最終話.裏魔術(黒魔術と白魔術)
性的な表現オンリーです。ご注意ください。
※この今回の文章表現は全て「小説家になろう」運営さまのR規制ガイドライン(当話投稿日付けまでの)に沿って、現在のキーワード該当作の内容に相応しくあるように、著者なりに構成させて表現、描写しています。
男の躰と女の躰を重ね合わせて繋ぎ、雄と雌として次の命を生み出す最も神聖にして最も邪悪なる行為。
性行為に性交渉。
快楽に負け、快感に任せて、ただ単に生命として、その生体に備え付けつけられた本能に溺れて繰り返される増殖行為。
この世界では魔法使いや僧侶同士、あるい僧侶と魔法使いによって繰り広げられるこれらの行為は、
ただの生殖行為とはその性質を異にして他ならなかった。
つまりそれは超高度的に研鑽を積んだ魔術師、聖職者にとって性行為とはもはや生殖目的ではなく、
精殖目的によって行われるのである。
精とはまさに魔法の根幹部分である魔法発動作用点と同義の言葉であり、性交渉時に相手の精を自分の体内へと吸い取りこむ、あるいは自分の精を相手側に注ぎ込む行為は、自分や相手の魔力を高める、あるいは貶めることを主な目的としている。
この行為を魔術用語では「裏魔術」といい、学術的には「精行為」と言って云い習わしている。
だが世間一般では俗に「契り」と呼ばれているそれは、人間が後天的に魔力を体内に宿すことのできる唯一の手段であり、それゆえにこの世界ではそれを人の身のままで魔法の高みへと至る、聖なるにして魔なる男女の契約として通常の性行為以上の価値として尊ぶことと同時に、蔑んでもいた。
快楽に身を任せ、なおかつ、その快楽で自身や相手に精を注ぎ込み導き入れ魔力的に互いを成長させる、することのできる唯一の儀式。
雌性の精は選ばれし雄性の精と交ることによってのみ魔力精製の反応を示し、その中心に魔力を発生させ宿し、それを宿す者、宿させた者に大いなる祝福と呪いを与える。
そんな利点と欠点ばかりが入り混じる精行為『裏魔術』にも旧来からの分類があり目的に応じて主に二つに分けることができる。
これは魔術に携わる者ではなくとも予備知識としてあらゆる教育課程でおそわる基本情報なのだが、
裏魔術とは大まかに「白魔術」と「黒魔術」に分けられていた。
相手に自分の精を注ぎ込み分け与えて相手の身を守るようにする、あるいは相手の精を自分の側に取り込み自分の加護とするのが「白魔術」であり、
「黒魔術」は自分の精を相手に注ぎ込み相手の躰の全てを自分の支配下に奪う、あるいは相手の精を全て自分の側に吸い取り相手の心と躰を骨抜きにすることを大体の目的にしていると言える。
それ故に精交には常に神聖な面と邪悪な面が存在し、使い方によっては大きな利点と不利益を内包していた。
ここで付け加えておくと精行為の特性上、相手に精を注ぎ込むのは雄性側が有利性を持っているのに対し、相手から精を取り込むのは雌性側が優位性を備えている。
「白魔術」であろうと「黒魔術」であろうとこの基本関係が揺らぐことはなく、精行為を行おうとする者は常に自分がどちらの性の側なのかを理解しておくことが重要だった。
またこれは補助的な知識となるが、精交には身体的、生理的にれっきとした性行為との違いが如実に現われることは有名であり、かつそれが精行為の証明としても成り立ってる。
それが俗に言われる「黒い精液」と「薄紅色の帯下」と呼ばれるものであり、これを「通常の精子、精液」と「通常の帯下」に取って代わって生み出せることが白魔術、黒魔術を行使、成就させる上での絶対的な必要最低限の資格だと言われている。
ちなみに白魔術・黒魔術を問わずに雄性側が出すのが「黒き精液」であり、「薄紅色の帯下」は雌性側である。
これを発現させるには余程の才能でもない限り、高度な魔術師でも人生の八割は費やすほどの長期間の研鑽と努力が必要だと言われており、このことが白魔術、黒魔術を志す主に雄性側の者の心を完膚なきまでに打ち砕いている。
しかもこれに当てはまるのは雄性側の精的発現のみであり、それは雌性側の精的発現よりもはるかに困難であることを意味し、古今東西、この域まで達した雄性の魔術師、聖職者は指で数えるよりも少なく、また高齢期を遥かに過ぎて達してしまっている者が全てであると言われている。
逆に雌性に到ってはこの限りではなく、それどころか精的に、かつ性的にも未熟な十代であってさえ二次性徴と同じ推移で、雄性側とは比べるべくもない遥かに僅かな研鑽と努力次第で簡単に発現できていることがまま見受けられている。
この事がかえって雄性側の精的行為可能者の希少性を押し上げ、半ば少年期から適齢期にある雄性の黒魔術師、白魔術師はほとんど伝説の域の存在とまで云わしめるほどのものとなっている。
つまるところ、そういうこともあり、“黒い精液”は「伝承にのみ存在する虚構」とまで云わしめるほどの代物となっているが、その性質は看過できるものではなく、実際に身近にあれば、いかに述べる非常に誘惑的な性質を秘めている。
その一つが黒い精液中には精子が存在せず生殖能力がないということであり、これはそれがいくら雌性側に挿り込み雌性の卵子と結合しても、通常の精子が受精したような受精卵とはならず。
新たな生命が宿ることはない。
ただし、勘違いしがちだが、黒い精液、つまり「黒精」は雌性側の卵子と結合し、授精、融合することは可能であり、授精し黒く染まり切った卵子は魔力を生成、発生させる根源となる「授精黒」とよばれ雌性の胎内で着床することもなく長期間留まるとされている。
授精黒が胎内に留まっている場合、これは先述したように胎内部(つまり腹部)で浮遊しつつ簡易的な魔法陣を構築し、常に雌性側に雄性側の特性を併せ持った魔力発現を促し、その身に後天的な魔力を備えさせるという非常に大きな役割を発揮することになる。
さらに授精黒が雌性の胎内に着床した場合、その雌性は妊振した、という状態になる。
授精による妊振は通常の妊娠とは異なり命は宿さない。
しかし通常の妊娠同様、月経は来なくなる。
妊振した雌性は胎内で、授精黒の内で構築されていく超小型魔法陣と身体的に直結した状態となり、より容易で即効性のある強力な魔法行使が可能になると言われている
しかし、そこにも留意点はあり。
それはごく稀にではあるが妊振期間にも初期と末期が訪れることがある、ということである。
それが俗に言われる妊振の初期に現われる「つわり」と末期に現われる症状、つまり「陣痛」である。
通常であれば日常生活の中で行われる魔力消費によりそこまでの症状が現れることはまずないのだが。
格段に精と精の相性が良好の場合。
長期間、小型の魔法陣を内包する授精黒を体内で育んだ雌性は、その初期に悪阻を発生させ、その末期に陣痛の症状を現すことがある。
この時、初期の悪阻こそ軽度なものだが、最も警戒すべきは末期の陣痛であり、これは最大のもので超巨大な魔法陣を周囲に強制展開させるという。
その陣痛末期の出散時には、最大で大魔法とも超魔法ともいわれほぼ禁呪級の出力が解放されると言われている。
その超魔法陣や大魔法陣の性質も無作為的、ランダム的に注がれた黒精の種類によって、
やはりランダム的、乱雑的に様々あり、それによって出散時に及ぼす効果も大幅に違ってくる。
それにだけ気を留めれば、精行為は主に雌性側にとって非常に有利な面が大きく、世間的には雄性側の数があまり一般的ではないことから、口伝に残る伝承上という意味でも比較的好意的かつ有効的な目で雌性側からは見られていた。
それはよく快楽面でその魅惑に陥りやすい雄性側でも同じであり。
特に絶世の美女とも持て囃されている聖地メッカを治める高度に白魔術を修めた聖女、現在は少女であるが、その聖少女との魔力を高めるための精行為は最も崇高な聖儀式、聖行為ともいわれ聖交後の対異性者には絶大な祝福と福音がもたらされるという。
だからこそ魔法を志す者は雄性雌性を問わず、大半がまず裏魔術の中から一つでもいいと白魔術か黒魔術を修めようと躍起になるのである。
男女混同のパーティーでは、尚更その技術の有無が、絶対的な生死を分かつ大きな差であった……。
こちらの文は、一度、小説家になろう運営さまにて「利用規約違反」をした文章を改稿し、
R-15用に修正して再投稿した文章です。
その為、また再度、利用規約違反の指摘がなされる可能性があります。
あしからずご了承ください。