醜くも。
からっぽの音が鳴る。それは鼓膜をゆらさず、脳のまんなかに有りつづける。随分とまえから、気づいていたはずなのに、それは日常の騒音にかき消されてしまっていた。いま、目から落ちた液体には、かなしみと絶望が混ざっている。自分の愚かさに気づかずにいた、今日までの日々にもらした言動を、恥じて、反省し、あきらめた、かなしみ。明日にゆめみていた自分への甘さに、気づき、現実を知り、あきらめた、絶望。その液体は、頬を伝う。拭うものはなにもない。ただ、流れゆくのみ。闇はこころの場所に巣食う。真空の闇、なにも感じない、以前にあった希望や期待をそのまま抜きとった、なにもなくなった場所。闇。なんにもない。からっぽの。わたしはそうなってはじめて、人々への罪を自覚し、謝罪した。闇のある場所が、なにもなくなったはずの闇が、痛む。からっぽになった脳のまんなかで、わたしは泣いている。流れる液体は熱をもち、あきらめたすべてに縋りつく。醜くも生きている。死んでしまえたらどんなに楽か、からっぽの脳が想像する。わたしはいま、つらい。せめてもの救いは、眠りにつくための小さなタブレット。






