ニートの日常
「タケル、起きてるの?お母さんそろそろパート行ってくるからね」
ドア越しにどこか悲しげな優しい声が聞こえて目が覚めた。
時刻は午後2時前、タケルはダルそうに布団から起き上がりボーッとしていた。
どれ程時間が経ったのだろうか。
ようやく立ち上がる決心がつき重たい腰を上げドアを開けた。
いつものように、床に置いてあるラップでくるんだ食品を取り再びドアを閉めた。
母親の愛情など全く無意味なのか、ラップをはがし味わいもせずとりあえず口に運ぶ。
いつもと同じ、この生活ももう今年で7年目になる。
起きて、与えられた物を食べ、ネットゲームをして、また寝る
7年間も全く変えずに生活してきた。
失った物は沢山、本当に数え切れないくらい失った。
逆に得た物はギルドメンバーの信頼と時間で手に入れたゲームのキャラクターの強さ。権利、名声、力。その全てを手に入れた
皮肉な事に現実世界とはまるで正反対の世界である。
だからこそ止められず7年間を過ごしてしまった。
母が作った親子丼を平らげたタケルは、
再びパソコンデスクの前に腰掛け電源を入れた。
『ようこそ!ファンタジークライシスへ!』
見慣れたスタート画面を見て何故か安心感が出る
ログインボタンをクリック
『いつもご愛顧いただきありがとうございます。只今緊急メンテナンス中です。』
見慣れない画面が出てきて少し驚くも、すぐに状況を把握し
ガッカリする。
「糞っ、、、頼むぜ運営さん、、、」
小声で愚痴をこぼし椅子の背もたれに大きくもたれかかる。
『現在キャラクターデータをダウンロードしています。しばらくお待ちください。』
画面が急に切り替わった。
「なんだこれ!?新しいサービスのダウンロードか??」
そう呟きしばらくモニターの様子を見た。
『現在キャラクターステータスの振り分け中です。しばらくお待ちください。』
『現在キャラクタージョブの選択中です。しばらくお待ちください』
『現在初期所持品の振り分け中です。しばらくお待ちください。』
次々と画面がスクロールし文字が出てくる。
「な、なんだこれ!?え?バグ?」
7年間の賜物と呼べるデータが消えるのかと思い焦りだすタケル。
その瞬間、
『お待たせしました。全てのデータのダウンロードが完了しました。』
ロボットの様な声が爆音で響きわたった。
同時にモニターから、けたたましい光が放出した。
タケルは耳を塞ぎ、目を深くつぶってはいたが
無意味な程の光量と音量がタケルを襲った。