7章ー9話「温泉にいこう!」
合宿も5日目を無事に終了して夜皆で温泉に行こうとなった。
山の上に天然温泉があるということだったので車移動した。
最近ずっと備え付けのシャワーだけだったのでゆっくり入るのは久し振りだったため疲れを癒したいところである。
「混浴か?」
「安心しろ。露天はあるらしい。」
「ジャグジーとかぁたのしみだねぇ。」
「まりかさんそれ健康ランドですよね。」
この合宿唯一の娯楽となって気分もワクワワクするものであった。
脱衣所でみきが驚いたように声をかけてきた。
「お前すごい体だな!鏡みてみろよ!」
全身が映る鏡で自分の体をみてみた。
胸筋はバキバキで腹筋は凹凸がはっきりしておりボコボコになっていた。
太ももは魔法瓶のように逞しいくらい太くなっていた。なるほどこれは凄い身体にになっている。
みきはふざけて僕の体を叩き始めてる。
それに続いてラッキー先輩も叩きだし英治さんも褒めてくれた。
うしろの戸が開いた。
しゅんが入ってきたのだろう。
彼も驚かせようとぼくはポージングを取った。
「おや。凄いじゃないですか。」
そう言いながら脱いだしゅんの体は僕よりもメキメキしており元から皮下脂肪が少ないせいか筋肉の筋か浮き立っており、ボディバランスはぼくより美しかった。
「こりゃ・・・ブルース・リーだな。」
そう言った会長の言葉に誰も反論しなかった。
合宿の走りこみはしゅんをより強靭な体に作り変えた。
ちきしょう。
天然温泉は疲労困憊していた体の隅々を癒してくれた。
地から溢れだすエネルギーを肌で感じた。
混浴でなかったがよほどがっがりだったのかラッキー先輩はあまり口を開らかなかった。
いや疲れが溜まっているのだろうか。
会長が体を洗っていたので背中でも洗おうと声をかけようとしたら英治さんがその背中を洗っていた。ああみると親子なんだなーって思った。すこし微笑ましいものだった。
露天に場所を変えて空を眺めた。
空気が澄んでいるのか実家より星が沢山見えた。最近テレビ観てないなー。
世の中って何が起きているのだろう。
「何だ芳樹ニュース気になるのか?じゃあ教えてやるよ。」
そういって口を開いたら最後。
みきのおしゃべりは止まらなかった。
主に政治をしていたのだがある政党の話を軸に左翼思想をありとあらゆる言葉を用いて批判しつくした。
その話の半分も理解してないが、近くにいるおじさんがあきらかにこっちを向いて顔を真っ赤で睨んでいた。
まずい。
ぼくとしゅんはさりげなくみきを室内に誘導して難を逃れた。
風呂から出るとお決まりの卓球!なんてものは無く無難に牛乳を飲み干すことにした。
しかし僕ら3人は財布を持っておらず、会長に驕ってもらった。
まりか先生と乙女姉さんが上がってきた。
湯上りは二人を妖艶な姿にしていたような気がした。
こういうのはラッキー先輩が拾うものだと思ったけどまだうなだれていた。
「お待たせ。何か飲んだ?」
湯上りの乙女姉さんは火照っている感じがとても可愛くみえた。ぼくはすこし恥かしくなって目をそらした。
「何で目をそらすのよ。失礼しちゃうわ。」
そう言ってみきやしゅんの所に行ってしまった。その様子を見ていたまりか先生が英治さんに何か耳打ちしていた。なにやらまりか先生はニヤニヤしている様子だった。
帰りの車の中で英治さんから明日の予定変更を告げられた。
「明日は午前中練習して午後は休みにする。皆自由にすごしてくれ。」
あれ?急にどうしたんだろう。
何か用事でも出来たのですか?
「明日急なんだが雑誌の取材が入った。俺は一旦ピンクパンダに戻る。会長も一緒だ。」
そうなんですか。しかしあっちまで戻るの大変ですね。
「明後日最終日は試合形式のスパーを予定している。
芳樹は午後は体を休める事。わかったな。みきとしゅんは芳樹をムリに連れまわさないように。」
「はーい。」
二人は声を合わせて返事をした。
「それからそこでへこたれているように見せて考え込んでいるキックボクサーは11月に試合が決まりそうだ。芳樹は10月二人続いて大いに盛り上げてくれよ。」
そっか。
ラッキー先輩は試合が決まったのか。だから会長は帰るし先輩は黙っていたのか。
「みんな・・・。」
ずっと喋っていなかったラッキー先輩が口を開いた。
「俺、この合宿が終って試合勝ったら・・・。結婚するんだ。」
先輩、それ死亡フラグっす。




