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第十六話 帝国と一騎当千

ポンメルの送りは盛大なものだった。皆は不安と期待を込めて送り出されたのであった。

馬車は軽快に山道を行く。何と馬4台の大型馬車である。周りからすればさぞ目立っている事だろう。

一応騎手はコリスが担当しているが、ちょくちょく代わりながら進んでいる。


「そういえば私はポンメルを出た事がない身なのだが、旅とはどういうものなのだ?」

「えーとですね、まず山賊狩りで生計を立てます」

「あ、それからエドのコレクションが増えるで」

「・・・聞いた私がバカだったよ」

ダウナーな顔でテッドがしょげる。一応建前上は親善大使という名目だが実質メンバーのお目付け役だ。

それに彼は非戦闘員である。戦いが始まったら基本逃げるしかない。銃で対抗する事は出来るがそれだけである。


「さてさて、無事にフェルテまで着くかね?」

「こちらの動きは基本丸分かりの状況だからな。仕掛けてくるかもしれないぞ・・・」

そう言った矢先、水間の勘が何かを察した。

「・・・コリス、速度を落とせ。その間に全員、武器の用意を」

「えっ・・・、は、はい」

「何や、来るんかい」

「面白くなりそうだね~」

山道を行く馬車の速度が落ち、更に向こうから大軍が目視される。

「そこの馬車、止まれぇ!」

「・・・・・・!」

隊長格と思わしき男が声を張り上げる。背後の軍勢はざっと1000名は控えていそうだ。

「貴様ら、ポンメルの者だな!?」

「そうですが、何か?」

「お前達にはフェルテ帝国に対して反逆罪の命令が出ている。このまま拘束されるなら良し、そうでなければ殺しても構わないとのことだ」

警告とは思えない滅茶苦茶な横暴である。そこに水間達が馬車から降りてきた。

「お前たちが異世界人か? 早々に武器を捨て投降を・・・」

「ククク・・・ハーッハッハッハッハ!!」

水間が歓喜の高笑いで敵陣営を威嚇した。

「な、何が可笑しい!?」

「お前達には感謝するわ。ありがとな。黒幕探しにフェルテに向かったら敵の軍勢と鉢合わせ。これもう本命がフェルテにいるって言ってるようなものじゃないか。

 そっちからいらぬ情報を持ってくるとは焼きが回ったな。笑いも止まらないってものだ」

「なっ・・・! 貴様ら、正気か? 逆らう気か? この軍勢相手に勝てるつもりだと本気で思って・・・」

「「「「「「る」」」」」」


「やるぞおまえら! コリスは別働隊に取り囲まれないように一旦下がって様子見、マフィ、テッド、そっちは応戦よろしく!」

「了解です! ご武運をお祈りしています」

「くそっ・・・、おまえら、殺ぇ!! 身の程知らず共を皆殺しにしろ!」

「やれるもんならやってみろや」

「フフフ・・・おじさんピエロだから殺すのは簡単なんだよね」

「何人殺せるかワクワクもんだねぇ~」


かくして、6対1000のハンディキャップマッチが始まった。勿論ハンディを背負うのは水間側である。いや、ひょっとしたらフェルテ側かもしれない。

フェルテ軍は知らないのだ。ここに集った異世界人が全員一騎当千級であることを。特に水間に関しては一人で500は余裕でいける。

「まずはこいつをおみまいや!」

宅間が散弾銃をぶっ放し、前衛に打撃を与える。更にエドとゲイシーのライフルが敵の脳天を貫く。

やはり銃の威力は凄まじい。敵の動揺を誘い、動きを止める。瞬く間に戦局が変わるのが銃の恐ろしさの一つだ。

「うおおおおおおおおおっ!」

四方八方を敵に囲まれた状況で水間が吼える。次から次へと敵の首が宙を舞い、あれほどぶ厚い前衛が次々に切り崩されていく。

「おまえら死にさらせぇ!」

宅間が水間に負けじと敵を刺し殺す。

「は~い、さよならだねぇ~」

エドがナイフで敵の急所を的確に切り裂く。

「ピエロが戦場で踊るか、面白いなぁ本当に」

ゲイシーが投げナイフを投擲し敵をどんどん潰していく。

戦場において4人はまさに水を得た魚、殺して殺して殺し続けられる楽園のようなものだ。

彼らが吼えるたび肉は飴のように切り裂かれ、血は雨のように降り注ぎ、金属の鎧はただの破片と化す。


一方、馬車の方はフェルテ軍の別働隊が迫っていた。

非戦闘員が混じった馬車は人質にするには格好の相手・・・と思いきや、

「くそっ、なんだこの女、全然強いぞ!」

「はっはー、だらしないですねぇ天下のフェルテが、このコリス・ランスに傷一つ付けられないんですか?」

コリスが槍片手に無双していた。コリス・ランス、実は学術都市ポンメルに生まれたのが勿体無いと囁かれるほどの稀代の女性騎士である。

自分の身の丈の倍ある槍を振り回しても息一つ上がらず戦闘を続けることが出来る。既に馬車の周りは血の海と死体の山だ。

そしてその死角を補うような形で馬車の脇からマフィとテッドの援護射撃が入る。

「いやー、先日試し撃ちしましたけど、凄いですねこれ。こんなのあったら戦闘が随分楽になりますねえ」

「・・・マフィちゃん、人撃ってるのに物怖じしないね」

「地元でオーク討伐のとき水間さんに散々鍛えられましたから。肝だけは据わってるんですよ」白い歯を覗かせニカッと笑う。

「やっぱり君達精神状態おかしいよ・・・」

テッドがポツリと呟いた。



「先鋒全滅、中入り7割方壊滅、後詰めは浮き足立ってお話になりません!」

「ば、馬鹿な・・・別働隊は、別働隊はどうした!?」

「そちらも壊滅した模様・・・!」

「ありえん・・・こんな戦があるか! 桁が3つ違う戦だぞ! 何故押される!? 何故負ける!?」

そうこうしてる間に本陣に水間達が迫っていた。

「大将首だけは残せよ。聞きたいことが山ほどあるからな!」

「切れ味の悪いナマクラなら用意してあるで」

「上等・・・!」


バァン!


遂に水間達は本陣に辿り着いた。

「ひ、ひっ・・・!」

「全軍に降伏を敢行しろ。さもなくば皆殺しにする。そうでなければ後から追って殺す。OK?]

「き、騎士の情けだ。せめて切腹を・・・」

ゴガァ! 

水間の前蹴りが綺麗に顔面に入った。

「今、騎士がなんとか言ってたが気のせいだよな・・・?」

「ああ、気のせいや。賊が騎士と語れる筈がないわ。こいつら全員体の中で血肉が動いてるってだけでムカつくっちゅうのに・・・」

戦は決着が付いた。後はお約束の拷問と口を割らせる時間である。

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