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ELEMENT 2016春号  作者: ELEMENTメンバー
合作
2/17

春風(文:奈月ねこ・イラスト:霜月透子)

「はっくしょん!」

「はっくしょん!」


 私はティッシュで鼻をかんだ。私は花粉症なのだ。それも重度の。

 外へ出掛ける時はゴーグルのような眼鏡をして、マスクをする。その前に薬を飲み、目薬も注しておく。それでも仕事には行かなければいけない。私の重装備に会社の人達は驚いていたが、今は慣れたようだ。

 そんな春先のこと。春と言えば花見だ。うちの会社でも係ごとに花見へ行く。そして当然のことながら場所取りの人間が必要だ。係内で毎年順番に一人が指名される。そして今年は私が指名された。


 花粉症なんですけど!?


 私は出かかった言葉を飲み込んだ。皆やってきているのだ。自分だけがしない訳にもいかない。

 花見当日。私は午前中から会社の許可を得て、花見の場所取りのために公園にやって来た。いつもは花粉症が酷くて周囲を見る余裕もなかったが、こうしてゆっくり見ると桜は綺麗だと改めて思った。

 その日はうららかで気温もほどほどに暖かい。私は眠くなってしまった。しかしこんなところで寝る訳にはいかない。と思った矢先、私は眠りに落ちた。


(ふふふ。楽しんでいってね)


 ふわりと風が舞った。春の風に頬を撫でられたような気がして、私ははっとして目が覚めた。今のは……夢?でも囁かれた声は鈴が鳴るように心地良かった。それにその「人」の姿が鮮やかに瞼に焼きついている。薄い藍色の衣を纏って、長い髪を結い上げ、軽やかにまるで天女のように空へ溶けてしまいそうだった。


 私は夢の中で春の精に会ったのかもしれない。


挿絵(By みてみん)


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