[Turn 悪鬼]7.
「おい、真琴! あんたっていうのは……。小僧に一言も注意をしなかったっていうのかい⁉」
「あぁ……。意図的に言わなかった。」
「あんな残酷なもの、そう簡単に小僧に見せていいもんじゃないぞ‼」
「鬼と戦うことの危険性と、篠崎さんがいるから万が一そうなっても生きていれば平気だってことを伝えたかったんだよ。『百聞は一見に如かず』。きっと総司くんもわかってくれたはずだ。」
「そーゆーもんじゃねぇ! ガキにはまだ早すぎるんだよ‼」
「そうだろうか……。彼もあと三年もすれば成人なのだが。」
「まだ思春期途中だろ! ついてこい。一度死んでもらう。」
総司は身震いした。表現ではなく物理的にということを知っているからだ。
「とりあえずついてこい。殺す。」
真琴は大きなため息をついた。
「わかった、一度死ねばいいんだろう?」
そう言って篠崎と真琴は姿を消す。
きっと真琴からだろう、淡い光がこちらからでも一瞬だけ見えた。
「……日松川の兄ちゃん、大丈夫だったか?」
そう変わった呼び名で聞くのは、試験で敵役を演じていた武山だ。
「えぇ、おかげさまで。」
「うわぁ! 総司っちってお世辞上手すぎるでしょ⁉ ウチの百倍、いや、二百倍ぐらい上手‼」
碓氷の言葉に、総司は再び頷くことしかできない。
「日松川の兄ちゃんは確かに上手だが、碓氷の姉ちゃんが下手なだけだろ? 言い間違いには気を付けるもんだぜ。」
「あんたに言われたくないんですけどー。」
仕事の内容が変わっているにしても、平和は作れるんだなぁと総司は思う。
むしろ、それが平和の条件みたいだ。今までに出会ったことのない経験だらけだけど、どれもが総司にとっては楽しかった。
「――――すまない総司くん。案内の途中だったな。」
そこに、先ほど篠崎に連行された真琴が現れる。
「真琴っち? さっき死んで来たんじゃ?」
「ああ、もちろん殺したよ、指一本ずつ切り落としてね。」
淡々と言う篠崎さん。正直に言うと恐ろしい。
「能力を使えばいいだけなのだが……謎に許してくれなかった。」
「当たり前だろ? だって処罰なんだからね。」
篠崎は勝ち誇ったような顔をする。
「では、総司くん。案内を始めよう。……他の奴らは仕事に戻れ。」
はーい、と間延びした声が三つ聞こえた。