第二十四話 決戦・その1
水間とテッドの目の前に、大扉が現れた。
「・・・どうやら、みんなやってくれたようだな」
「流石、というべきなのかな」
「・・・じゃあ、先に行くぜ。真打登場ってな」
「お、おいおい、みんなを待とうよ」
バァン!
水間が大扉を開く。そこは国王がふんぞり返って座っていそうな大広間だった。趣味人にも程がある。
「やあ、よく来たね。待ちくたびれるところだったよ」
その中に一人座っていた黒衣のイケメン・・・この男こそ・・・、
「・・・・・・!」
水間が瞬時に駆ける。そして男の首を大鉈で跳ね飛ばした。
終わった・・・のか? 否。そうではない。残念ながらこれで終わりではなかった。
「まったく、君は随分とせっかちなんだね。ここから私の口上が始まるというのに」
「ちっ・・・!」
胴体は何事もなかったかのように立ち上がり、頭部を首に乗せると、瞬く間にくっ付いた。
「改めましてこんにちは。私がバーン・B・バナリスだよ」
「俺達を召喚して遊んでいたのはお前か」
「そうさ。私好みの壮大な実験だよ。私はね、別の世界とこちらを繋ぐ『ゲート』の秘術を編み出した。ただし私自身はそちらにいけないからね。
そこで君達のような面白そうな人材を召喚する事を思いついた。いわゆる『シリアルキラー』と呼ばれる異世界人をね」
「異世界人・・・か」
「そうだよ。無粋な固有名詞なんていらない。ただの「異世界人」さ。
最終的にはそういった人材同士を盛大に戦わせようと目論んでいたのだが、思ったより君達の動きが早くてね。予定が狂ってしまった」
バナリスはニヤニヤと下卑た笑みを浮かばせながら淡々と話していた。水間は終始不機嫌そうにそれを聞いていた。
「異世界人は私の調整により優れた力を持ってこの世界に現れる。だがその中において君は特に優秀だった。私が驚く程にね」
「そりゃ自分で自分の首を絞めるものだな」
「そうかい? じゃあ・・・試してみるかい?」
「元よりこっちはそのつもりだ」
「いいだろう。戦おう。戦おうじゃないか。泣いたり笑ったり、歓喜したり絶望したりしようじゃないか!」
「テッド、おまえは下がってろ」
「元より戦う気はないよ。でも、くれぐれも死なないようにね」
「ああ・・・」
「さあ始めよう。世界最強の私と精々じゃれ合おうじゃないか」
「その余裕、そっくりそのまま返してやろう・・・」
「いくぞ! 爆裂砲弾!」
バナリスが特大級の火球を水間目掛けて解き放つ。それをジャンプで余裕で交わす水間。
「ほう・・・やるじゃないか」
「ちゃんと狙え。クソ野郎」
着地と同時に間合いを詰め、鉈で一つ、二つと斬撃を喰らわせる。
「無駄だよ。不死である私の生命力は実質無尽蔵。交わす必要すらないさ」
「なら生命力が尽きるまで千日手をやるまでだ。執念深さこそシリアルキラーの真髄よ」
「千本短剣!」
水間に文字通り千本のナイフが襲い掛かる。
「だから何だ!」
それを水間は鉈の風圧だけで弾き飛ばす。
「いいねえいいねえ。君はやはり私の最高傑作だよ」
「ならさっさとに親離れしないとな」
最強級の黒魔術で水間を圧倒するバナリス。しかし水間は手にした大鉈一本で渡り合う。
これがどれほど凄い事か、見物人と化したテッドは充分に理解していた。
(まさに化け物と化け物の対決だね・・・でも水間君の方がやはり不利かな?)
「獄炎走破!」
「氷柱槍!」
「霊獄闘気光線!」
まさに黒魔術のカーニバル。間合いを詰める機会が中々得られない。
「いちいち叫ばないと詠唱を完了できないなんて、黒魔術ってのは酔狂でこっ恥ずかしい技だぜ。ったく・・・」
それでも水間は冷静に悪態をついていた。
魔術の弾幕をすんでのところで交わしながらひたすら好機を探る、我慢比べを続けていた。自ら千日手で挑むと豪語しただけはある。
(あせるなよ・・・慌てるなよ・・・俺、最後のボスがそう簡単に殺れる筈ないだろ)
「肥大化拳!」
水間に避けられないほど特大の拳が迫る!
(よし、ここだ!)
水間は拳を鉈で切り裂くと、猛然とバナリス目掛けて突っ込む。
「喰らいやがれっ!」
「流石は水間君、でもそれじゃ届かない。鏡の反響!」
水間の一撃の衝撃がそっくりそのまま水間に返って来る。
「うおおおおおっ!?」
その衝撃はすさまじく、壁に一直線に吹っ飛ばされ、激突した。
「水間君!」テッドが叫ぶ。
「ぐっ・・・げほっ・・・げほっ・・・や、やるじゃねえか、おまえ最初から誘ってやがったな」
「その通り。攻守完璧が私の信条でね」
「水間君・・・」
「気にするな。テッド・・・向こうが一枚上手だっただけだ」
激痛に耐えながらも、水間は着地する。その眼には「諦め」の想いはまったく宿っていなかった。
「勝負はこれからだ・・・」
水間は傷口をペロッとなめながらふてぶてしく笑ったのだった。




