょう?」

侍女風の看護師2人は挨拶が済むとベッドの両脇に移動し、機械のように揃った動きでテキパキと何か作業を始めた。

「入院っていつまでなの?私何か悪い病気なの?」

「ご安心ください、病気ではありませんよ。ご気分は如何ですか?診察しますので、失礼致しますね」

サルコウ先生の手が首筋に触れる。ループとルッツによって上掛けが除けられ、寝間着がはだけられる。

「なに、これ」

お腹には大きなガーゼが貼られていた。両腕は包帯でぐるぐる巻きにされて、手の甲には魔力制限と薬剤点滴用の機器が其々取付けられている。なるほど。どうりで身体が動かしづらい訳である。体温計が口の中に差し込まれた。

「詳しいお話はケムニッツ伯爵様が到着されてから致しますね」

ケムニッツ伯爵はお父様の友人で、その夫人は母の幼馴染で親友だ。何かあると互いの邸を行き来し、とても親しくしているが何故お父様を差し置いて先に…来る…の……。


「あ、ああぁ!あぁぁぁー」


体温計が首横に落ちた。

喉が痺れる。自分の声で、耳が痛い。


打ち付ける雨の音。

無理矢理押込められた狭くて暗いキャリーバックの中。

殴りつけられる衝撃。

お母様の悲鳴と男達のたてる水音。

血の匂い。

お父様の怒声と発砲音。


「いやっ!やめて。お父様!お母様!!」


胸の真ん中から何かがせり上がってくる。むせ返ると、口の中が酸っぱい。

髪を振り乱し、両腕の拘束を振り払い、伸ばした手はサルコウ先生に掴まれた。

そして、そのまま引き寄せられ強く抱き締められる。


「もう少し眠りましょうね」

耳元でサルコウ先生の優しいアルトが囁く。

ループかルッツによって頸へ生暖かい金属があてられ、だんだんと瞼が重くなる。



あの夜の男達の言葉がよみがえる「構うもんか。まだ、あったけーぞ。お前も入れてみろよ」「死体だろ、それ。気持ち悪ぃ」



ベッドに寝かせつけられたら、また見知らぬ天井があった。私を支える暖かい手が気持ち悪い。

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