第十五話 決意と新たな旅路
キャロランまで進軍したポンメル軍は無血開城となってむしろ歓迎された。主犯は議員の一人であるジーニーという男だが問題はそこからだ。
尋問の内容は以前起きた戦とほぼ変わらない内容だったが、問題はここから更に深刻化する。
ホイットマンとヒューバディは定例会議場で銃を乱射。クーデター同然に他議員や一般市民を撃ち殺し、軍事権を強奪。独断でポンメルへ侵攻を決める。
その間に兵達を全員撃ち殺す有様で被害は甚大。犠牲者数知れずという惨状だった。
あまりの無惨な状況にポンメル側は情状酌量を決定。むしろ本件は水に流し、復興を手伝う事を約束した。
キチガイに銃を持たせるとどうなるか、模範になる事件であった。
さて、幸か不幸か、ホイットマンとヒューバディは死んだが、彼らが持っていた銃はポンメル側が回収した。
テーブルに置かれた数々の銃を見て、テッドと他のメンバーは会議を行うことにした。
水間だけが包帯を巻いた痛々しい姿であったのが印象的だった。
「私はかねてからこいつの開発を提言していたのだが、いざとなるとこう・・・まいったね」
「これが量産されれば一般市民でも簡単に兵になれる。だが確実に一部は闇に紛れる。治安の悪化は免れないだろうな」
「こっちの世界で扱うには、過ぎた武器なんちゃう?」
「各自が保管して切り札として使うのが理想ではないかと」
「弾丸の製造はこちらの技術で作れそうか?」
「ああ、その辺は問題ないね。なんてったって現物があるんだから」
「じゃあ使い道はそれで決まりだな・・・だが、もうひとつ決めておかなければいけないことがある」
「何かな?」
「今後の俺達の行動についてだ・・・!」
場の空気がピィンと張り付いた。それは全てを滅する殺気に近いものだった。
「未だ真の黒幕は分かっていない。基本的に後手一方だ。だがこれだけは言える。
・・・お前達は、自分が神気取りで、戯れに異世界人を召喚して、殺し合わせたり治安を悪化させたりする様を肴に酒をかっ喰らってるような奴を、許せるか?」
「んー、そいつはメチャ許せんわなぁ。しばき殺したくわ」
「八つ裂きにしてコレクションに加えたいね」
「ピエロが人を笑うときは相手を殺すときだけだね」
宅間、エド、ゲイシーの3人が水間の問いに賛同する。
「・・・というわけだ。テッド、バーン・B・バナリスが生前最も活動を積極的に行っていた所は、何処だ?」
「え、えーと・・・・・・フェルテ帝国。この世界で最も大きな軍事大国で彼の秘術を利用しようとしてたけど結局持て余していたみたいだね」
「俺達は下準備を済ませたらそこに向かう。ポンメルを離れる。時間は掛かるかもしれんがな」
「・・・やれやれ、君は動くときも閃光みたいだね。マフィちゃんみたいな歯止め係りが確かに必要だと改めて分かる気がするよ」
下手すると外交問題になりかねないと不安で仕方がないテッドであった・・・。
「心配ない。俺達は戦争をしに行くわけじゃあない。・・・逆襲に行くだけだ」
会議が終わり、扉を開けると、そこにコリスが立っていた。
「水間殿、有難うございます! 皆を代表してお礼を申し上げに来ました」
そう言うと、敬礼した後、深々と頭を下げる。
「あのまま戦いが長引いていたら被害は甚大なものになっていたと思われます! 水間殿が迅速に駆けていたからこそ損傷は軽微で済みました!
皆も水間殿には感謝しております! 本当に有難うございました!」
「あっ・・・そうか。別に感謝される為にやったわけじゃないんだがな・・・」
「つきましては軍上層部に頼み込んで、以後異世界人の皆様と同行させてもらうことになりましたのでよろしくおねがいします!」
「えっ・・・いいのかよ。こんなキチガイ集団と一緒にいてもいいことなんて何にもないぞ」
「そういう方々と同行する事で学べる事もあるかと。ああ、テッドさんの口説きは遠慮させてもらうので!」
「それは寂しいなぁ・・・」
キチガイ集団がまた一つ華やか(?)になったのであった。
「マフィ、話がある」
「?? どうしたんですか改まって」
その日の夜、水間はマフィを呼び出し、話をした。今度はフェルテ帝国に行く。いままで以上に危険な旅になる、と。
「それでな、お前はどうしたい?」
「勿論付いて行きますよ。何処までも」
「・・・即答か」
「私は水間さんの『保護者』ですからね。金魚の糞みたいに思わないでください。一人にしておいたらあっさり死んじゃう人を置いて別れるわけにはいかないです」
「保護者ねえ・・・言いえて妙だな」
「そして無事黒幕を潰して世界に平和が訪れた暁には水間さんを村まで引っ張り込んで幸せな結婚式でも・・・でへへへ。
それにこれは女の勘ですけどコリスさんって方なーんか水間さんに気のある感じですからね~」
「青田刈りか!? 青田刈りのつもりなのか!?」
「半分冗談ですけど、半分は本気ですので、放しませんよ。逃がしませんからね~ってね」
「・・・・・・」
女は怖いと改めて思い知った水間だった。まあ失うものは何もない身だ。今更躊躇う事もないか・・・そう思った。
「糞溜めみたいな所で良ければ付いて来い」
「勿論です」
マフィはにぱーっと笑ったのであった。
作業は急ピッチで進められた。親善大使役にテッドが任命され、本人は人使いが荒すぎると愚痴っていた。
大型の馬車に水と食料と武器をごっそりと、それからトイレまで内蔵したものが出来上がった。
再び長旅が始まる。それも今度は決戦を覚悟したあてのある旅として・・・。




