お前を食べたい
前半=章一視点
後半=涼太視点
僕の目の前には、息を切らして苦しそうに微笑む白沢先輩がいた。
「し、白沢先輩?」
「章一、気にすんな。少ししたら治るから」
「でも…」
心配になり、白沢先輩に近づく。
その時、彼は血相を変えて叫んだ。
「来るんじゃねぇ!!」
「……なんでですか?」
「…腹減ってんだよ」
キュルキュルキュル………。
白沢先輩のお腹から聞こえる、水っぽい音。
思わず僕は拍子抜けしてしまった。
「それなら、何か作りますから」
「…そういう意味じゃねぇんだよ」
「え、じゃあ、どういう……」
「俺は………お前を食べたいんだ!!」
白沢先輩は懐からナイフを取り出して僕に襲いかかった。
そう言った時の彼の目は、猛獣のようにギラギラと血走っている。
怖い、でも逃げられない。
その言葉が引き金となり、僕は文字通り餌食になってしまった………。
◇◇◇◇◇
なんて事だ。
俺は、章一を殺してしまったのか?
残っているのは内臓と骨と頭だけだ。
食べてはいけないと必死に抑えていたのに、何もかも水の泡になってしまった。
章一、俺を許してくれ………。
でも、なぜだろう。
最愛の後輩を失ったのに、すごく、満たされている。