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K-1甲子園  作者: 冬夏
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2章ー1話「ロードワーク」

朝5時半。携帯のアラームが鳴る。

僕は携帯のアラームを止め少し伸びをして布団から出た。


枕元にあったジャージに着替え洗面所で髪を少し手入れして玄関でシューズを履いた。

玄関先で体をほぐす様にストレッチをして僕は走り始めた。


5月。

まだ朝は少し肌寒い季節だった。

道路を突きって僕は川沿いの道に入った。リズムカルに淡々と。

道で犬を散歩しているおじさんがいた。


ここでは毎朝会う。軽くお辞儀をした。おじさんもニコっと笑って挨拶してくれた。

犬も僕に吠えていた。


体が段々暖まってきた。

少しずつスピードを速めた。

どんどん速めてやがて上り坂に直面した。良し。

僕は一気にスピードを上げ坂道ダッシュをした。距離およそ30メートル。


一気に吸い込んだ息をまた一気に吐き出すように坂を走った。

足音が乾いた空気で響き渡った。坂を上り終えた。

息をハァハァさせながら今度は少しずつペースを落としまた来た道を走った。


帰り道は景色を眺める余裕があった。走り出しはまだ薄暗かったけどだんだん日が昇ってきた。

今日も一日が始まるなー。

そんなことを考えながら家に向かった。さらに、今日もこれで強くなったかな?とも思ったりした。


強くなりたい。それが僕を朝から走り出させる火種だった。

6年生のあの日以来毎日欠かさず(雨天中止)行ってきた。                   


家に近づいた。玄関先に人が立っていた。乙女姉さんか。

「おはよう。今日もよくやるわね。」

と言って巾着袋を手渡してくれた。

中身はお弁当箱だ。

今日もありがとう。


「ふふ。それよりもこんなに朝早く起きて授業中寝たりなんかしてないわよね?」

ギクリ。僕は目線を逸らした。乙女姉さんはハーっと溜め息を漏らして、

「高校は義務教育じゃないから留年をお忘れなく。」

といって人指し指で僕の鼻の頭をツンと突いて自分の家に戻っていった。


乙女姉さんは僕の幼馴染になる。家も隣で幼稚園から中学校までずっと一緒だっ

乙女姉さんはしっかりものだった。


年は1つしか違わないのに小さい頃の僕の面倒を観てくれて本当のお姉さんみたいだった。昔は乙女ちゃんとか乙女とか呼び捨てにしていたけどいまは乙女姉さんが定着した。

成績優秀。スポーツ万能。才色兼備。

肌が白く長い綺麗な黒髪を束ねたポニーテールが良く似合った女の人だった。


毎朝自分の分のお弁当を作っていた。

高校に進学した僕が毎日菓子パンを食べていると言ったら次の日から僕の分のお弁当も作ってくれるようになった。


僕のお母さんは最初は断ったけど菓子パンしか食べていないのをしって結局お願いすることになった。

母も仕事をしているのでどうしても作れなかったのと乙女姉さんが一度言いだすともう止まらない事を知っていたからである。


僕も乙女姉さんの弁当は嬉しかった。

ただ一緒に付いているスプーンとフォークがウルトラマンだったりウィーンナーが蛸の形になっていたりしていた。いつまでたっても子供扱い。


たった1つしか違わないのに。

さらにこのお弁当には手紙が毎日入っていた。


内容は何故かクイズ。この問題はお弁当箱を返すとき答えを言う訳だが外れても特に無い。

ただ答えが当たると次の日のお弁当の中身の一品をリクエストできる。

乙女姉さんが何を考えているのか良く分からないが今日までそのシステムに乗っかってあり難くお弁当を頂戴しているわけである。

僕は軽くシャドーをやって体をほぐしてから家に入ってシューズを脱いでそのまま風呂場に向かった。


先ほどのロードワークでほんのり汗をかいていた。

シャワーでざっと流して5分もしないうちに出た。


下着が用意されていて(お母さんありがとう)それに着替えてそのまま自分の部屋に戻って制服を着た。鞄を手に取り居間に行き朝食を済ました。向かい側にお父さんが居た。

「今日も乙女ちゃんがお弁当作ってくれたの?」

と聞いてきたので黙って頷いた。

お父さんはその後なにかぶつぶつ言っていたけどスルーして歯を磨いて


玄関で靴を履いた。

「今日もジム寄って帰るのかな?」

お母さんが言う。そうだね夕方の7時までには帰るよ。


「そう。怪我しないように気をつけてね。いってらっしゃい。」

 

お母さんの声を背に僕は学校に向かった




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