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5 ちーん

 やあ、素敵なハーレムイケメン御曹司、定刻(ときさだ) (てる)だ。

突然だけど、紅雀さんが盗られました。副社長に。


 廃ホテルの様子を自分の足で見に来た副社長さんを紅雀さんが見ちゃって、

「はうっっ。」って胸を恋の弓矢に刺し抜かれたような切ない表情になってからは、

ラブレターを書いてはため息をついてばかりいて、精神的にNTRれた感じだ。

…ちなみにラブレターは年初めに今年の漢字を書くような巨大な筆で壁に書きなぐっているので、

藤が大変そうにそれを消している。それを光莉ちゃんは僕の膝の上で眺めている。

救いは副社長が霊感0っぽいところだ。


「紅雀おねーちゃんは惚れっぽいから、3日ほっとけば直るよ。」


光莉ちゃんがそう言っていたので、3日待ったら、

奇行はピタリとおさまった。

…代わりに油性ペンでラブレターを書き始めた。壁に。

…もちろん消すのは藤だ。光莉ちゃんは手伝う気配は全くない。


「今回ばかりは本気かも。」


光莉ちゃんがそう言うので、協力してあげようという気がしないでもない。

僕は、その女、僕の中古だけどな。なんて言うようなゲスではあんまりないので、

たぶんそれをいうことはない、はず。


 彼女たちは一般人には見えないので、そういうことをいたしていると、

エアーでやっているように見えて大変いただけない。特に自分のアレが丸見えになるし。

…いや、彼女たちが透明じゃなくても見られたら拙いけれど。


 そんな禁断の気分へあの強面渋めのサド風若頭的な副社長を引き込んでみたくもある。

よし、このホテルの宿泊客第1号は副社長だ。



 副社長に復興案を丸投げして半年後、

遂に定刻ホテルTOKYOは再オープンした。

副社長有能過ぎる。


 早速試験的に一晩留まった彼が漏らした感想は、


「なんだか、眠りが浅い気がする。寝具の調子を確認した方がいい。」


だった。

…多分、副社長が眠りが浅くなった原因は紅雀さんだ。

霊感が低すぎて無理矢理起こそうとしても触っても反応が無かったと紅雀さんは拗ねていたから間違いない。



 再オープンしてから、一気に人が入り始めた。

当然だ。立地も部屋もスタッフも料理も最高の定刻ホテルだ。

正直、僕には仔牛のテールスープの味や、テーブルマナーなんて全然わからないけど凄いホテルだと自画自賛できる。


 お客さんの中には霊感が強い人もいて、

その人は大変光莉ちゃんを気に入ったようで光莉ちゃんも彼を気に入ったようだけれど、

そのお客さんがいないときは僕の相手も相変わらずしてくれる。


 紅雀さんも、副社長が来た時には物凄くアピールしてポルターガイストやっているけど、

大体、


「空調に問題が? …あの電球も変えたほうがいいな。」


そんな明後日の方向の勘違いで無かったことにされてしまうので、そのあと慰めた後は美味しく頂ける。

金も、女も、(ホテル)も手に入れた。

ホテル王に、俺はなった。やった、やった、やった。ばんざーい。
















 とある、住宅街にて。

「定刻さんの息子さん、最近見ないわね。」


主婦が他の主婦と話している。


「廃墟好きが回り過ぎたのね。」


「それにしても大丈夫かしら?」



「あら奥さん、本当に知らないの?

彼、定刻ホテルの中で衰弱して帰ってこなかったそうよ?」


「どういうこと?」



「彼、―――――憑り殺されたらしいわよ。」

おわれ。

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