第二十一話 エドとマイヤーズ
「や~れやれ、やっぱり自分は戦闘は向かないね~・・・」
左肩を右手で抑えながらエドは壁を背に愚痴っていた。
ブギーマンことマイヤーズの戦法はいたってシンプル。背後から音もなく近づいて肉切り包丁で刺す。これが全てだ。
だが近づく際に気配がまるでない。やり返そうとすると既に闇に消える。完璧なヒット&アウェイだ。
それならばと壁を背にしてみたが今度は上から降ってきた。今のところ対処の仕様がない。
「やっぱり自分の本職は死体加工だからね~、こういうサシの勝負は苦手だよ」
しかし困った。このままでは一方的に嬲り殺されてしまう。さあどうすると頭を使うがいいアイディアは思い浮かばない。
なにせこちらの得物もナイフと拳銃だけなのだ。相手にプレッシャーをかけるにはいささか物足りない。
・・・ヒュッ!
「おおっと!」
またも死角からマイヤーズの包丁が迫る。済んでの所で回避はしたが、既に敵さんは闇の中だ。
「まいったね~こりゃ。でも嬲り殺されるのは性にあわないんだよね~」
日本には肉を切らせて骨を断つということわざがあるらしいが、アメリカ人のエドは知らない。
これ以上痛いのも嫌だが、死ぬのはもっと嫌だ。
ドンッ!
「ん?」
エドが足元に何かをぶつけた。よく見るとそれはゴミがぎっしりと詰まったポリバケツだった。
「ん~・・・」
これ、使えるんじゃないか? ふとエドはそう思った。
そう思うなり、エドはそこらじゅうのポリバケツを蹴り飛ばし始めた。瞬く間に辺り一面ゴミまみれになる。
その中心でエドはナイフを構えた。
(集中するよ~集中しちゃうよ~)
自分の心音が聞こえる。辺りの住宅街には喧騒一つない。静かだ・・・こんなにもここは静かだったのか・・・エドは改めて思った。
ガサッ・・・。
「・・・!」
左方向に置かれたゴミが音を立てる。奴だ。マイヤーズが近くにいる・・・!
殺気が迫る。
「ここっ・・・!」
エドがナイフを振りかざす。
ズンッ・・・!
マイヤーズの首元にナイフが深々と突き刺さった。それもエドの上空から強襲してきたところにカウンターで入ったのだ。
「ナ、ナゼダ・・・!」
「布ズレの音さ。
君が動く時必ず布ズレの音がする。それも今は左からではなく上から聞こえた。多分左はフェイントだった。図星じゃないかな?」
「ソウ・・・ダ・・・グボォ!」
「普通ならこれでボクの勝ちなんだけどね~、君は撃たれても刺されても死なない殺人鬼だから後処理に困るね」
マイヤーズが不死身と言われる所以は彼がハロウィンの悪の精霊と一体化していると言われているからだ。
現に映画『ハロウィン』のラストで射殺された筈のマイヤーズは続編で何事もなかったかのように登場している。
「だから、ここからはボク流でやらせてもらうよ~」
そう言うなり、エドは拳銃でマイヤーズの脳天を撃ち抜いた。そして手にしたナイフでマイヤーズを解体していった。
マイヤーズの体は頭蓋骨はスープ・カップに。脳みそは大口の瓶に入れられ、性器は切り取られ壁に釘で打ち込まれた。
人皮はマスクとして被り髪の毛はカツラにして、全裸になると人皮で作ったたいこを鳴らして踊った。
耳や鼻も釘で壁に括りつけた。目玉はビール瓶に入れた。臓器はあらかた取り出してポリバケツの中に入れた。
エドワード・セオドア・ゲイン。彼はマイヤーズより精神が異常で邪悪な殺人鬼だった。
現れた扉を無視して、彼は性的に満足する事を優先するのだった。
「ふんふ~ん、ボクは邪悪なブギーマン~。ラララ~」




