人の好みなんて人それぞれ
「わたくし…。
お慕いしております!!
好きなんです!!」
熱烈な告白。
頬を染めて色素の薄い金髪をなびかせる。
エメラルドの涙目。
上目遣い。
おおよそ、男子が告白されて受け入れる要素を持つ。
そんな、彼女、ラパピカ侯爵令嬢に告白された俺。
そんな、俺は…後ででいい?
先に返事をしなくては。
えっ!?
返事?
勿論、決まってる。
「ありがとうございます(ニコッ」
「あっ//
それでは「申し訳ありません。」」
遮るように断りを入れると、ラパピカ侯爵令嬢は信じられない、といった表情でパッと染み一つ無い白い手を口元を覆った。
「なぜですの!?
わたくし、自慢では無いですけれど今まで、いえ、貴方と数人かを除いては求婚やラブレター、告白を殿方から頂いております。
貴方がわたくしを振る理由が分かりませんわ。」
「実は昔、将来を誓い合った女の子がいるんです。その女の子を今でも探してて…」
空を見るように顔を彼女から横顔に見える位置で見下ろすように流し目。
すると、彼女は、
「グスッ//
そうですか…
どうか、貴方が彼女を見つけられるように祈っています。」
そして、去っていった。
此処は舞踏会のテラス。
男女の告白スポットで有名。
「おいおい、断ったのか?今のはラパピカ侯爵令嬢だろう?
金持ち、侯爵令嬢、あんな美女にあんな告白されたら俺だけじゃない、この世の中全ての男が喜んで受け入れる。っていうか、じゃないと可笑しいね。
侯爵令嬢には悪いが聞いちまったが、お前…。『将来を誓い合った女の子』なんて、いないだろ!!」
入れ替わりテラスにやってきたのは次期侯爵のトゥウナ。発音しにくい。
因みにログマ侯爵家。
貴族学校からの腐れ縁だ。前髪を横に斜めに流し白金の長い髪を前にまとめ肩の下にリボンをしている、たれ目の美青年だ。
「あぁ、勿論だ。」
彼なので素で答える。
「お前…不能か?」
引きつった顔のトゥウナがムカつく。
その表情でも美人を保ってる顔がムカつく。
発音しにくい名前がムカつく。
「んな訳ないだろ。なぜ、そう思う。」
至って健康な成人男子に決まってるだろ。
「だってね、あんな美女に…っ!!お前もしかしてアッチか!?」
えぇー!?と、言ってないが、吹き出しで出てきそうな表情と先程より約2倍で引かれた。
「いやいや、ありえない。オレ、オンナスキ。」
「なぜ、片言…怪しいぞ。いや、その線も怪しいぞ。
なぜ、ラパピカ侯爵令嬢の告白を断った?そう言えば、他の美女達も断ったな?理解不能だ。」
「前から聞こうと思ってたんだが…」
ないしょ話の体勢になる。
「彼女達…美人か?」
「……。」
沈黙で黙ったトゥウナ。
「……?」
沈黙したままなのでないしょ話の体勢から向かい合わせになり顔を伺うがハテナマークをプラスさせてた。
「……!」
いや、分かったゾ!になった。
「分かったゾ!
お前、現実のオンナが駄目なんだ!!」
「大きい声で言うな!!見ろ!
セバスチャンが引いてるぞ!」
中で飲み物を配っている召使の一人がテラスの外にいてゴキ●リを見たような顔をしてた。
「お前凄いな。
召使の名前、全員覚えてるのか?」
先程、自分が叫んだ事を忘れたらしく尋ねるトゥウナ。
「いや、セバスチャンみたいな雰囲気だから。
そういうお前だって知ってるじゃん。」
「そりゃ、彼は僕の家で働いてて今日は訳ありで主催者のパーティーでアルバイトさ。」
無駄な星を飛ばすな。
「……そうか。
いや、話を終わらせるな。俺はリアルな女が好きだ。愛してる。」
本気な顔で言った。
本気と書いてマジと言う。
「うん。分かった。冗談だからね。うん。そんな、顔したらレディ達が泣くよ。」
そんなに酷いか。
「ま、とにかく頑張れ。そろそろ僕の最高のレディが到着する頃だろう。
じゃな。」
流された。
つか、婚約者来るのか。
いいのか。
婚約者いるのに他の女誉めて。
言うぞ。
嘘だけど。
いや、やっぱ言っちゃおうかな。
面白そうだもん。
話を戻すが彼女達は美人と言えば美人……かもしれない。多分。
と、言うのも俺は実は〔ドスッ!!〕
「ウゴォッ!!」
突然、俺の頭上に何か重いものが落ちた。
そして、うつ伏せ状態の俺は今天国へのカウントダウンを始めている。
「うわっ!何コレ!?
っていうか、玄関開けてなぜ落ちちゃうの?
……ムム?
痛くない?
あれ?髪の…毛……。
…………
………。」
あれ?俺の背中に馬乗りしてるのって女の子?
つか、玄関って言った?
「……ヤバッ!!」
ガバッと俺の上に馬乗りしてた娘がやっと降りてくれた。
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!わざとじゃないんです!!」
よっこらせいっと起きる。
「うん。大丈夫だよ。」
ぱっぱっと服に付いた砂を払う。
そして、顔を挙げる。
!?
「す、すみませんでした!!早くどかなくて…。
大丈夫でしょうか?」
ワォ。
驚きだ。
「君、この世界の人間じゃないね?」
「!!
どういう事ですか!?」
ボブではない黒髪のショートカットの彼女はびっくりの顔で周りを見る。
あ、セバスチャンと目が合った。
人差し指を口に当てて内緒にしてくれとジェスチャーすると、セバスチャンはウィンクして人差し指を口に当てた。
ダンディーだ。
空気読みだ。
「あの〜、此処ってドコでしょうか?
あと、今更ですが貴方は誰ですか?」
「此処はパーティー会場。国はニク。僕はドーバー公爵家嫡子、リトと申します。」
ニコッと笑い右手を左胸に置いて挨拶をした。
貴人に対する礼をすると恥ずかしそうに顔を赤に染めた。
うん、可愛い。
彼女は気づいていないだろう。
最初は泣きたいほど懐かしい面影の顔に守りたいという感情がだんだん恋に変わってゆくのを。
そして、この世界は中世の絵がそのまま出てきたような人ばかりの事を。
えっ、という風な人がいれば美人だがそのまんま絵から飛び出たようで隙がなくて怖い感じの人達ばかりで、とてもじゃないが恋愛は出来なかった。
そして、彼女は昔俺が庇った幼い隣の子にとても似てた。
【リト】
23歳。
月のような銀髪。
ファンからは『月光の騎士』
多分、本人が知ったら恥ずかしさのあまり土下座して呼び名を封印する。
因みに5歳の頃、ある出来事で土下座して記憶が甦った。この話はまたの話で。
現代人の記憶があったので美女の基準がこの世界とずれていた。
このため、今まで結婚できず…。
婚約者はいたが土下座して解約した。
元婚約者も訳アリなので平和な解約で今では良い?友達。
土下座をしたりと行動があれだが私情と公の場では使い分ける。
あと、お兄ちゃん気質。
前世で10歳離れてた隣の子を妹のように可愛がっていた。
多分、目にいれても痛くない。
空也という名前だった。
くう兄ちゃんと、呼ばれていた。
【空良】
そらです。
名前はお兄ちゃんにつけてもらいました。
年は18歳です。
卒業したばかりです。
ていうか、昨日でした。
好きなタイプは年上でお兄ちゃんみたいな人です。
ファーストキスはお兄ちゃんらしいです。
赤ちゃんの頃なので覚えていません。
…もう、良いですか?
以上です!