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ELEMENT 2016春号  作者: ELEMENTメンバー
セッション~コーラスパート~
14/17

Turnover(作:美汐)



 その朝、運命のいたずらが三人の人生を大きく変えた。




「ああもうっ! あたしの馬鹿! こんな日に寝坊するなんて一生の不覚! 和臣くん待っててね」


 一人はうら若き女子高生。道を急いでいるのは、最近できたばかりの彼氏とのデートの待ち合わせに遅れないためだ。




「うわ~っ。早く行かないと、みんなにまたどんくさいとかいろいろ言われちゃうよ~。本当は野球なんてやりたくないのに~」


 もう一人はおとなしそうな少年。少年野球の練習に向かう途中のようだ。慌てた様子で道路を走っている。




「儂の遺産を受け継ぐのは、いったい誰がふさわしいのか……」


 そう言いながら下を向いて歩いているのは、仕立てのいいスーツを着た白髪の老人である。手に購入したばかりと思われる真新しい便せんの用紙を持って、なにやら考え事にふけっていた。




 そんな三人は、それぞれ自分のことを考えるのに忙しく、前方にまるで注意を払っていなかった。

 そして、まったくの時を同じくしてそこに向かっていたのである。




 どっしーん!




 道路の辻の真ん中で、三人は突如現れたお互いの存在に対処する暇もなく、そのまま正面からぶつかっていった。

 その衝撃は、彼らの脳をしたたかに襲い、しばらく三人とも身動きできずに倒れ伏していた。

 そうしてしばしのときが過ぎたころ、そろそろと彼らは身を起こし始めた。


「いったぁ~」


「いっててて」


「と、年寄りになんてことを……」


 と、三人が目を開いた瞬間、互いが互いの顔を見て、驚愕の声をあげていた。


「ええええええ!?」


 彼らは互いの顔を見て叫び声をあげたかと思うと、今度は自分の顔や体をそれぞれ確かめるように見回したり、触ったりしていた。


「嘘! なんで? あたしの体がなんでそこに? それにこの体なに? ちっちゃくなっちゃってるんですけど!」


 そう叫ぶのは、小学生の少年の姿となってしまった女子高生。周りをきょろきょろとしたり、己の体を落ち着きなく見回している。


「うわあああ!? なにこの体! すんごく重いし、皺だらけ。それになんでぼくがそこにい

るの!?」


 こちらは老人の体になってしまった少年。激しく目を瞬かせると、頭を抱えてしまった。


「ス、スカート!? なんという破廉恥な……。しかも、む、胸まである。わ、儂はいったいどうしてしまったのか……」


 そして老人だった男は今、ぴちぴちの女子高生の姿へと変わってしまっていた。


「ねえ! どういうこと? なんであたしたち入れ替わっちゃってるの!?」


「わかんないよ~。こんなおじいちゃんぼく嫌だよ~」


「こ、困る! 儂はこれから大事な遺言書を書くところだったのに、こんな姿じゃ家にも帰れんじゃないか!」


 道の真ん中で、三人とも泣いたり叫んだり怒ったり、大混乱を起こしていたのである。


〈To be continued〉


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