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第八話 街と資料

パパ、ママ、お元気ですか? マフィです。

いよいよポンメルまで後数日という所まで来ました。大都市の恩得があるのか、近隣の村もそれなりに設備が充実しています。


しかしここでハプニングが! 何でもポンメルでは入街審査があり、持ち込むものまでくまなくチェックさせられるそうです。

おかげでエドさんは泣く泣くコレクションの一部というか半数を破棄せざるをえなくなり、随分と落ち込んでしまってます。


流石に大都市近辺だと悪さするような盗賊団の類は少なく、盗賊殺しと呼ばれた水間さん一行の出番もあんまりなくなりました。

何事も平和がいいのでそれはそれでいいかもしれませんが。


とにかく、次回の手紙はポンメルの入街での出来事になりそうです。

人口10万人以上のとても大きな街らしく、ちょっとドキドキしています。手紙の内容も期待していてください。 マフィより



「明日にはポンメルに着きそうだな」

「だ~ね~。おかげで俺はテンションだだ下がりだけどね~」

「あないなもん持ち込めるはずないやろ。いい加減に諦めろや!」

「入街証書も購入しましたし、明日は無事検問を通れそうですね」

直前の宿場にて一行は明日の事に関してあれこれと話し合っていた。

とりあえず当面の目標は異世界人に関する情報収集が中心になるということだけは確かだ。

それ以外は場当たり式になる。場合によっては長期の滞在も考え中長期向けの部屋を借りる事になるかもしれない。


「だが、1つ問題があってな・・・」

水間がううんと唸る。

「俺達は御札のおかげで会話こそ成立するが文字の読み書きは出来ない、調べものにはマフィが必須となる。観光したい気分は分かるが、今は抑えてくれ」

「あーそれは大丈夫ですよ。より高度な札になると文字を読むことだけは出来ますから。ポンメルに入ったら札屋に行けば一発で解決です」

「そうなのか!? それは好都合だ。観光してていいぞ、マフィ」

「いいですよー。私だけ一人で観光してもつまりませんし、やっぱりこういうのはみんなと、ね」

流石殺人鬼一行と旅をしてきた女性だ。肝が据わっているというか、何というか・・・。

「それじゃ、今日は早めに眠るか」

「はーい、お休みなさ~いね~」

「ほなな」

「はーいそれではランプ消しますね」

目的地に無事到着できそうで心躍る一行。しかしそこで何が起こるかまでは分からない。だからこそ旅は面白いのかもしれないが。

不安と期待を胸に一行は早めに就寝した。



「よし、持ち物検査完了」

「身体検査でもとくに問題はありません。武器は没収しませんが、くれぐれも悪用しないようにお願いします」

「入街証書にもハンコ押しときました」


「よし、これにてすべての手続きは完了した。旅の者、ようこそポンメルへ!」


「うわぁ。広いですね」

「見ろよ、街道が石畳で出来てやがる。こりゃ大都市の名に恥じない街だぜ」

「それじゃ、早速札屋ですね。場所は聞いてきましたから急いで行きましょう」

千人にも満たない村で育ったマフィにとって行くところ見るもの全てが刺激的だ。明らかにテンションが高いのが分かる。

「まあ浮かれてばかりもいられませんね。その後は大図書館に行きましょうか。こちらの道をまっすぐらしいですよ」



札屋でお目当ての品を調達した一行は、大図書館へと足を伸ばす。その名が示すとおりここ目当てに訪れる者も多い名所らしい。

「異世界人って簡単に言いますけどね・・・」

その途中、マフィが自分が何故異世界語を専攻していたのかを語る。

「いまから数十年前、ある一人の異世界人と呼称された人物がこの世界の方に現れました。それが酷い性格でやりたい放題で、最期は近隣の住民の手で抹殺されたそうです。

 その後、いかがわしい類の術式によってその異世界人が調べ上げられたそうです。そして異世界人はやがて世界の各所で度々目撃されるようになりました。

 このままでは後手に回ると判断した世界政府は異世界人を更に調べ上げる事を目的とし、言語や性格の問題、その他もろもろを調べるために特殊な御札を開発したのがきっかけです。

 そしてどんな小さな村でも異世界人と対話可能な人間を置く事を義務付けられました。私もその一人だったわけです」

「成る程ねぇ。そりゃ殺人鬼に死体フェチなんかがぞろぞろ現れたら治安もクソもないわな」

「しかも聞いた話じゃまともな人間が現れるケースなんて稀だっていうしね~」

「自分が言うのも何やけど、殺人鬼は基本自分勝手の極地にいる奴ばかりやから、まともな部分もあるっちゃあるやろ」

「耳が痛いな」


「初めての方はこちらで会員証を作ってくださいね。本の貸し出しを望む場合はこちらのスペースまでどうぞ」

「わかりました。じゃあ4人分ちゃっちゃと作るか」

「・・・何か知らんけど妙な視線を感じるな」

「そりゃ俺たちが異世界人だって見られてるだけじゃないの~」

「俺ゃサインはしねーぞ」


「あ、ここですね。異世界人に纏わる話の本のコーナー」

資料本に架空戦記ものが図書館の端の端に置かれていた。

「とりあえず一通り目を通すか」



「・・・なんだこりゃ」

水間はこの世界に現れた異世界人全集なる本を見たが、どれもこれもA級殺人鬼ばかりだった。

「ジョン・ジンジャー・ボーデン、リチャード・チェイス、川俣軍司、エリザベート・バートリ、永山則夫、都井睦雄・・・、

 錚々たる顔ぶればかりじゃないか。こんな連中が異世界入りしたらそりゃ治安も崩壊するわ」

しかも本には異世界にいた頃の境遇や殺人癖や罪状まで網羅されている。つまりこれは異世界とは水間たちがいた世界であり、それ以外の世界から召喚されたケースはないということだ。

何故あっちの世界の人間ばかり標的にされているのか真相は定かではないが、とりあえず拾ってくる先は基本あっち側の人間ばかりということは断言できるだろう。

(自分がこの世界で殺しを行わせることを楽しみに召喚したんじゃねーのこれ?)

だとしたら随分とひねくれた神様だな、水間はそう思った。

(ま、人間一皮剥けば大差なんてないしな・・・)

「お、何か面白そうな記述があるで、ホラ、ここ」

4人が注目したのはとある書物の1ページだった。

「・・・・・・バーン・B・バナリス。通称スリーB。稀代の天才魔術師と言われその名を世界に轟かせた偉人。

 しかしその唯我独尊の性格故か、禁断の黒魔術の研究を多数行ったとされ、最期は魔力を全て魔方陣に吸われ絶命したとされている。

 だがその後も生存説は絶えず、今も不老不死となって生きていると噂される。享年46歳。これが50年前か・・・丁度異世界人が目撃されるようになった時期と重なるな」

「せやろ? もしかして元凶こいつなんちゃう?」

「だが死亡説もある。断定は出来ないな。スリーB・・・か」

バーン・B・バナリス。果たして異世界人異変の元凶は彼なのか。それとも単なる偶然か、緊張した面持ちで書物を見据える4人であった。

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