表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/28

第五話 願いと旅立ち

祭のような夜が明け、水間は重たい体を起こし、屈伸する。

村長は風呂も沸かしてくれたし、ベッドも用意してくれた。有難いことこの上ない。

そして今は井戸水で顔を洗っている最中だ。

「ふう・・・・・・」

「・・・へーっくち!」

隣にいたエドが盛大にくしゃみをした。

「何故かなぁ? 自慢の人皮のチョッキをしっかり着込んでいたのに、風邪気味なんだよなぁ」

「言うだけ無駄だと思うが、おまえはもう少し正気を身につけろ」

なんだかんだで仲が良くなってしまった二人であった・・・。


「そうですか、この村を出ると」

「ええ。何故異世界からこちらの世界に飛ばされてきたのか、何故このような因果を背負う事になったのか・・・俺はどうしても知りたいんです」

朝食中、村長と水間はこれからどうするかを話し合っていた。もはやこの村を脅かす存在はいない、ならば旅に出て己の存在を確認したかった。

「正直なところ、この村では見当がつきません。もっと大きな都市に行かなければいけないと思います。異世界を研究している施設があれば、そこにご厄介になろうかと考えています」

「あ~、せっかくだから俺も付いて行くね~。若返ったのはいいけど、俺正直、貧弱だし、それに村人とは馴染めそうもないし」

「ふむ・・・、それでしたら、ここから北方にポンメルという都市があります。学業が盛んですし、異世界の研究もされているかと」

「ポンメル・・・ですか」

(俺をこの地へ呼び寄せた奴が、果たしてそこにいるだろうか・・・いや、今は考えるだけ無駄か)

「少しばかり路銀も渡しておきましょう。出立は、明日に?」

「何から何まで感謝します。・・・ええ、早いほうがいいかと思いますので。今日は下準備ですね」


(これで当面の予定は付いた。後は、もう一人・・・)



「え、ええっ!? 私を旅に同行ですかぁ!?」

「ああ。この世界を知っている人が必要なんだ。マフィなら適任だし、面識もある。頼む。同行して欲しい」

学校が放課後を迎える時を見計らって、水間はマフィの元に赴いた。男 の 土 下 座 込みで懇願してである。

「そ、そりゃあ水間さんは村の英雄だし、断りにくいことは確かですけど・・・」

「そういう恩着せがましいことは言わない。ましてや面子は大量殺人鬼と死体フェチだ。難しいことを承知でお願いしたい」

「うぅ~・・・困ったなぁ。私押しには弱いほうなんですよねぇ。気持ちが痛いほど伝わってくると・・・・・・うーん」


2人の間に、しばしの沈黙が流れた。この間、水間は地面に突っ伏したままである。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりました。水間さん、頭上げてください」

「っ・・・。あ、ああ」

「こんな一村娘をそこまで頼ってくれるんでしたら、断りきれません。私この村を出たことないから旅にも興味ありますし」

「そうか・・・」

「それじゃあ休校届け出さなきゃいけませんね。それから両親も説得しないとですし、あともう1ついいですか?」

「俺でよければ何なりと」

「絶対・・・守ってくださいね。私この年でまだ死にたくないので」

「約束しよう」

「はい! ではよろしくお願いしますね!」

と白い歯を見せてニカッと笑う。その姿は夕焼けに照らされ、どこか美しかった。

「じゃあ早速行きましょう。ついて来て下さい」

「ああ・・・」

「あ、それとお父さん結構厳しい性格だから殴られるかもしれませんよ」

「結構。そういうのは慣れてる」

「・・・穏便にお願いしますね」


夜は静かに更けていった・・・。



旅立ちの朝、村の者たちは集まり、盛大に出発を送り出しに来てくれた。

なにせ山盛りオークの肉を売りさばけば半年は遊んで暮らせる金が手に入る。村長の路銀も多めに貰い、準備は万全。隣の村まで馬車を用意してくれる程の念の入り用だ。

「若いの、気をつけて行って来いよ」

「いつでも帰ってきたっていいからな」

「あ、死体好きは来なくていいぞ。ホラーだしな」


「それじゃみんな、行って来るね」

「マフィちゃん、お手紙書いてね。私待ってるから」

「マフィ、俺達にも手紙よこすんだぞ」

「うん、パパ、ママ、息災でね」


「そろそろ出るぞ~。みんな乗ってくれ」

「分かった。今行く」

水間は村の者から服を貰い受けた。返り血まみれの衣服から、この世界にあった衣装に。背中にはマント、武装は大鉈。エドには短刀。


「行って来るぞ~」

「行って来る・・・」

「行って来ま~す」

馬車は軽快に北へ向かう。目的地はポルメル。果たしてそこに辿り着くまでにどんなことが待っているのか。水間たちはまだ知らない。

ただはっきりしていることは、それが苦難まみれの茨の道だということのみである。

「年甲斐もなくワクワクするぜ・・・。口がアドレナリンで満たされそうだ」

「どんなコレクションが手に入るか楽しみだな~」

「あは、ははは・・・」

ただこの3人なら大丈夫だろう。なにせ常軌を逸した伝説級のキチガイなのだから・・・。

「わたしは違いますー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ