[Turn 明星]64.
鬼は、みさきを掴み近くの壁に向かって投げた。
その時、骨が何本か折れた音が地下鉄内に響いた。
鬼は次に、呆気にとられていた総司を天井に蹴り上げた。
更に、碓氷に蹴りを入れ、駅の端の方まで飛ばした。
たった数秒の出来事だった。四人全員が戦闘不能状態になるのに十秒すらかからなかった。
総司は考えた。能力で全員で一旦この地下鉄を出るべきか、と。
だがその考えはすぐに消えた。人質がまだいるかもしれないのにこの鬼を自由にした状態で出れば、死者が出かねないと、そう思ったからだ。
その時、総司の近くで倒れていたみさきが弱々しい声で総司を呼んだ。
「御札を...あいつに...。」
とみさきは持っていた御札を総司に渡した。
渡した途端、みさきの体に限界が来たようで、そのまま気絶してしまった。
総司は覚悟を決め、ボロボロな体を無理やり起こした。
「みさきちゃんが繋いでくれた御札を、あとはあいつにつけるだけだ。持ってくれよ僕の体。...『幽遊戦鬼・餓鬼』。」
その時、世界中の時間が止まった。
「この世界から僕以外の時間とゆう概念を消した。...この空間は、持って五秒。今のうちに御札を貼るしかない。」
時が止まった中、総司は鬼の近くに行き御札を貼った。
「限界か。...時が動き出す。」
時が動き出した途端、鬼は苦しみだした。
鬼の体は、徐々に縮んでいった。
そこにはパイソンの姿があった。
「そうか、俺は負けたのか。」
パイソンの体を見ると、足が青色に輝く宝石になっていた。
「それは一体どうしたんだ!?」
「これが組合の社長の能力だ。」
「組合の社長の?」
「ああ、あいつの能力は毒ガスだ。少しでも吸えば体が徐々に宝石化していく。少しでも摂取したら終わりの能力だ。どうやらさっきのバグスウイルスに混ぜられていたらしい。」
「あんたのところの社長はそんなことまでするのか。」
「なぁ、あんた。」
「どうした?」
「最後に、俺が喋れなくなる前に、お願いがあるんだ。」
「わかった。言ってみな。」
「俺を、殺してくれ。俺が死ねば、この宝石化も止まる。俺は、人間の俺のまま死にたいんだ。」
「わかった。」
総司はナイフを手に取った。
「腹部に頼むよ。即死はしたくない。懺悔しながら死にたいんでね。」
「わかった。」
「はぁ、やっと死ねるんだ。」
「最後に、言い残すことはあるか?」
「そうだな、俺も、みんなを助けるヒーローに、なりたかったなぁ。」
「......ッ」
総司は、震える手で、持っているナイフを、パイソンの腹部に深く、深く刺した。




