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第十三話 模擬戦とピエロ

水間たちがポンメルに滞在して2ヶ月が経過した。この頃になると路銀も底をつきかねて・・・いなかった。

テッドが軍人が使っている寮を提供してくれたおかげで衣食住が提供されたおかげである。感謝のしようもない。

異世界人ということで初めこそ警戒していた軍人達であったが、思いのほかすぐに打ち解けた。水間たちが極端な無差別殺人をしないことを誓ったのと、

マフィが皆を説得して回ったからだ。こういう時の一般人の存在は心強い。

しかしポンメル近隣では猟奇殺人が相次いだ。

ヘビメタ殺人鬼リチャード・ラミレス、売春婦殺人魔アイリーン・ウォーノスが出現したからだ。

その度に水間たちが駆り出され、標的は仕留められていったが、治安は確実に悪化しつつあった。


明らかに何者かが意図してポンメル近隣にシリアルキラーを召喚している。この事態にテッドは軍備の強化を進言し続けたが、中々通らなかった。

「ふう・・・中々うまくいかないね」

「テッド様ぁ~気分転換に私と遊びましょうよ~」

「テッド様になら、犯し殺されてもいいですよぉ~」

「有難う二人とも。でも自重しておくよ。ここでハッスルすると後が厄介になるんでね」

悲しい中年のため息一つ・・・最近は夜も一人寝が多いなと、思ったテッドであった。



一方こちらは軍人寮の中庭。本日は実践を想定した月に一度の模擬戦が行われ活気付いていた。水間たちも参加を勧められたわけだが、

「ちぇいっ!」

「ぐああっ!」


「そこまで。水間将一、9人抜き達成!」

「おおおおおおおっ! すげぇ。あの異世界人やりやがる」

「宅間やエドって奴もやるけど、やはり水間がダントツだな」


「当たり前じゃ。何回実践で人殺したと思ってるんや。そりゃ腕も磨かれるわ」

「こういうのは場数で決まるよね~」


「・・・さあて、どうする? 節目の10人目を区切りにしたいんだが、誰かやらないか?」

「ハイ! 私とお願いします!」

大きな声で大きく手を上げたのは一人の女性騎士。名をコリス・ランス。テッドに最も口説かれたので有名な女性(その度に蹴っ飛ばしたが)である。

美人故、寮内でもファンは多い。が、男には興味ありませんと言わんばかりの立ち振る舞いでむさい男達をしょんぼりさせている。

「・・・容赦する必要はないな」

「勿論です。思いっきりかかってきてください!」

そう言うと、中サイズの槍をビシッと構える。なお実践ではこれよりはるかに長い槍を自在に振り回す腕力があるが、これはあくまで模擬戦だ。

なお、10人抜きすると夕飯が豪華になるので水間としては何とか勝ちたい相手である。


勝負は水間が完勝した。コリスは悔しがっていたが、これもまた修行の一環と前向きに考えた。

夕飯の肉の盛り合わせは水間が一部を皆にお裾分けして残さず平らげた。



そして翌日。丁度間が空いた水間は久し振りに街へ出てみようと思った。護衛としてコリスを連れて、マフィも同行した。

「治安が悪化しつつあるとはいえ、ポンメル自体は平和でなによりだな」

「軍事力が違いますからね。本当は相応の兵を配備したいんですけど、中々思うようには行かないみたいです」

横からコリスが言う。だが水間たちの活躍があったからこそこの程度で済んでいることを考えると、案外これでいいのかもしれない。

「ん・・・・・・」

水間が街の片隅を見据える。目の先にはピエロに扮した男の姿があった。子供達を中心に人だかりが出来ている。

「は~い、次はこのお人形さんを書いてみるよ~。サラサラサラ・・・・・・は~いできました」

「わー上手だー」

「出来ればこの絵を買って欲しいとおじさん嬉しいな。おじさん生きるので精一杯なんだ」

「あいつは・・・・・・」

水間がその人だかりに混じっていく。コリスとマフィもそれに付いて行く。

チャリンとお捻りに銀貨が一枚落とされる。水間が投げたものだ。

「わーお、これは嬉しいな、誰かな誰かな?」

ピエロの男の額に言語用の札がぺたりと貼り付けられる。

「こんな所で獲物の物色中とは現金なことだな、殺人ピエロさんよ」

「え・・・・・・?」

「殺人ピエロと言ったんだ。ええ、ジョン・ウェイン・ゲイシーさんよ」

「・・・・・・・・・・・・。ちょっと、みんな、席を外してもらえるかな? おじさんどうやらこの人と話をしなきゃならないみたいだ」


ジョン・ウェイン・ゲイシー。ショタでホモでシリアルキラーの殺人ピエロ。最低でも28人の男子をレイプして殺した男である。

水間がそう解説すると、コリスは槍を構え、マフィはまたこれか、という顔をした。

「・・・・・・困るなぁ。この格好の時は『ポゴ』という名前を使ってるんだけど」

「名前を変え、子供の人気者になっても、やること変わらなきゃ同じだろうよ」

「バカ言っちゃいけないよお兄さん。おじさんこの街に突如現れたのは一週間ぐらい前さ。着の身着のままピエロのままこの世界に現れたのさ。

 言葉も通じずお金もないから、絵を描いたり大道芸をして日々を凌ぐしかなかったんだよ。それに・・・・・・」

「それに・・・なんだ?」

「こっちの世界に来てから子供は一人もレイプしちゃいないよ。何ていうのかな・・・、

 あれほど体の中に溜まりに溜まってた黒い欲望がマグマを吐き出した後の火山のようにポッカリ空洞になっちゃってね。今はあっちの世界の所業を悔い改めているくらいさ」

「・・・・・・・・・・・・」

水間は真剣な眼でゲイシーを見つめる。嘘は言ってない。そう判断した。

思えばこっちの世界に召喚されてきた異世界人には2通りある。あっちの世界と同様に本能の赴くまま破壊と殺戮を繰り返す『甲』。

もう一つはバンディのように限りなく真人間に近くなりその力と才能を別の方向に使おうとする『乙』。

(そういえばテッドの奴が愚痴ってたな、今日こそ殺人レイプをやってやる! とベッドインしたがただのセックスで終わってしまった。

 私のアイデンティティーは何処に逝ってしまったのか・・・とか)

「その話が本当なら逮捕も出来ませんね・・・」

コリスが構えを解いてしまう。騎士団の一員として勤めを果たす必要は、どうやら今のところなさそうだ。

「いや、この際逮捕でもいいよ。そうすればご飯も食べられるし雨風も凌げるし、おじさん大歓迎」

「・・・だとさ。コリス、どうする?」

「え、いや、私に言われましても・・・」

「なら、俺に一任させてもらえないか?」

「まあ、いいですけど・・・多分」

「・・・・・・・・・・・・」



「というわけで新しくスカウトしてきたジョン・ウェイン・ゲイシーだ」

「どうも~おじさんですがよろしく。ちなみに趣味は絵を描くことです」

「また妙な奴を引っ張り込んだんやな・・・」

「ボクもなんだかんだでスカウトされて一緒にいるわけだしね~」

なお、コリスは複雑な表情を変えず、マフィはもう好きにしてくれという感じであった。


バァン!


自己紹介も途中のまま、テッドが相変わらず両手に華状態で部屋に入ってきた。

「えらいことになったぞ! また戦争が始まる!」

戦争・・・というキーワードにそこにいた全員が反応する。

「またか・・・・・・で、相手は何処だよ?」

「・・・・・・キャロラン。ポンメルにとって最も重要な『お得意さん』の商業都市で、街道に石畳を共同開発したところだ」

「マジかい・・・?」

宅間が冷や汗を一つたらした。狂気はまたしてもまったく奇妙な所から訪れたのだ。

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