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第六話 可憐な婆さま(笑)

 むかしむかし――


 と、語り始めようとした瞬間だった。


婆「あ゛ん゛!???だれが(笑)だこら?」


 ドゴォォォォォン!!


 空気が震えた。


 いや。


 地面は割れていない。


 だが。


 割れた気がした。


モタロウ「ひーすいません!!」


ラタロウ「謝るの早すぎない!?♡」


 そこにいたのは――


 婆だった。


 背は少し曲がっている。


 杖をついている。


 見た目は普通の老婆。


 だが。


 普通ではない。


 目が。


 異様に鋭かった。



 ……可憐な婆さまは。


 モタロウたちを止めた爺さまを見て。


 昔を思い出していた。


 遠くを見るような目。


 どこか懐かしそうな顔。


婆「……あん人を見るとなぁ」


婆「思い出すんだぁ……」


 ぽつり。


 静かに。


 語り始める。


婆「わだじに……」


婆「すぎだってぇー」


婆「夫婦になってけれぇってぇ……」


婆「すべでを敵にしても」


婆「わだじを守るってぇ……」


 昔の婆さまは。


 かなり訛っていた。


 いや――


 今も十分訛っていた。


婆「あのひどときだら……」


婆「とぎのみがど(帝)にまで」


婆「喧嘩うるさぁーひど(人)だったんだぁ」


村人A「出たべ……」


村人B「はじまったべ……」


 村人たちは小声でささやき合う。


 だが。


 止める者はいない。


 誰もが知っている。


 この話は――


 村の伝説だからだ。


婆「だからなぁ……」


婆「言ってやったのさぁ」


 指を折りながら。


 一つずつ。


婆「『仏の御石の鉢』」


婆「『蓬莱の玉の枝』」


婆「『火鼠の皮衣』」


婆「『龍の首の五色の玉』」


婆「『燕の子安貝』」


婆「どれかもっでごいってー」


婆「言ってやったのさぁ」


モタロウ「どれかって言ったよな?」


ラタロウ「どれかよね♡」


婆「そしたらあんの爺さま……」


 少し間があった。


 そして。


 ゆっくり。


 誇らしげに。


 言った。


婆「ぜーんぶ」


婆「もっでぎでやんの」


 沈黙。


 完全な沈黙。


モタロウ「……は?」


ラタロウ「全部?」


村人C「全部」


村人D「ぜーんぶ」


村人E「ガチで」


モタロウ「バカじゃねぇの!?」


ラタロウ「バカなのね♡」


婆「花を咲かせるのは」


婆「伊達じゃねーってさぁ……」


 婆は笑った。


 懐かしそうに。


 誇らしそうに。


婆「もーこのひど(人)しか」


婆「いねぇど思っだねぇ……」


 少しだけ。


 顔が柔らいだ。


 そして。


 さらに続けた。


婆「しがもなぁ……」


婆「むがえ(迎え)にぎだ」


婆「月の使者だぢまで」


婆「おいがえしてしまうんだもの」


モタロウ「月!?」


ラタロウ「スケールでかすぎない!?♡」


村人A「来たんだべ……」


村人B「ほんとに来たんだべ……」


婆「ありゃぁ……」


婆「こどわったりしだら」


婆「なにされるが」


婆「わがんねーべさ……」


 その声は。


 少しだけ。


 震えていた。



 そんなこんなで。


 二人は一緒に暮らすようになった。


 あいにく。


 子供はできなかった。


 だが。


 二人は幸せだった。


 本当に。


 幸せだった。



村人A「あのナイスジジィも」


村人A「ロリコンジジィに改名したかと思ったけど」


村人B「んだ」


村人B「だけど村のピンチは助けてくれるんだもの」


村人C「あぁ」


村人C「やっぱりナイスジジィだべ」


 遠くで。


 爺が静かに茶をすすっていた。


 何も言わず。


 ただ。


 穏やかに。



モタロウ「……よし」


 拳を握る。


モタロウ「爺様になら」


モタロウ「俺たちの祭り魂」


モタロウ「ぶつけれる!」


ラタロウ「いいじゃない♡」


ラタロウ「受け止めてもらいましょう♡」


 そのときだった。


 別の声が。


 空を裂いた。


マタロウ「海が泣いてる!!!」


 全員が振り返った。


モタロウ「何ぃ!?」


ラタロウ「急に詩人!?♡」


マタロウ「違う!!」


マタロウ「本当に!!」


マタロウ「泣いてる!!」



 村の外。


 海岸沿い。


 まだ遠い。


 だが。


 確かに――


 それはあった。


 黒い影。


 巨大な影。


村人A「あれは……」


村人B「帆……?」


村人C「いや……」


村人D「船だ……」


 風が吹いた。


 帆が大きく広がる。


 それは。


 海賊船のような帆。


 そして――


 船体。


 そこに並ぶ。


 無数の穴。


 砲門。


 巨大な砲門。


モタロウ「……なんだあれ」


ラタロウ「いやな予感しかしないわね♡」


 空気が止まった。


 村が凍りついた。


 そして。


 誰かが叫んだ。


村人「黒船襲来だああああ!!!」


 ドゴォォォォォン!!


 遠くで。


 雷のような音が響いた。


 だが。


 それは雷ではない。


 砲撃だった。


 黒煙が上がる。


 空が。


 黒く染まる。


 戦いが――


 始まる。


【第六話 完】

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