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ババ抜きに負けたわら人形の朝食

作者: 低反発


 ターコイズグリーンのテイブルの上には異様な光景が寝そべっていた。植木鉢に体半分いれられたフランスパン、小さいウイスキイボトルに注がれたコーンスープ、眼鏡ケースに広げられたスクランブルエッグ...etc。


 寝ぼけ眼のわら人形は席に着くと、まず錆び付いた缶コーヒーを一口飲んだ。コガネムシの羽を炙ったような味だった。いただきます、のような言の葉をため息と共に送り出す。二度と帰ってはこない。

 わら人形は、スクランブルエッグ、コーンスープ、フランスパンの順に器用に平らげた。そしてもう一口、コーヒーを口に含んだ。もう味は無かった。

 食後にニュースペイパーを読もうと、わら人形は玄関に向かった。


 が、普段ニュースペイパーが放り込まれている玄関には望んだ紙切れはなく、代わりに一枚のカードが落ちていた。拾い上げてみると、スペードのクイーンだった。訝しみながら先ほどのテイブルの上にクイーンを置いてみると、クイーンはいつの間にかジョーカーになり代わっていた。


 「余に熱い珈琲を飲ませなければ、この鎌でもって汝の命を削ぎ落とそうぞ」

 ジョーカーは随分と偉そうな態度で言い放った。

 「そう言われても、もう飲み干してしまったよ」

 「淹れ直せばよかろう」

 「今日はもう水がないよ」

 「何故だ!」

 「何故って、無いものは無いのさ」

 「なるほどよろしい。では汝の命の葉を毟り取らせてもらうことにしよう!」



 そうジョーカーは叫びながら鎌を振り降ろそうとした。




 しかしそれより幾分か先に、わら人形は手許にあった五寸釘でもってジョーカーをテイブルに打ち付けてしまった。



 空になった缶コーヒーが微かに身震いした。




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