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第九話 強姦殺人魔としばしの休息

「とりあえず、スリーBという男に関してもう少し詳しく調べる必要がありそうだな」

「有名人みたいですからね、資料本には事欠かなそうですね」

「まあ、殺人鬼引っぱり込んで遊んでるような奴にヤキいれてやりたいという気持ちはあるわ」


「やあやあ諸君、いや、異世界人の皆様かな?」

資料本を探そうと立ち上がろうとした矢先、ふと声をかけてきた男がいた。

両脇に女性をはべらせ、白い歯をキラリと輝かせた、端正な甘いマスクの男だった。でも限りなくいかがわしい。

「あんたは・・・! あんたもこっちの世界に飛ばされてきたのか?」

水間がにわかに警戒心をあらわにする。

「オウ、そこのお嬢さん、ボクと一緒に夜明けのコーヒーを飲まないか?」

空気を読んだ上での無視なのか、男はマフィに唾を付けようとする。

「えっ・・・えっ・・・」

「やめとけマフィ。こいつは連続強姦殺人魔だぞ。そうだろ? なあ、テッド・バンディさんよ」

「おや、知ってるなら話は早い。いかにもボクはIQ160の天才シリアルキラーと謳われた男、テッド・バンディだよ」

「あーあー。ま~た厄介そうな奴が現れたねぇ」

「ここに人おらんかったら即座に袋叩きにしとるわ」

テッドは図書館内に置かれた椅子置き場から椅子を数席分持ち出し、そこに座る。わざとなのか、遠慮はしないと言いたげだ。

「まあそうピリピリしないでくれ。ボクは情報を持って君達に接触しに来たつもりだ。不躾に扱っては困ると思うけどねえ」

「ああ、そうかい・・・どうやってもここから出て行くつもりはないわけか」

「ちなみに、ヘンリー・リー・ルーカス。彼もまたこっちの世界に来ているよ。今は刑務所に入れてるけどね」

「・・・・・・いよいよ『羊たちの沈黙』めいてきたな」

ヘンリーといえば360名(虚言の可能性あり)を強姦殺人したと言われる全米最凶のシリアルキラーだ。野放しに出来ないのも当たり前と言えるが。

「彼にはね、務所に入ってきた女を強姦種付けさせる業務に付かせてるよ。親はろくでなしでも子供に罪はないからね。きちんと教育してポンメルの未来に役立ってもらうつもりだ」

「お前らはつくづく女を何とも思ってないんだな・・・」

「いやいや、子育てなんて所詮ギャンブルさ。なら可能性の高い方に張る。当たり前だろ。子を生む道具に、潤沢な教育。問題はないと思うけどね」

「いや、流石の俺らでもそれはひくわー」

「・・・っと、話がそれてしまったね。悪い悪い」

頼んでいた紅茶を一口飲み、テッドはとうとうと語り始めた。


「スリーB・・・バーン・B・バナリスは間違いなくこの世界の人間にとって尊敬と畏怖に値する人間だよ。私も君達とは一足早く調べたけどね。いやあ凄いものだった。

 6歳で史上最年少で魔法学校に推薦入学し、教師以上の魔力を身に付けた。魔金学、錬金術、呪術法、召喚術、色々怪しいものを好んでいたみたいだね。

 成人後は世界政府の援助の元に実験を重ね、数多くの功績を手にした。しかし次第に政府とは距離を置くようになって、最終的に没した。

 しかし死体の類は発見されておらず、生存説も当時は多かった。ここまでは君たちが調べたのと大差ないけどね、問題はここからだ」

二口目の紅茶を含み、テッドは話を続ける。

「死後から丁度1年ほど経過したある日、とある村が盗賊団に襲われた。それを瞬く間に退けた男・・・それがスリーBと酷似していたそうだ。

 しかもそういった目撃情報も1度ならぬ複数見つかっている。ただ異世界人目撃事件もあって政府はそっちを優先してたみたいだけどね。

 私はスリーBは『生きている』と考えている。偏屈で神出鬼没で、自分を神だと勘違いしていそうな男だったそうだ、そのくらいのきまぐれはするさ」

「だが何処にいるかまでは定かではない、か・・・。どの道生存しているものとみて考えてよさそうだな」

「ふふん、裁判を行えば黄色い声援を浴び、獄中にいながらファンレターを貰った経歴は伊達ではないよ」

「それは全然関係ないと思いますけど」

マフィの辛辣なツッコミが場を沸かした。

「さて、私は今仕事を抜け出して来た身でね、こう見えても今はこの街のキャリアに就いている。何かあれば力を貸そう」

「その合間にナンパすんなや」

「今はこの街のインフラ整備に力を入れている。おかげで物流効率は3割ほど上がった。それがひと段落すれば次は化学と科学に手を伸ばす。

 この世界に重火器や飛行機、蒸気機関車やディーゼル車を作ってみせる。私の灰色の脳細胞なら不可能はないさ。ハッハッハ・・・」

「キャー、テッド様ステキー。抱いてー」

「抱き殺してー」


「嵐のように行っちゃいましたね・・・」

「収穫は異世界人連続召喚事件とスリーBなる男の存在か・・・まあ一日目としては上出来だろうな」

「そろそろ日も暮れてきたし、宿を探したほうがよさそうだね~」

「ほなら今日はこの辺でさいならしようか」

幸い盗賊団を潰し続けてきたおかげでお金は有り余るほど持っている。高級そうなホテルに泊まる事も可能だが、

無駄遣いは厳禁という水間の意向ゆえ、一行は安宿を探してそこに泊まって寝た。

そのかわり明日は観光でもしようと決まり、マフィは大はしゃぎしたという。


翌朝は休日という事もあり、一行は朝からテンションが高かった。なにせ盗賊殺しの毎日だったのだ。このくらいの息抜きはいいだろうという水間の意見に全員が賛同した。

「さあ何処から行きましょうか。噴水公園? 屋台村? ポンメル庭園? 高台からの景色を見るのもいいですねー」

観光用ガイドブックを片手にマフィははしゃいでいた。小さな村で育ったマフィにとって大都市の観光は念願だ。気持ちも分かるというものだ。

「それじゃあ行き先はマフィに任せるか」

「いいんですか!? 有難うございます! それじゃあ噴水公園から行きましょう」


「随分見事な噴水やな。このデカさはあっちの世界でもそうないで」

「冬季はイルミネーション・・・? で輝くらしいですよこれ」


「どうです? この服? 似合ってます?」

「気に入ったなら買っていいぞ。そのくらいは奮発するさ」


「この羊肉の串焼きおいしいですねー」

「こっちの鳥皮焼きも美味いね~。カポンカポンと舌鼓が鳴っちゃうよ~」


「これが国宝に指定されてる絵画『輝きのドラゴンナイツ』です」

「俺はこういうのには疎いがこれは素晴らしいってのは分かるぞ」

「こっちにある髑髏の水晶ってのも凄ぇな。売れば幾らになるんや?」

「怪盗が持ってっちゃいそうな代物だよね~」


「美味いなこの肉!」

「こっちの魚も絶品ですよ。半分こしましょう」


束の間の休息と安らぎを味わう水間一行・・・。

しかし大きな波乱はすぐそこまで迫っていた。

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