表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ELEMENT 2016春号  作者: ELEMENTメンバー
テーマ創作「はじまり」
9/17

はじめの一歩(作:奈月ねこ)

 僕は少年サッカーチームに入ってる。フォワードで攻撃の要だ。サッカーは楽しい。練習はキツい時もあるけど、試合で勝った時の嬉しさは言葉に出来ない。

 そんな僕だけど、最近なんだかやる気がしない。


琢磨たくま!なんだそれは!そんなボール運びで相手をかわせると思っているのか!?」


 コーチの声が飛ぶ。僕のやる気のなさがコーチにも伝わっているようだ。


「琢磨!やる気がないなら帰れ!皆の練習の邪魔だ!」

「あ、あのコーチ、うちの子も頑張ってると……」

 

 練習を見に来ていたお母さんがコーチに詰め寄る。


「お母さん、琢磨君は少しサッカーから離れた方がいいかもしれませんよ」

「そ、そんな……」


 僕もコーチと同じように思った。


「お母さん、いいよ。うちに帰る」

「琢磨!?」


 やる気になれないんだから仕方がないよね。お母さんは納得してないようだけど。

 僕は家でゲームをすることにした。サッカー以外で何かに夢中になりたかったんだ。でもゲームをしていても、いまいち集中出来ない。


「琢磨、ゲームばかりしてないで外にでも遊びに行きなさいよ」

「うるさいなあ。ほっといてよ」

「琢磨!」


 僕は自分の部屋に駆け込んだ。そしてベッドにダイブした。

 何かしたい。でもそれが何かわからない。僕はもんもんとした日々を過ごしていた。ただ小学校に行ってそのまま家に帰る。放課後が長く感じる。

 そんなときクラスで目立たない女子が本を読んでいるのが目に入った。


「それ面白い?」


 僕が話しかけたことにその女子は驚いたようだ。


「面白いよ。北野きたの君は本を読まないの?」

「うん。つまんないと思ってるよ。それよりは外で遊んでた方が楽しいよ」

「本も楽しいよ?」

「ふーん」


 外で遊んでた方が楽しいはずだった。でも最近は外で遊びもしない。僕は学校の図書館へ行くことにした。あの女子に言われたからじゃないけど、「本」が気になったんだ。何となく今まで行ったこともないところへ行くから、こっそりと誰にも見られないように向かった。

 僕は図書館の扉を開けた。古びた匂いがする。かといって嫌な匂いじゃない。僕はぶらぶらと図書館の中を歩いた。その日は図書館の先生が一人いるだけで、誰もいなかった。


 とそのとき、一冊の本が目に入った。背表紙には何も書かれていない。だけど昔からそこに陣取っているような存在感を放っている。僕はその本に近づいた。とても分厚い本。


「よいしょ」


 分厚い本は、ずしっとした重さがあった。僕はその本を図書館の机のところへ持っていった。


 ドサッ


 本を机の上に置いた音が静かな図書館に響く。何故だろう。とてもワクワクする。どんな話が書かれてるんだろう。


 僕はそっと本の一頁目を捲った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ