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◯より✕がいい

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/09/15

正しい答えを求められ、いくつもの言葉で自分を飾り立てなければならない毎日に、ふと立ち止まりたくなる夜があります。効率や完璧さを追い求めるほどに零れ落ちてしまうのは、誰かの隣にある確かな体温や、何もない時間に咲く小さな余白なのかもしれません。この詩は、器用に生きられない私たちが、ただそこに存在するだけで満たされる瞬間を描いた物語です。少しだけ頭の辞書を閉じて、冷えた心と手先を温めるようにお読みいただければ幸いです。

言葉より体温がいい

声にしてしまうと嘘になりそうな夜は

難解な辞書を閉じて

ただ隣にいるだけでいい

正しさより余白がいい

詰め込まれた予定表のすき間に咲く

名もない雑草の強さを眺めていたい

完璧より未完成がいい

少し歪んだマグカップから立ち上る湯気が

僕たちの不器用な生き方を包み込んでいくから

言葉より体温がいい

理由なんて何ひとついらない

冷えた指先を重ねるだけで

世界のすべてと分かり合えた気がするのだ。

夜が深まるにつれて、部屋の明かりを一つ落とす。言葉で飾らない二人の間に流れる時間は、どんな雄弁な詩よりも深く、優しく僕たちを解きほぐしていく。

傷つかないように抱え込んでいた鎧を脱ぎ捨てて、ただ互いの吐息を感じる。完璧になれない僕たちのまま、足りない隙間を埋めるように寄り添えばいい。夜が明けるまでのほんのひととき、世界の喧騒を遠くに追いやって、僕たちはただこの確かな温もりだけを信じている



言葉で飾ることをやめ、ただ互いの体温と不完全さを抱きしめるような、深く静かな夜を描いた一篇です。

忙しない日常や正しさの定義に少し疲れてしまったとき、この詩が差し出す「余白」や「歪み」の温もりが、誰かの心をそっと緩める小さな灯りになればと願っています。

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