[Turn 悪鬼]5.
「おぉ、合格おめでと。」
「あ、ありがとうございます……。」
総司は俊太郎の言葉に何て返せばいいのかわからず、そう返事することしかできなかった。
「真琴さんも真琴さんですよ。急に仮の新入社員の入社試験に手伝ってくれと言われたときは驚きましたよ。」
「それはすまない。だが、この社員たちの能力はみんな暴力で解決しているからね、総司君もその一人だったが。だから適役が君しかいないんだよ。」
「選ばれるのはとてつもなく光栄なことですよ。……でもアレはまずい。流石に痛かった。」
「すみません……。」
「君はどうってことないよ。鬼なんざオレなんか比較にならない。本気で来てくれた方がむしろ真琴さんにとっては好都合さ。今も腹は痛いがな。」
真琴と俊太郎は笑い合った。
「では、今から正式に会社を案内しよう。ついて来るといい。」
総司と俊太郎は頷く。
総司の前には真琴が、後ろには俊太郎がいた。
そのまま男三人、雑談をしながら歩いていく。
「見ろ、ここが本社だ。」
そこはとても大きなビルだった。
「地下にあるからな、だいぶ広い土地をもらえているんだ。」
それはとても大きな地下駐車場にビル街があるかのようだった。
早速一行は中に入る。
「……最初に、ここが社員の仕事場だ。任務の打ち合わせや、鬼に対する情報を捜査するときに使う。」
総司は黙って広い空間を眺めることしかできなかった。
人は総司たち一行を除けば、その空間には三人の職員がいる。
「本当はあと四人いるんだが、任務と休憩時間で今はいない。」
「――あっれー? もしかして新入りー⁉」
そこに一人の少女――といっても二十代前半だのギャルがこっちに来ていきなり握手をしてくる。
正直言うと、こういうずかずか入ってくる人は苦手なのだが、ただ総司は「嫌」とも言えず作り笑いを浮かべることしかできなかった。
「ほら、弓良君。総司君に迷惑がかかってるじゃないか。やめてあげなさい」
「えー。真琴っちのケチー。」
ケチじゃない、と真琴は放つように言う。
「総司君って言うんだね! あたしは『碓氷弓良』! よろしくね~!」
真琴との会話をころっと忘れ、今にも星マークが大量につきそうな話し方をする彼女に対し、総司はお辞儀をすることしかできなかった。