表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
K-1甲子園  作者: 冬夏
36/53

7章ー10「これってデート?」

翌朝、いつものコースを走り終えると英治さんと会長はピンクパンダに戻った。

まりか先生の元残りのメンバーで100本ダッシュを終え午後は自由時間となった。


この練習も不思議と慣れて来て苦にならなくなってきたことはビックリした。

財布の無いみきとしゅんは乙女姉さんから一時返してもらい英治さんからお小遣いをもらったらしく城を観にいくといってそのまま飛び出した。


僕も行こうとしたのだが英治さんとまりか先生にお前は休んでろと言われ城には行かなかった。

まりか先生と乙女姉さんは民宿に残り部屋に掃除、洗濯、勉強などをすると残っていた。


ラッキー先輩は、

「れっつなんぱ。」

と機械音を発して市街地に消えた。

健闘を祈る。


拉致される形で来た僕は暇を潰すものはもってきておらずテレビをつけたりボーっとしてすごした。そのまま眠気が襲ってきたので横になろうと思った。


一時間くらいたった頃だった。

乙女姉さんが僕の元へやってきた。


「ねぇねぇ。これ観て。まりかさんの雑誌なんだけど。」

 

その雑誌は行楽地をまとめている雑誌だった。乙女姉さんが開いているページはショッピングモールの特集だった。

「今見たんだけど、このショッピングモールここから近いんだって。」

 へぇー。そうなんだ。これ写真からみても随分お洒落だね。


「でね。まりかさんが後部屋の事やっておいてくれるらしいから行っておいでって言ってくれたのだけど・・・芳樹も一緒に行かない?」


え?僕と・・・?


「あと皆でかけてしまったしね。良かったらどう?」


突然の誘いに困惑した。まさかこれは夢みたいなものかな。足は・・・。動く。手は・・・・大丈夫、夢では無いみたいだ。


行くよ乙女姉さん。


「そう。じゃあ支度して。」

 あっ、でも僕まりか先生に大人しくしてろって言われたんだ。


「大丈夫!ショッピングモールうろつくくらいなーんでもないよぉ!」

 そこに突然まりか先生が現れた。どこから出てきた!


「そ・・・うですか。じゃあ芳樹と出かけてきますので後の事よろしくお願いします。」

「わかったー。まっかせておいてぇー。(任せておいて。)」


僕は合宿6日目にして乙女姉さんと二人きりになった。

これってデート?


車は英治さんたちが使っていたためまりか先生がタクシーを呼んでそれで駅に向かった。

田舎の電車はそう本数が多くなくてびっくりした。一本のがしたら次30分以上あるのか・・・。


「都内は多いもんね。時刻表なんてめったにみないかも。」

そうだね。まぁそんなに外出する生活を送っていないってのもあるのだけどね。

通学くらいだね。電車乗るの。


「私は結構でかけたりするわよ。友達とこの間も買い物にいったし。」

 へぇー。そうだったんだ。


 平和だ。

こんな平和な時間があって良いのだろうか。朝たたき起こされ、竹刀でしばかれたり、体がから体液ががなくなるまで走らされたり、ぼっこぼこになぐられたりしなくていいのかぁ。


「ちょっと何涙ぐんでるの?そんなにこの列車に感動した?鉄道好きだっけ?」

 いえ・・・ちょっと目にゴミが。

「あっもう着くわよ。忘れ物しないようにちゃんと足元とかみてよね。大丈夫?」


相変わらず子供扱いだなー。


ショッピングモールたどり着くとその大きさと天井の高さ、風通りのよさに好感度がアップした。すごい風が気持ち良い。それに店が沢山並んでこれは1日あっても周りきれないな。

 

「ねぇどこから周りたい?なにか欲しい物とかあるの?」

 

そうだなーけっこうぼろぼろになってしまったから新しいバンテージと脛サポーターなんかあったら欲しいね。この合宿でぼろぼろになってしまったよ。

 

「そんなのここにあるのかしら?スポーツショップはあるみたいだけど・・・、。」


はっ。

僕はなんてムードの無い事を。嘘でもおしゃれな靴とか言えばよかったかな。えっと・・・・あっ雑貨なんか観にいかない?


「雑貨良いわね。行きましょう。」

乙女姉さんはMAPを一冊取りそれを頼りに歩き始めた。

雑貨とざっくばらんに言ったもののその店の多さにどこに入っていいのか本当に迷った。手当たり次第入るかな。


雑貨だけでも何店舗あるのだろうか?

「本当に多いわね。人も多いし。夏休みだから当たり前だけど。」

確かに人は多いね。

 

「こんだけ人が居るものだもの。芳樹のことしっている人が居るかもね。」

  

いやぁ。

深夜番組にちょこっとだけ出ただけだしそれは無いと思うよ。

 

「ふふっ。こんな所みられたらスキャンダルだね。気をつけないよ。」

  

スキャンダルって。

「ほらこういうの家に欲しいわ。」

 

そういって乙女姉さんが手に取ったものは木製のスプーンとフォークだった。

「こういうの一式揃えて食事してみたいわ。」

 

結構値段するんだね。いつも使っているやつの倍以上の値段だ。


「そうね。あっこれこんどのお弁当の箱にしようかしら勿論あなたのよ?」

その商品は・・・。

箱の表にひよこのがらでみるからに幼児向きの、しかも女の子向きの弁当箱だった。

「あっいまムカッてきたでしょ?ふふっ冗談よ。さーって今度はあっち行きましょう。」


洋服、アクセサリー、CDショップと回った。民族衣装みたいなアジアテイストのお店があり乙女姉さんは気になったらしく何度も試着していた。

「似合う?」


幾度と無く感想を求められるが普段絶対に着ることがない服装なだけに、コスプレをしているような感じになっていたけどこのことは黙っておこう。


似合ってるよ。

「そう?ありがとう。でもちょっと来て帰るのは勇気がいるわね。また今度の機会に買おうかしら。」

もう試着数30着を超えてそれですか。店員泣きますよ。姉さん。

 

すこし薄暗くなり夕食の時間となった。二人で何食べたいか話し合った結果お好み焼きになった。

30分程並んで案内された。店内はにぎやかでで特に店員が元気で、「カップル様ご案内!」などと冷や

かされ二人して顔を真っ赤にした、そうか外からみればそう見えるのか。


「それとってくれる。わたし焼くからそれ混ぜておいて。」

「あっそれもうひっくり返して、ああーそんなに叩いちゃだめよ。」

「これマヨネーズかけていいのかしら?あっ先に食べて良いから。」

もう乙女姉さんのペースだった。


うかつだった。

焼いている姿をみせて僕の男気溢れるかっこいい姿を見せようかと思ったのに駄目だ。


乙女姉さんの母性本能に、家事スキルに火をつけてしまった。

もうこうなったら任せるしかないな。・・・ん?かっこいいとこ見せる?乙女姉さんに?どうしてそんなこと思ったのだろう。


合宿にきてから変だな。

なんかやたら乙女姉さんが気になる。どうしてだろう。

「どうしたの?食べないの?シーフードミックス嫌いだった?」


いやそうじゃなくて・・・・。何でもないや。

「早く食べないと冷めちゃうよ?」

 

そうだね。

僕は乙女姉さんが焼いてくれたお好み焼きを口に頬張りながらあの夢を思い出した、。

乙女姉さんが彼氏と帰ってしまう夢だ。そうだあんな夢みたからか。ねぇねぇ乙女姉さん。


「何?どうかしたの?」

乙女姉さんって実は彼氏いる?僕の唐突な質問だった。

「えっ!何急に!」

 

乙女姉さんは目を丸く。

焼いている手を止めてこちらを凝視していた。あっいやごめんなさい。実は夢でね・・・。って事なんだ。そんなに驚かなくても。

「全く。好き勝手な夢見ないでよね。行きの車でまりかさんにも聞かれたけど私そういうのいないからね。」


そうだったよね。ごめん。

「もう。恥かしいんだから。」

何かちょっと気まずい空気になってしまったかな?お好み焼きは味が熱くて味がわからなかった。


お好み焼きで時間をだいぶ食ってしまったらしく遅い時間になってしまった。

 

急いで電車に乗り合宿所の最寄の駅に向かった。

あれから乙女姉さんはあまり口を聞かなくなってしまった。


なにを怒っているのか、それとも疲れているのか。

理由は分からなかった。


でもお好み焼きのあの話以降ってのはわかる。

そんなに気にする事かな・・・。


駅にはもう遅い時間だったのでタクシーが無かった。

どうしよっか。

まだ英治さんたち帰ってきてないだろうし仮にいても迎えなんて言えないよな。


「歩いて帰りましょう。そこの道まがってあと山道をまっすぐいくだけだだし。」

ようやく乙女姉さんが口を開いた。

そうだね。歩こうかな。


道沿いに流れる川、途方も無くでかい田んぼ。普段走っているときはきがつかなったけど良い景色なんだな。淡々と山道を登りつめる。結構大変だとおもったけどらくらく歩けるかー。


あれだけ走りこんだから脚力がついたかな。

さくさく進みすぎて結構後ろの方に乙女姉さんが居た。

「随分早く歩けるのね。特訓の成果?」

 うんそうだね。ありがとう。でもその口調はすこし怒っているようにも聞こえた。もしかしたら皮肉だったのかも。そうだその荷物持つよ。歩くの大変でしょ?

「良いわよ。大した重さじゃないし。」

 そんな事いうなよ。ほら僕鍛えてるし、先まだあるし。僕は乙女姉さんに駆け寄り手を差し出した。

「良いって。本当に。気にしないで。大丈夫だから。」

僕は乙女姉さんの荷物を引っ張ったのだけど本当にいやそうだったので辞めた。でも急に離したのがいけなった。乙女姉さんはバランスを崩しかけた。僕はそれを支えようと乙女姉さんをの手を摑み強く引き寄せた。

「きゃっ。」

 あっ。

その姿は結果として抱き合ってるようになっていた。すぐに乙女姉さんは僕から離れ、僕も腕を放した。ごめん。そのっついとっさに。


「・・・分かってる。大丈夫だから。」

心臓がドキドキなっている。口から吐き出しそうだ。どうしよう。余計きまづい。なんでこんなことになってしまった。何か話しかけきゃ・・・。


 あの・・・とりあえず先にすすみましょっか?まだ道のりあるし。

 

「そうね。・・・・そうしましょう。」

  

そしてぼくらは歩きはじめた。

 「あのね。芳樹私・・・。その本・・のところね・・・よし・・のこと。」

 

えっ?


僕は周りの騒音にかき消されて乙女姉さんの喋り声が聞こえなかった。しかしこの山道になんのこの音は。

 

すると後ろからバイクの大群がこちらに向かってきた。

音からするに改造車の音だった。


こんなところにも暴走族っているのか。

僕らはやり過ごそうと端に避けた。


しかしそのバイクは僕たちに近づいてくるように徐行を始めた。


なんだってんだ。

 

僕は乙女姉さんの手を取って走った。

あきらかに相手はこっちを意識して移動してる。


このバイクの集団僕たちが気に入らないのか。


いずれにせよ乙女姉さんが心配だ。僕は力一杯走った。

真っ暗な道をとにかく駆け抜けた。


それでもバイクは僕たちに寄ってきた。

何か叫んでいるがバイクのエンジン音で聞こえなかった。


威嚇しているのだろうか。

「あっ!待って!」


しかし僕の足が速すぎたせいか乙女姉さんはこけてしまった。さらに足首を押さえているあたり捻挫してしまったようだ。こうなったら・・・。

 

僕は覚悟を決めた。

ポケットに財布、携帯を道に放り出腰を落として構えた。


 やるしかない。

 

乙女姉さんを後ろにしてバイクの大群をにらみつけた。

深く呼吸して丹田に力を込めた。


落ち着け。


刺し違えても乙女姉さんを助けるんだ。距離を取って・・・。距離?そうかあいては武器をもっている可能性だったある。


一気に間合いを詰めて一人一撃で仕留めないと。

 

相手はバイクを止めて全員降りてきた。その人数ざっと10人。この人数をやれるか??




「おい。お前越前だろ。なんでそんなにすごんでるんだよ。」




そこに立っていたのは3年の横瀬先輩だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ