最終章ー2話「英治さんの平手」
全員息を飲んでいた。
沈黙は続いた。圧倒的、パンチもキックも全てが上をいき天才としか言葉で表せなかった。どうやって戦えば。悪条件はそれだけではない。
トーナメントでは先に試合を終えて勝ちあがったほうが有利だったりする。
でも僕は先の小泉戦でかなりダメージを負っている。
それに対して長門はノーダーメージ。スタミナも十分だろう。どうすれば。どうすれば・・・。
「どうした?怖気ついたか?」
いえ・・・。でもこのレベル差は埋まらないですよ。格が違う。
「バカヤロウ!!そんなんでどうするんだ!」
英治さんの怒鳴り声が控え室に響き渡る。
「何のためにここまで練習してきたんだ!負ける為か!諦めるためか!勝つためだろ!」
英冶さんは更に続けた。
「お前はK―1に出たいんだろう!憧れている人がいるんだろう!そんな調子でたどり着けると思うな!
これから先長門より強い相手なんていくらでも出てくるぞ!そんな相手に毎回毎回尻尾振るのか??気合いれろ!」
バチン!
英冶さんの平手打ちが僕の頬に炸裂した。
おおおおお・・・・痛い。
「気合入ったか?」
ええ・・・。少なくとも長門のパンチが英冶さんの平手より強いとも思えないです・・・。
「その調子だ。」
英冶さんはニヤっと笑ってくれた。
「それにまったく敵わない相手だと思ってない。長門のパンチは凄かったがそれ以外が凄いのは折込済みだ。それにお前には長門が持ってない武器を一つだけもっているだろ。」
武器・・・三日月蹴りのことか。
「そうだ。それをここぞってときのボディにぶち込んでやれ。それが勝機だ。」
たった一つ。それが僕の武器か。




