◯より✕がいい
正しい答えを求められ、いくつもの言葉で自分を飾り立てなければならない毎日に、ふと立ち止まりたくなる夜があります。効率や完璧さを追い求めるほどに零れ落ちてしまうのは、誰かの隣にある確かな体温や、何もない時間に咲く小さな余白なのかもしれません。この詩は、器用に生きられない私たちが、ただそこに存在するだけで満たされる瞬間を描いた物語です。少しだけ頭の辞書を閉じて、冷えた心と手先を温めるようにお読みいただければ幸いです。
言葉より体温がいい
声にしてしまうと嘘になりそうな夜は
難解な辞書を閉じて
ただ隣にいるだけでいい
正しさより余白がいい
詰め込まれた予定表のすき間に咲く
名もない雑草の強さを眺めていたい
完璧より未完成がいい
少し歪んだマグカップから立ち上る湯気が
僕たちの不器用な生き方を包み込んでいくから
言葉より体温がいい
理由なんて何ひとついらない
冷えた指先を重ねるだけで
世界のすべてと分かり合えた気がするのだ。
夜が深まるにつれて、部屋の明かりを一つ落とす。言葉で飾らない二人の間に流れる時間は、どんな雄弁な詩よりも深く、優しく僕たちを解きほぐしていく。
傷つかないように抱え込んでいた鎧を脱ぎ捨てて、ただ互いの吐息を感じる。完璧になれない僕たちのまま、足りない隙間を埋めるように寄り添えばいい。夜が明けるまでのほんのひととき、世界の喧騒を遠くに追いやって、僕たちはただこの確かな温もりだけを信じている
言葉で飾ることをやめ、ただ互いの体温と不完全さを抱きしめるような、深く静かな夜を描いた一篇です。
忙しない日常や正しさの定義に少し疲れてしまったとき、この詩が差し出す「余白」や「歪み」の温もりが、誰かの心をそっと緩める小さな灯りになればと願っています。




