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K-1甲子園  作者: 冬夏
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4章ー3話「決意と三日月蹴り」

ジムに行くと会長と英治さん、それにラッキー先輩が神妙な顔つきでいた。

いやそんな顔しても無駄ですよ。


知ってましたよね。長門・・・選手のこと。

「あぁ。そうだ。」

 

どうして最初から教えてくれなかったんですか?

会長は初めから知っててわけですよね。あんな強敵・・・。


そう。

あんな強敵万年一回敗退の僕にはムリな相手だ。

最初からあたるとは限らない。でも彼がいるというだけで・・・。


「彼の話をしたらどうだったんだ。お前はどうしたんだ。」

会長はきつい目でこちらを睨んだ。それは・・・やっぱりもっと実力をつけてからとか・・・。


「だったらお前は格闘技をやめろ。ましてやK―1なんて。最初から負けを認めてる奴に戦う資格は無い。なぜそこで戦おうとしない?ちやほやされる為にK―1に出るのか?違うだろう?誰に憧れたんだ?」

 

会長は一枚の紙を取り出した。


「これはお前の出る関東大会の予選表だ。確かに長門は強敵だ。優勝候補筆頭と言っても過言じゃないだろう。だがな、他の選手を見てみろ。ジュニアの空手世界王者にボクシングインターハイ優勝者、そんなのばっかりだ。そしてこれから先もお前はそういう相手をしていく。それが格闘技だ!」

 

ぼくは薄らと涙を浮かべていた。

あまり感情を表に出さない性分なので人前で泣いたのなんて何年ぶりになるのだろう。」

 

「魔裟斗はな。そんな過酷なトーナメントを外国人のチャンピオンを相手に渡り歩いてきたんだ。お前はそんな姿に憧れたんじゃないのか?」

 

会長のゲキは尚も続いた。

ちょっと浮かれていたのもあった。K―1という大会名に。


そうだ僕が出る大会はK―1なんだ。みんな頂点を狙ってくるような人間ばかりなんだ。

それがK―1なんだ。


その後数分間沈黙が続いた。

後ろにいるみきとしゅんもきまずそうに並んで立っていた。


その沈黙を破ったのはラッキー先輩だった。


「で甲子園はどうするの?」

 出ます!やらせてください!


少し痰交じりのかすれた声を力いっぱい出し切った。

 

「だってさ会長。もう十分彼もわかってるし出るって言ってるし。今日はこの辺にしましょうよ。ね。それに芳樹、お前だって他の選手に負けない武器を持ってるよね。なぁ英治さん。」


「あぁ。」

 

武器・・・?


「ともかく顔洗って着替えておいで。そんな顔、乙女ちゃんがみたらビックリするよ。ほら荷物もってやるから更衣室行こう。」

 ラッキー先輩に先導され更衣室に向かった。途中で会長に頭を下げた。会長は笑っていた。


「三日月蹴りという。」


英治さんはラッキー先輩と向かい合って僕に説明してくれた。三日月蹴り?

 

前蹴りと回し蹴りの中間の角度から放つ蹴り。そう英治さんは説明してくれた。


「ボディー・ブローの足技版だと解釈してくれても構わない。斜めからから入って肝臓を・・・。」

 英治さんはラッキー先輩を相手に実際に見せてくれた。この技は。

 

「そう芳樹が回し蹴りの練習のとき間違って蹴りこんできた技だよ。」

 ああ、あの時の。そういえばあれ以降妙な角度で蹴りの練習をしていたな。でもただ不器用で外しただけの蹴りに技名があるとは。

 

「本来の意図とした習得の仕方ではないな。でもこれは必ず武器になる。形だけなら誰でも真似できるが、威力を持ち合わせて肝臓に狙い撃ちするのは難しい。でも芳樹はそれができている。普段下半身を徹底的に鍛えた良かったよ。」

 

何回か三日月蹴りを見せてくれた。

実際のスパーの中でもどうやって使ったり組み込んでいけばいいかも一生懸命説明してくれた。


「いずれはこれを使いこなせるように。まだ次の試合には間に合うのでではないがいずれみっちり教えてやる。だから練習をしっかりしておけよ。」

「みんな芳樹が負けるなんて思っていない。勝つって信じてるし、そのためにみんなで相談してる。だから頑張ってまず関東大会一回戦突破しよう。」

 

その声を信じてリングに上がった。


魔裟斗のようにかっこよく魔裟斗のように強くなりたい。




ただひたすら練習に明け暮れた。


試合まで後もう少し。



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