第十四話 銃と銃
「まったく、何だってんだ!一体!」
戦を目前に地団駄を踏むテッド。無理もない。お互い都市として栄えるために末永く協力していこうと誓ったのがつい先日の事である。
それを反故にしてよりによって宣戦布告ときた。不機嫌もしょうがないというものだ。
おそらくは先の戦と似たような動機なのだろうが、こっちにしてみればいい迷惑である。
「おーおー、随分カリカリしてんなぁテッドの旦那」
「・・・無理もない。軍事国家ならともかく軍事設備が心もとない商業都市が相手だしな」
「先遣隊からの報告です!」
「どうだった?」
軍隊長が尋ねる。
「そ、それが・・・相手は二人だけです。間違いなく。ただ、奇妙な鉄筒を持っていまして、それで偵察隊の一人がやられました」
「奇妙な鉄筒・・・だと?」
「まさか・・・」
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヤヤヤ!」
「ギヒャヒャハハハハヤハハヒャヒャ!」
丘に陣取っていたポンメルの軍隊の先で血まみれの二人が現れる。双方、完全に脳と目がイカれている。そしてその手には・・・、
「拳銃・・・だと!」
二人が手にしていたのは間違いなく拳銃の類だった。ピストル、ライフル、散弾銃。それらを抱えてバンバンと景気よく撃っている。
「いかん! あれは危険だ。前衛、大盾装備!」
テッドが警戒心を露にして指示を出す。無理もない。アメリカ出身のテッドはあれがどれほど恐ろしい代物かよく分かっている。
「おいおいおい、いるぜいるぜ。撃ち頃の相手がよぉ!」
「全員まとめて殺してやるよヒャヒャヒャヒャ!」
何故彼らが二人だけなのか、何故軍隊がいないのか、それは至極簡単な理由である。
ここに来る前に、二人が軍隊を全員撃ち殺してしまったから二人だけなのだ。無差別に銃を乱射したからだ。
男達の名は、テキサス・タワー銃乱射事件を起こしたチャールズ・ホイットマンとマクドナルド無差別射殺事件を起こしたジェイムズ・ヒューバディ。
いずれも無差別銃乱射事件で数多くの人間を殺した極悪人である。
「ハーッハッハッハ! そんな薄っぺらい鉄の板でライフルの弾を受けきれるかよ!」
ホイットマンがライフル銃をぶっ放す、構えていた盾を貫通し、盾兵の頭まで弾丸が逝き届く。
「な、なんだこの兵器は!?」
「た、退却だ。これでは盾も紙同然だ!」
「しかし、このまま後ろを向ければやられ放題だぞ!」
「くそっ、どうすれば・・・!」
動揺と恐怖で混乱する前衛の脇を縫うように、一人の男が走り抜ける。
「水間殿!」
無論、その男は水間だった。水間は徹底して戦況を読まない。読めないのではなく読まない。ただ走り、駆け、敵目掛けて殺しに行くだけだ。
例え相手が銃を持っていようとも、いや、銃を持っているからこそ、水間は距離を詰める。
「バカかこいつ。自分から当りにきやがった」
「丁度いい。撃ち殺してやる!」
水間に弾丸が放たれる。そのうち一発は肩に直撃し、その一発はわき腹を貫通した。
それでも水間は駆けをやめない。そして遂に2人の眼前まで間合いを詰めきった。
「だから・・・なんだっていうんだああああああっ!!」
「な、なんだこいつ!?」
水間は瞬時にホイットマンの首を捻り上げ、返す刀でヒューバディの首まで捻り殺した。
「俺はな、大嫌いなんだ・・・! 銃を持てば人が撃てる。銃を持てば人が殺せる・・・! そう考えているクソメリケン野郎共がなっ・・・!」
被弾したところから血を噴出しながら水間が吼える。勝負は一瞬にしてついた。またしても水間の活躍で危機は去ったのだ。
「何やあいつ、俺達ただ見てただけやんけ」
「楽な一戦だったね~」
「いや、おじさんすっごく心配なんだけど。無差別乱射魔に接近戦挑むとか正気どころじゃないんだけど。彼ってばいつもこんな感じなの?」
「こんな感じやで」
「こんな感じだね~」
「あ、でもこの怪我は厄介だね。体に弾がめり込んでるから、ピンセットか何かで取り出さないと・・・それから」
宅間たちの頭にマフィの怒り狂った顔が浮かんでは消えていった。




